トタン2

2016年10月16日 18時59分29秒 | マーロックの雑記

                                          ァァァァァ  ――――

                        バチ

     パチチ

トタンに雨があたる・・・

いい音。

イスに座って、耳を澄ます。

森からも、集まった水が地面に落ちる音。

風が弱くなって、そんな音が聞きやすい。

「――」

「zzz」

すこしドラム缶ストーブで温まったら、すぐ歩き始める予定だった。

だけどノロマさんが寝てる。

歩き疲れたのと、ポカポカして眠くなったよう。

買っておいたおにぎりも食べたし。

以前は洞窟で寝たりすることもあったから、この状態で寝るのも慣れてしまったのかもしれない。

私のピ―コートをかけてある。

しまネコとシロネコも、ノロマさんの横のイスで寝てる。

ミニ耳ネコも。

私は中も長袖を着ていたけど、火の側は暑いので腕まくりしてる。

                                    ポチャ  ポチャ

            パチチ ・・・

腸は脳に影響を与える――うつ病や自閉症との関係が疑われている。

先進国で暮らす人の腸のマイクロバイオータは、多様性を失いつつある。

ジェフリー・ゴードンのチームは、産業革命の前とあまり変わらない暮らしをする先住民と、合衆国に住む人の腸マイクロバイオータの多様性の違いを調べた。

先住民が平均で1400種とか1600種だったのに対し、合衆国の人は平均で1200種と多様性が低かった――先住民は住む場所が遠く離れていても、組成がよく似ていた。

マイクロバイオータがつくる酵素も違いがあり、合衆国の人はビタミンを合成する酵素や医薬品、重金属を分解する酵素が多かった。

多様性の変化は肥満やアレルギーなどに影響を与えている可能性がある。

現在、成人は1/3が過体重で1/9が肥満。

世界には70億以上の人がいて、十分に食事を得られない人たちを合わせても4割以上の人が過体重か肥満なのである――さらにその3~4割が2型糖尿病で、そのうち8%くらいがやがて心臓病で亡くなる。

増加は続いていて、子供の肥満も増えてる。

様々な減量方法と体重維持の方法が研究されてきたけど、ほとんどの患者はもとに戻る。

11年前、ジェレミー・ニコルソンが肥満がこれほど増えているのは抗生物質が原因だとする説を発表した。

肥満が急増するのは40年前頃からだけど、増え始めるのは抗生物質が一般的な薬になる70年前ごろから。

抗生物質の量産が可能になったころ、合衆国でニワトリに抗生物質を与えると50%も成長が促進されることが分かった――差はあるようだけど、基本的にどの抗生物質でも大きくはなる。

