大スコップ

2017年03月06日 15時05分50秒 | マーロックの日記

                     バチ

                                                 ァァァァァ   ・・・・・

           チュン ♪

上をみる・・・

雨はずっと降っていて、ポンチョをかぶっているけど顔は濡れる。

「・・・・」

そんなに冷たい雨じゃないから、濡れても平気。

            バン

「・・・」

しまネコが見てる。

「・・・・」

ノッポさんも休んでいて、空を見上げてる。

私はノッポさんと、水くみ川までの道をつくった。

大スコップでデコボコした地面を平らにして、大タープからはのぼり坂なのでいくらか石を埋めて歩きやすくした。

ワゴンの移動は妨げない幅で。

ロープと滑車があれば、水タンクを一気に運べるかもしれないけど。

「このくらいでいいだろう」

「うん」

    ジャリ

戻ろう。

ノロマさん達は、白玉をつくっている。

私ももらおう。

「ミャ~」

手招きしたら、しまネコも来た。

             

                                  ピピ ピ

6億年前ごろに終わった最後の全地球凍結の頃、ロディニア大陸が分裂を始める――ほとんどの陸地が集まった超大陸だったと考えられていて、おそらく赤道付近にあった。

カンブリア紀を迎え、多様な多細胞生物が進化した。

オルドビス紀、シルル紀、デボン紀を経て、石炭紀を迎える――3.6~3億年前。

分裂した大陸は再び衝突を続け、次のペルム紀に向けて超大陸パンゲアを形成することになる。

この1500万年前頃に、大型の木本植物が現れる――最初の樹木で、これによって高台なども植物に覆われるようになる。

大型の植物を支えるのは、リグニンという強度の高いポリマー――動物はコラーゲンを使っている。

より複雑な構造を進化させた高等植物は、細胞をセルロースという多糖の壁で覆い、それらをリグニンで固めている――こうした構造を細胞間マトリックスと呼び、リグニンはセメントの様に丈夫でしかもしなやかなマトリックスをつくる。

紙をつくるにはリグニンをかなり除く必要があって、それに時間と経費がかかる。

企業がこの手間を省くためにリグニンを減らした木を育てようとしたけど、失敗した――リグニンを減らした木は発育不良で、わずかな風で倒れて役に立たなかった。

フェノールと酸素の反応でリグニンがつくられると、生体ポリマーの中では最も分解しにくい物質となる――現在の微生物でも、リグニンを分解してエネルギーを得るのは困難。

当時の湿潤な気候や広大な氾濫原は、沼沢地での石炭形成に理想的な環境だった――酸素の少ない水中などで分解されなかった植物が泥炭になり、やがて地中に埋まって石炭になる。

そして現れたばかりのリグニンの分解が今以上に低率だったことが合わさって、例外的な速さで石炭が形成されていった――この地層には石炭がたくさんで、それで石炭紀と呼ばれる。

大気中の酸素濃度を増やすには、有機炭素が埋蔵される必要がある。

したがって石炭紀には、酸素濃度は上昇し続けたと思われる。

炭素の埋蔵率と岩石の風化速度からの推定では、石炭紀と次のペルム紀初期にかけて、酸素濃度は35%に達した――それがペルム紀後期にかけて15%にまで下がり、分かっている中では最大の大量絶滅を引き起こすことになる。

植物はミトコンドリアによる呼吸とは別に、日光があたっているときのみ光呼吸も行う。

光呼吸も酸素を取り込んで二酸化炭素を放出するのだけど、エネルギーを得ることができず成長の邪魔をする。

光合成を支えるのは、リブロース1,5-ビスリン酸…RuBPカルボキシラーゼという酵素――したがって、私たちを含む多くの生命を支えている。

カルビンサイクルで二酸化炭素を取り込む酵素で、炭水化物を必要とする私たちにとって最も重要な酵素だとよく言われる。

触媒効率の悪い酵素で、おそらくそのために葉のタンパク質の50%を閉める――年間生産量は4000000000000kgと最も多いタンパク質で、二酸化炭素固定量は2桁近く多い…原油消費量はその1/15くらい。

多くの光合成生物は、葉緑体DNAがコードする大…Lサブユニット8個と核DNAがコードする小…Sサブユニット8個で構成される…L8S8形という――光合成細菌にはL2のものもいて、Lのコードは28%が同一で構造も似ている。

RuBPカルボキシラーゼは二酸化炭素を固定するけど、酸素が基質として二酸化炭素に競合する。

このため、RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼとも呼ばれ、略してルビスコ…RuBisCOという。

