アクアコンパス 3   世界の歴史、社会、文化、心、読書、旅行など。

カテゴリー「案内」に人気記事と連載の目次があります。Twitter に yamada manabuで参加中。

病と医術の歴史 14: 古代エジプトにはじまるもの

2013年11月15日 | 連載中 病と医術の歴史

< 手に持っているのがマンドラゴラ >

今回は、三つの不思議なもの、マンドラゴラ、割礼、豚肉忌避の起源を追います。


マンドラゴラ(マンドレイク)
これはエジプトで鎮痛剤として使われていたナス科の植物です。
映画「ハリ・ポッター」では、マンドラゴラは魔法を解く妙薬として栽培されていた。
「ロミオとジュリエット」では仮死をもたらす薬として登場した。
この植物は強毒性を持ち、幻覚症状をもたらし、さらにその根茎が人型に似ることもあり、古来より様々な伝説を生んでいた。



< 15世紀「健康全書」:マンドラゴラが左上に見える >
マンドラゴラは魔法薬、精力剤、不老不死薬の貴重な材料とされていたが、収穫には危険が伴うと考えられ、図のように犬に引き抜かせた。
「恋なす(マンドラゴラ)は香り/そのみごとな実が戸口に並んでいます。新しい実も、古い実も/恋しい人よ、あなたのために取っておきました。」旧約雅歌7章14節
旧約では受胎効果のある植物として書かれている。



< キリストの割礼、17世紀の絵 >

割礼
割礼はユダヤ教徒にとって必須だった。
しかしその歴史は古く、紀元前2300年前のエジプトの壁画に既に描かれていた。



< 神官が少年に割礼の儀式を行っている。エジプト >
古くから世界各地で、衛生も兼ねて青年への通過儀礼として割礼は行われていた。
エジプトでは古くから下層階級でも一般的で、紀元前1千年紀以降、神官には義務付けられることになる。
ユダヤ教では、これを厳格に捉え、創世記において男子は産まれてから8日目に行うことが説かれた。
これはイスラム教に引き継がれたが、キリスト教ではパウロがこれを免除し、異民族に布教が進むことになった。



< セト神:頭が豚、ジャッカルなどで表される >

豚肉の忌避

豚は世界中で古くから飼養され始めたが、放牧に適さなかったので、定住農耕地帯に限られた。
エジプトでも、農耕が盛んなナイル・デルタではよく食べられていたが、上流では希であった。
王が神殿に数千頭の豚を奉納することもあった。
上流の王によってエジプトが統一されると、その守護神オシリスが徐々に重要な神になっていく。
豚の頭で表現されるセト神はオシリスと敵対していた。



< ホルス神が豚のセト神に乗り父の仇を討つ。ホルス神殿 >

やがて紀元前1千年紀以降、神官は豚肉を禁じられ、貴族達も忌避し始めた。
一方、イスラエルも、フェニキアの農耕神バアルを敵視していた。
それが旧約レビ記において、豚肉の食用禁止につながった。
禁止の理由は、外観が醜悪、悪臭を放ち、不潔で、食肉動物、異教の犠牲獣だったからです。
この戒律が遊牧民のイスラム教に取り入れらることになった。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