第2次大戦で勝利した合衆国は、そのために過剰になっていた生産力をどこかに向ける必要があった。

戦争中は節約が美徳とされていた価値観を、大量消費へと向けることになる――流行りのものを持っていないと洗練されていないといったような価値観を広めた。

都市に人口が集中し、生活費の高さに人々が苦しんでいた。

安い食肉の需要は非常に高くなっていて、ウシにもブタにもヒツジにも、抗生物質が投与されるようになる――家畜はどんどん大きくなる。

それ以来、治療量以下の抗生物質投与は現在まで続いている――合衆国の抗生物質の7割が家畜に使われていると推定される。

もし抗生物質がなければ、合衆国の需要を満たすために4億羽以上のニワトリと2000万頭以上のウシと1000万頭以上のブタが追加で必要になる。

太った人は食欲旺盛で、より食肉の需要が高まっている。

肥満の人が痩せても、8割の患者は1年以内にまた体重が増加する。

減量に成功した肥満の人へのある調査では、47人全員が肥満の富豪になるよりも痩せている方がいいと答えた――肥満に戻るのを非常に恐れている。

今は減量ではなく、せめてこれ以上太らないように指導がされている。

                      パチ パチ  ・・・

12年前、フレドリク・バークヘッドとジェフリー・ゴードンは腸のマイクロバイオータと代謝の作用の基礎的な研究を行った。

無菌マウスはひどく痩せている――帝王切開で産まれ、無菌室で育てられている。

成体の無菌マウスに、通常マウスのマイクロバイオータを移した。

すると、食べる量は減ったのに14日で60%体重が増えた。

マウスが消化できない食べ物を、微生物が分解して利用できる分子に変えている――宿主は少ない食料で生きられ、微生物は住む場所と食べ物を供給してもらえる。

食欲を抑えるレプチンというホルモンをつくれなくしたob/obマウスは、普通マウスの3倍の体重を持つ――まんまるな体形になる。

ルース・レイは、この肥満マウスと通常マウスのマイクロバイオータを比較した。

肥満マウスはバクテロイデーテス門の細菌が半分に減っていて、そのかわりにフィルミクテス門の細菌が増えていた。

人でも調べて、同じように肥満の人はフィルミクテス門が多くて痩せた人はバクテロイデーテス門が多かった。

同じ研究室にいたピーター・ターンバウは、レイの肥満マウスのマイクロバイオータを無菌マウスに移した。

それとは別の無菌マウスに通常マウスのマイクロバイオータを移し、それぞれに同量のエサを与えた。

2週間後、肥満マウスから移されたマウスだけが太った。

腸の微生物群は、別の個体に移せることが分かった――それで彼らは、この方法で肥満を治療する関連の特許を取った。

その後の計算で、肥満マウスは同じエサを食べても2%多くエネルギーを吸収しているのだとわかった。

ライナー・ジャンパーズは5年前、協力者に一定のカロリー食を食べてもらって、その糞便のカロリーを測る実験をした。

痩せた人が高カロリー食を食べると、フィルミクテス門の細菌が増える。

そして消化し残ったカロリーが減り、同じ食事をしても1日当たり150kcal余分に吸収されていた――消費量が同じなら1年で7kgくらい太る。

妊娠中の女性は太るけど、人の妊娠初期の微生物を移された無菌マウスより、妊娠後期のを移された無菌マウスの方が体重が増えて血糖値が上る。

小腸で消化し残ったたべものは大腸で分解される――アミノ酸やビタミンなど、私たちの生存を助けてくれる分子も生産する。

肉を多く食べる人ならその分解に適した微生物、野菜を多く食べる人ならその分解に適した微生物が増える。

食欲を調整するホルモンはいろいろあって、レプチンは脂肪細胞から直接分泌されてその量を脳に伝える――脂肪の量が増えればレプチンの量が増え、食欲を抑える。

レプチンをob/obマウスに摂取させると、カロリー制限以上に体重が減る。

だけど肥満の人にレプチンを注射しても、脳がレプチンに耐性を持つようになっていて体重が減らない。

太っているとレプチン耐性のせいで、いくら食べても食欲が抑えられなくなる――痩せた人だと、少し体重が増えただけでレプチンの効果で食欲が抑えられる。

こうした反応は、かつては有益だったと思われる――高カロリーの食べ物が豊富な時は、食べまくってエネルギーを蓄えておくことは、飢餓に備えるのに重要だっただろう。

                           zzz

ニワムシクイという小鳥は、夏と冬で6500km移動して住む場所を変える。

長距離を飛ぶので、旅の前に2週間で17g程度から37g程度に体重を増やす――60kgの人が130kg以上にまで増えるペースである。

