パタ
「・・・」
黒猫が振り返った・・・
私の足音が離れたからだろう。
目覚めてシャワーを浴びて、通路に出たところ。
このままキッチンか玄関に向かうと思ったのだろうけど、私は途中で右に曲がる。
洗濯機を動かしている。
「ニャ~」
戻って来た。
パタ
ウィィィン
チャププ
太陽が沈む頃、無事にポールさんたちが大タープまで来た。
以前老紳士が用意した、6輪駆動車に乗って来た。
あの車、その後でポールさんがもらったらしい。
老紳士は、自分には必要ないからと言っていたそう。
どうやらフェルトは老紳士にも、連絡していたらしい。
衛星電話を奪われるまで、エレガントさんが夕方に連絡していた。
その後は、私たちの衛星電話が雨で通じにくくなったとフェルトが電話してきたそう。
私たちと行動を共にしていた保安官事務所の者だと言っていたそうで、雨で湖になった荒野をボートで移動して私達の伝言を伝えますと言ったそう。
雨で動けないけど、食料は十分にあるから大丈夫だという伝言だったそう。
この周りの町も川になった舗装路の水で被害が出ていて、老紳士も最初は納得したらしい。
ただ、エレガントさんが言っていた同行の保安官事務所の人は女性だったような気がしたそう。
プルームさんの事。
ボートで移動するにしても、マッチョさんか私辺りが一緒に移動しなかったのも気にかかった様である。
それで一応心配になって、ポールさんに連絡してくれたらしい。
久しぶりの長期休暇中だったポールさんが、それで来た。
ついでに連絡したスコップさんも、予定を早めて森から戻って来たそう。
チュ
マヒワが通路からこっちを見てる。
ノロマさんとバレッタさんとエレガントさんが、昨日と同じで夜中のキッチンにいてくれる。
ただ寝るのが遅くなったし、まだ起きてきていない。
リフはもう起きているし、冷凍食品をつくってあげよう。
テムとレウに、母テムも来た。
見張りには人数がいるし、助かる。
夜中の見張りは昨日と同じだけど、途中まではテムとレウも手伝ってくれる。
水汲みの滑車の使いかたも教えておく。
チャポポポ
ポールさんたちは、衛星電話を持って来ていなかった。
狩猟小屋に残っていた何人かに襲われて、ライフルで応戦しながら東の森に逃げたらしい。
そこで川を下っていたら、私たちのいる崖の下に来た様である。
フェルトたち3人の写真を見せたら、ポールさんがフェルトを知っていた。
最後に見たのは10年くらい前らしいけど、たぶん知っている人らしい。
もともと、連邦捜査局の捜査官だったらしい。
それぞれの州や地域で、管轄する警察や保安官がいる。
広範囲が捜査対象の場合、連邦捜査局が調べる。
合衆国各地に拠点があって、それぞれに身体能力の高い捜査官が集まった特殊部隊がある。
それとは別に、専任の特殊部隊もある。
首都の近くに拠点を持ち、サポートする人も専任。
少数精鋭で、高い身体能力に応急処置の技術なども必要になる。
軍の特殊部隊で訓練を受け、装備も兵士とほぼ変わらない。
全員ではないようだけど、さらに狙撃の訓練を受ける捜査官もいる。
フェルトはそこにいた。
ポールさんもそうだったらしく、隊をやめる前の1年間ほど配属されたばかりのフェルトと一緒だったそう。
マッチョさんのボートが狙撃されたけど、ポールさんはフェルトだろうと言っていた。
狙撃の訓練も受けており、暗視装置を使った狙撃も可能らしい。
その後ポールさんはインターポールに行ったから聞いた話らしいけど、フェルトは奥さんが亡くなって捜査官をやめたそう。
彼の妻は、臓器移植が必要だった。
同僚たちにもお金を借りて、移植手術は受けたらしい。
ただ、亡くなった。
その後、捜査官をやめた。
幼い娘がいたから、これからはなるべく一緒にいたいという理由で。
ちゃんと同僚たちへ借金は返済したらしい。
その後復帰の打診も断ったという話で、ポールさんもそれ以降は知らない。
フェルト本人とは、それほど親しかったわけではないそう。
チュ ♪
「ニャ~」
私の足元で転がった黒猫のお腹に、マヒワがのってる。
「・・・・」
手を伸ばす。
「チュ」
黒猫のお腹にふれると、マヒワが片方の足を指にあてた。
ゆっくり呼吸してる。
まだ乾いていない髪が、少しひんやり。
手を離す・・・・
・・・
チャポ
ウィィィン