酸素濃度が高いと、ルビスコをめぐる競合反応が光合成の効率を下げる。

さらに温度が高いと、光呼吸の割合は大きくなる。

現在の酸素濃度であっても、熱帯地域では植物の成長を4割くらい減少させている。

大半の樹木や農作物は、C3植物という――中湿で温暖な気候に適した植物で、二酸化炭素の濃度が900ppm程度まで光合成速度が増加する性質を持っている。

450ppm程度を境目に、C4植物の成長力が高まる――現在は400ppm程度。

C4植物は二酸化炭素濃度の低い大気条件に適応していて、高温で乾燥した気候でも高い光合成能力を発揮する――高温で乾燥する地域に適応したCAM植物もある。

それで、草原にはC4植物が多く分布していると考えられている――光合成による純一次生産が生態系を支えていて、草原はその気候の割りに純一次生産量が多い。

C3植物では特に光呼吸が問題となるけど、C4植物は光合成組織を区画化することで悪影響を最小限にしている――二酸化炭素をルビスコを含む区画に大量に放出することで、酸素との競合に勝ちやすくしている。

こうした差はあっても、植物にはほぼ普遍的に光呼吸が維持されている。

酸素濃度が低くて二酸化炭素濃度の高い環境で光合成が進化したのなら、光呼吸はそれほど影響はなかったと思われる。

このため、この時期にルビスコを必要とする経路が完成してしまったいう考えもある――たぶん違う。

農業生産においても、光呼吸による資源の浪費がある。

それで光呼吸をさせない遺伝子改変植物もつくられたけど、商業的には失敗している――十分な食料を得れない国で、生産性を向上させようとした。

こうした植物は、二酸化炭素濃度が高くて酸素濃度が低ければ成長できる――通常の空気では生き延びることができない。

おそらく光呼吸は、酸素の毒性から植物を守っている。

二酸化炭素の量が足りていない時に、吸収した光エネルギーによる光合成器官の酸化障害を防ぐためだと推測できる――二酸化炭素も酸素もない条件で葉細胞や葉緑体に強く光を当てると、不可逆的に光合成能が低下する。

酸素濃度が高いと、植物の成長は抑えられる。

そうすれば、炭素の埋蔵量も変化する。

デーヴィッド・ビアリングらは、現在の21%から35%まで、酸素濃度を上げながら様々な植物を育てた。

25℃では、大半の植物で生産性が低下した――18%も。

ただ、進化的に古いグループの植物は影響が少なかった――シダやイチョウ、ソテツなど石炭紀に進化したもので、落葉樹や灌木、穀物など現生植物最大のグループである顕花植物は、その後で進化する。

これらの植物は葉に気体を出し入れする気孔の数を増やして、二酸化炭素をより多く集められるようになっている。

この実験では、二酸化炭素を300~600ppmに増やしても植物の生長は低下しなかった――高まることもあった。

石炭紀の前のデボン紀には、二酸化炭素の濃度は3000ppmと高かったと思われる――そしてペルム紀の2.45億年前には300ppmにまで低下したと推定される。

石炭紀とペルム紀初期の高い酸素濃度は、おそらく熱帯域以外では植生に大きな影響を与えることができなかっただろうと推定されている。

沼沢地の微生物や光呼吸は、現在では酸素濃度を調節しているかもしれない。

だけど石炭紀の条件では、酸素濃度の上昇を鈍らせる程度しかできなかったと思われる――石炭紀の炭素埋蔵速度は他の時代の平均よりも600倍も速く、埋蔵した有機物の総量でも他の時代をはるかに凌ぐ量だったと確認されている。

そして光呼吸は、炭素の同位体のなかで炭素12を選択的に集める――炭素12が軽いから。

組織内に放出した二酸化炭素は葉から出る前に、再びルビスコによって取り込まれることもある。

炭素12は光呼吸の割合が多いとより濃縮され、酸素濃度が高いと光呼吸の割合は増える。

調べられたすべての植物で、酸素濃度が高くなると炭素12の濃縮率が高まる――特に石炭紀に進化した古いグループでは、選択性が高かった。

これらの実験を考慮した炭素同位体比の計算でも、石炭紀の酸素濃度は35%に達したと推定される。

石炭紀には虫などが大型化し、1mを超えるようなヤスデやサソリに、広げた足が50cmにもなるクモなどが現れた――現生の類縁種からすると、かなり巨大である。

50m近くにまで巨大化したヒカゲノカズラ類による森林もあった――現生のヒカゲノカズラはマンネンスギの様な草本性のもので、30cmを超すことは少ない。

こうした巨大化傾向は、高い酸素濃度によるものだと思われる。

そして私たちの祖先は、石炭紀の初期に両生類と分岐する。

                                          ァァァァ  ・・・・・・

                  ――  

大タープの西側、何枚かのタープをつなげて広くしたのが張ってある。

土を集めてゴミ袋に入れる作業場。

あそこの土を借りて、崖に運んでる。

「・・・・」

私は、少し荷台の様子を見に行く。

コックさんが荷台の箱を調べている。

箱に番号を付けて、中身はタブレットで管理するらしい。

多いから夜までかかるだろう。

水ボトルはすべて、トレーラーに運ぶらしい。

空になった箱には、トレーラーが持ってきた食料を入れる。

私の箱ベッドの下には、リンゴなどを隠してある。

つまみ食い用である。

あそこは調べさせるわけにはいかない。

「♪」

近づいたしまネコを、掴む。

お昼ごはんはまだ・・・・

                   ジャリ

                                                ァァァァァ  ・・・・・

           ミャ~


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