短期間で太るために、昆虫ばかりの食事からイチジクとか液果類の食事にかわる。

移動中はほとんど食べず、越冬地に着いた頃にはもとの体重に戻っている。

ただ、鳥カゴで飼っているニワムシクイも同じ時期に太って痩せる――野生のニワムシクイが越冬地に着くころ、カゴの中のニワムシクイも痩せる。

過酷な旅もせず、餌も豊富にあるのだけど、カゴの中でも元の体重に戻る――やや小食になるけど、それ以上に痩せる。

この調節作用はまだ解明されていない。

ニキル・ドゥランダハルは、25年前にニワトリを太らせる奇妙なウイルスを知る。

ウイルスに感染して動物が死ぬと、ふつうはかなり痩せている。

だけどこのウイルスで死んだニワトリは、肝臓が肥大して胸腺が縮小して大量の脂肪がつく。

ドゥランダハルは別のニワトリにそのウイルスを感染させた。

3週間後、感染したニワトリは健康なニワトリより太っていた。

肥満は生活習慣ではなく、感染症なのではないかと疑った。

ドゥランダハルは家族とともに合衆国に移り、研究しようとした。

彼のアイデアを支持する人は少なく、ウイルスを持ち込む許可も得られなかった。

2年が過ぎ、もう祖国に戻ることを考えていたころ、リチャード・アトキンソンとの共同研究が決まった。

問題となったウイルスはないので、それに似ているアデノウイルス36…AD36を実験用カタログで選んだ。

AD36はニワトリを太らせた――別のアデノウイルスは太らなかった。

意図的に人にこのウイルスを感染させるわけにはいかない――太った場合の治療法がないので。

それで、2人はマーモットという小型のサルで実験して、やはり太ることを確認した。

確信を強めたドゥランダハルは、血液を提供してくれた数百人のAD36抗体を調べた。

すると、肥満者の30%が過去に感染していた――普通の人は11%。

合衆国での肥満の広がり方は、感染症に似ている。

南東部から増え、北部と西部に広がっている――高カロリー食やライフスタイルの広がりなのだと思われていた。

体重増加は、摂取カロリーと消費カロリーだけでは上手く予想できない――エネルギーを貯める方法に変化が出ると思われる。

12組の一卵性双生児の男性に、1日1000kcal余分食べる日を週6、合わせて100日続けてもらった実験がある。

だいたい11kg太る計算だったけど、平均で8kgの増加だった――4kgしか増えていない人と、13kg増えた双子もいた。

ドゥランダハルの説は徐々に支持されるようになり、現在は合衆国の肥満協会の会長として肥満の原因を調べている。

                   ・・・

肥満の人の白色脂肪細胞には、免疫細胞が多い。

通常は脂肪細胞の大きさは一定で、必要があれば数を増やす。

パトリス・カニは、肥満の患者の脂肪細胞が炎症を起こし、新しい脂肪細胞をつくれなくなっていることを発見した。

太った人には、アッカーマンシア・ムシニフィラという細菌が少ない――痩せた人だと腸のマイクロバイオータの4%くらいで、これが少ない人ほどBMI値が高くなる。

ムシニフィラは粘液好きという意味で、この細菌は腸壁を覆う粘液層の表面にいる。

腸壁の粘液層は腸から血液内に物質が入るのを防ぐ障壁で、アッカーマンシアが減ると粘液層が薄くなる――この細菌は人に粘液を分泌するように促す。

腸にはリポ多糖を表面につけている細菌がいて、肥満の人は血液中のリポ多糖濃度が高い。

これが脂肪細胞に炎症を生じさせて、数を増やすのを阻害している。

その結果、すでにある脂肪細胞に過剰に脂肪がつめ込まれて肥大化する――そして機能不全になっている。

カニは、太ったマウスの食事にアッカーマンシアを入れた。

すると体内のリポ多糖濃度が下がって、新しい脂肪細胞が形成されるようになった。

体重が減ってレプチンへの感受性が戻り、食欲も減った――カニはこの発見をもとに、人にアッカーマンシアのサプリメントを与える実験を計画している。

マウスに高脂肪のエサを与えると、アッカーマンシアは減る。

だけどエサに繊維質を加えると、また増える。

まだアッカーマンシアの増減の仕組みは理解されていない。

肥満の治療の最後の手段として、胃バイパス手術が行われることがある。

過食を止めるために、胃のサイズをとても小さくする――食べる量が減り、数週間で大きく体重が減る。

この手術を受けると、1週間でマイクロバイオータの組成が変化する。

フェルミクテス門の細菌が減ってバクテロイデーテス門が増え、アッカーマンシアは1万倍に増える。

マウスの実験でも、同じ効果があった――切開して縫合するだけのニセ手術では効果がなかった。

                     ポチャ ポチャ  ――

抗生物質による家畜の成長促進効果が知られたころ、一部の医者が早産で十分な体重を持たずに生まれた子に抗生物質を与えた。

効果は良く、赤ちゃんの体重がどんどん増えた。

63年前、合衆国海軍は新兵に抗生物質を与える実験を行った――連鎖球菌の感染を減らせるかどうか、抗生物質クロルテトラサイクリンでの予防効果を調べた。

対照実験のため、そっくりのプラセボを投与された新兵もいた。

新兵は身長と体重が記録されいて、抗生物質を投与された新兵は対照群に比べて大きく体重を増やした。

およそ60年前のこれらの結果は、まだ肥満が問題となっていない時期であったので、栄養効果を高めると好意的に解釈された。

抗生物質が人を太らせることはずっと以前からわかっていたのに、長く無視されてきた。

人に対して、抗生物質の投与で体重が増加するかを調べる実験はできない――論理に反する。

それで、心臓弁の感染症で大量の抗生物質投与を受ける人たちの体重変動が調べられた。

バイコマイシンとゲンタマイシンを併用した場合、太っていた。

そしてバイコマイシン投与を受けた人の腸のマイクロバイオータが調べられた。

すると、ラクトバチルス・ロイテリが豊富に見つかった――フェルミクテス門に属する乳酸菌の一種。

この細菌はバイコマイシンに耐性があるので、他の微生物が抗生物質で一掃された後に数を増やすらしい。

そして、ラクトバチルス・ロイテリはバクテリオシンという抗菌作用のある物質を生産するので、他の細菌が増えるのを阻害して、より支配的になる――そしてこの細菌の仲間は、家畜を太らせるために以前から与えられていた。

別の研究チームは、3万件の母子の医療データを使った。

それによると、痩せた母親から生まれた子が抗生物質を投与されると、太りやすい。

太った母親から生まれた子だと、過体重になりにくくなる。

理由は分かっていないけど、肥満型のマイクロバイオータの場合、抗生物質でそれらを減らす効果があるのかもしれない。

生後半年以内の抗生物質投与に関しては、過体重の子供の40%が投与を受けており、標準体重の子供は13%だった。

マーティン・ブレイザーらによるマウスの実験では、治療用以下の量の抗生物質であっても、大きくなることが分かった――一定期間を置いて、数回投与する場合も。

また、妊娠中の母マウスに抗生物質を投与した場合のほうが、より大きくなる――産まれた後も、抗生物質は投与され続ける。

抗生物質を投与されたマウスは、脂肪の生産と末端へそれを届ける遺伝子が多く発現していた――短鎖脂肪酸も増えていた。

高脂肪食を与えると、さらに大きくなる――それぞれを単独で与える効果を合わせた以上の効果が出る。

オスよりもメスで、その効果ははっきり出た――オスは筋肉もそれなりに増える。

オスの場合が25%の体脂肪量の増加に対して、メスは倍になった――マウスの体重は20~30gだけど、抗生物質と高脂肪食を同時投与された場合、メスは約10g脂肪が増えた。

また、抗生物質を投与した群では乳酸菌の多くがいなくなっていた。

乳酸菌は胎児が産道を通る時に、母親からもらう――このため帝王切開では受け渡しが起きず、先進国での帝王切開の増加もマイクロバイオータに影響を与えている可能性がある。

小児はペニシリンをよく投与されるし、合衆国では多くの妊婦が分娩中にペニシリンを投与される。

まだ断定できる段階ではないけど、抗生物質の投与が肥満の急増に影響を与えているかもしれない。

                                        バチ バチ

私たちがたべるものの種類を変えると、短期間で腸のマイクロバイオータ組成が変化する。

脂肪の多い食事ならそれを分解する能力の高い細菌が増え、炭水化物が多ければそれに合った微生物が増える――1週間もあれば、それに合わせたマイクロバイオータが増える様。

これは、その時得られる食べ物から最大限に恩恵を受けれるようになるので、人の生存を助けていただろう。

70億の人は、遺伝的にはみな似てる――アフリカにすんでいる人たちが、最も多様性がある。

地域によって好まれるたべものは違うけど、こうしたマイクロバイオータの組成の柔軟性が、それを助けてくれているのだろう。

私の祖国に住んでいる人はバクテロイデス・プレビウスという細菌を持つ人が多く、これは海苔を分解するのを助けてくれる――マイクロバイオータ組成から8割以上の確率で出身国を推定できるのだけど、私の祖国出身者はほぼ確実に推定できる。

肥満が急増している原因がマイクロバイオータの組成の変化だとして、この100年で食べるものがどう変化したかが調べられた――肥満が増えたのは近年なので、石器時代の頃の食べ物を調べる必要はない。

脂肪を好む地域や炭水化物を好む地域、乳製品を好む地域などいろいろあるけど、多くの地域で繊維質を食べる量が減っていた。

食物繊維を食べれば、アッカーマンシア・ムシニフィラが増える――脂肪細胞の炎症を防ぐ。

連合王国では、第2次大戦から60年間、国民が何を食べているか調べられていた。

脂肪の摂取量は、終戦後の年の方が16年前よりも多い――16年前の方が体に良いと言われる不飽和脂肪酸の割合が増えて、絶対量も減っているのだけど肥満は増えている。

ヨーロッパ18か国での調査でも、脂肪の摂取量と肥満に相関はない――特に女性の場合、食事全体の46%が脂肪の国のはBMIが低く、27%しか脂肪を摂らない国の方がBMIが高かった。

の摂取量も減っていて、総カロリーも減っているのに体重は増えている――運動しなくなって、消費カロリーが減ったことで説明できるようなデータもある。

生体内で熱力学が崩れるわけではないので、エネルギー貯蔵の仕方に変化が出るのだと思われる。

初期の人類は、繊維質のものばかり食べる生活から肉などを食べるようになって、脳を大きくするなどの進化が可能になったと思われる。

何であれ極端な量や偏った食事は害があるだろう。

そうでなければ、好きなものを食べればいいのだと思われる。

ケーキでもドーナツでも食べればいいけど、一緒に食物繊維も十分に食べる必要がある。

食物繊維を十分に摂れば、食物繊維を分解する微生物が増えて、短鎖脂肪酸を出してくれる――主に酢酸と酪酸とプロピオン酸。

短鎖脂肪酸は様々な作用がある。

そのひとつは、免疫細胞の表面にあるGPR43という受容体にはまり、その免疫の過剰な反応を抑える。

脂肪細胞にもあり、分裂を促している様――肥大化して機能不全になるのを防ぎ、レプチンを放出して満腹感が得られる。

酪酸は腸壁のタンパクをしっかり閉めて、余計な分子が血液に入るのを防ぐ――その結果、様々な炎症を抑える。

全粒小麦100gに食物繊維は12.2g含まれているけど、それを粉にすると10.7gになる――精製した小麦だと3g。

スムージーにせずに生の果物を食べれば、2~3倍の食物繊維がとれる。

豆類にも多い。

合衆国で250人の女性に食物繊維の量を増やした食事をしてもらい、20か月追跡した研究がある。

1000kcalあたり8g食物繊維を増やすと、体重が2kg減ってた――1日2000kcalの人なら16g増やす。

若者を対象にした研究では、脂肪の摂取量に関係なく食物繊維の摂取量が多いとBMIが低くなるという結果だった。

75000人の女性看護師の12年の追跡調査では、未精製の穀物を好む人の方が一貫してBMIが低かった。

1日1200kcalの低カロリー食に食物繊維を加えたダイエットでは、6か月で8kg減だった――対照実験としてプラセボを与えられた人は5.8kg減だった。

―――人工甘味料と肥満の関連も疑われている――マイクロバイオータの組成を変化させて、カロリーの摂取量を増やしているらしい。

マウスに、人工甘味料を毎日与える実験が行われた――アスパルテームかスクラロースかサッカリン。

対照群には、天然のグルコースかスクロースが与えられた。

11週間後、対照群は元気だった。

人工甘味料を接種していたマウスは、血糖値がとても高くなっていた――そのままにしておけば、糖尿病や肝臓の病気、心臓病のリスクが高まる。

そのマウスに広域抗生物質を投与して腸内細菌を一掃すると、再び以前のマイクロバイオータが回復する――血糖も正常になった。

人工甘味料を与えられたマウスの腸内細菌が、遺伝子操作で肥満したマウスのものと非常に似ていることも分かった。

まだ結論は出ていないけど、少なくともサッカリンに関しては、マイクロバイオータにかなりの影響があると思われる―――

                       zzz

かつて、食物アレルギーはまれだった。

ナッツやミルク、卵、大豆などに、小麦に多く含まれるグルテンに対するアレルギーもある。

花粉症や湿疹も増えている――先進国では、この30年で湿疹を持つ子供の数が3倍に増えた。

喘息患者の割合も増えている――住む環境によってリスクが違い、途上国地域では低い。

喘息は、喫煙やカビ、大気汚染、ゴキブリの糞、風邪などがきっけとなって起こる。

発作が起きれば医療が必要で、救急搬送して治療を受けても死亡することがある。

以前に比べて、免疫系の機能不全を経験する人が増えている。

胸やけを起こす胃食道逆流症も増えている。

こうした傾向は先進国で特にはっきりしている。

なぜ増えているのかは分かっていない。

最も支持されている仮説は、清潔になりすぎたというもの――衛生仮説という。

子供のころから適度な微生物に曝されていなかったために、子供の免疫系が休んだ状態になっていたり、自分自身を攻撃し始めるというもの。

このため多くの親が、子供を動物に触れさせたり、汚れたものを食べさせたりし始めている。

抗抗生物質や帝王切開の増加によるマイクロバイオームの乱れが影響を与えている可能性がある――それだけがすべての原因ではないだろう。

私たちの免疫系の発達に、マイクロバイオータが重要な影響を与えていると思われる――複雑な生態系で、この維持に重要なキーストーン種もいるかもしれない。

2歳までに抗生物質を与えられた子供は、8歳までに喘息を発症するリスクが2倍になる――この調査では、74%の子供が2歳までに抗生物質を投与されていた。

そして治療の回数が多いほど、喘息や皮膚炎、花粉症を発症しやすかった。

感染症を抑えるために抗生物質を使うのだけど、そのせいでアレルギーなどが増えているのである――抗生物質の量が別の原因の代理指標である可能性はある。

―――以前は、免疫系と神経系は別々のものだと考えられていた。

40年以上前にネズミの実験で、そうではなくどちらも相互に影響を与えていることが分かった。

免疫抑制剤を、サッカリンで味付けした水に溶かしてネズミに与える。

すると、細菌などから体を守る抗体を作る能力が落ちる。

こうして条件づけされたネズミに、今度は甘いだけの水を飲ませる。

すると、免疫抑制剤を与えた時と同じ反応が起こる。

当時、免疫は分子レベルの活動が基本で、それ以外の活動とは無関係だと思われていた。

この実験後、神経系と免疫系を繋ぐ橋が幾つもみつかり、両者が相互に作用しあう複雑な統一体だと分かった。

人でも、カフェインの有無とは関係なく、予めカフェイン入りだと聞かされると反応が早く正確に出る。

なので以前は、医師が薬だと言ってビタミン剤を処方する事もあった――それでも効果が出るので―――

          ポチャ

アレルギーの多い地域の子供のマイクロバイオータが調べられ、特にエンテロバクター属の細菌種が少ないことが分かった。

アグネス・ウォルドは、マイクロバイオータの組成がアレルギーの原因なのではないかと考えた。

彼女はヨーロッパの衛生的な環境で育っている赤ん坊を調べた。

そして、腸内の微生物種が少ないことを確認した――エンテロバクター属も少なく、かわりに皮膚に多いブドウ球菌が増えていた。

アレルギーの発症に相関している、特定の微生物群はいなかった――ただ、のちにアレルギーを発症する赤ん坊は微生物の種類が少ない。

免疫細胞にはそれぞれ役割があって、制御性T細胞は免疫反応を抑えて炎症を抑制する――T細胞には炎症を引き起こすものと、それを抑制する制御性のがある。

遺伝子変異で制御性T細胞がつくれない子供は、X連鎖免疫調節異常・多発性内分泌障害腸症候群…IPEX症候群という致死的な病気になる。

炎症を促進する免疫細胞が増え、自身の臓器を破壊し始める。

患者の小児は、1型糖尿病や皮膚炎、食物アレルギー、炎症性腸疾患などを発症し、多臓器不全で幼くして亡くなる。

この制御性T細胞の数を調整しているのが、マイクロバイオータだとわかった――アレルギーのペットも、制御性T細胞が不足している。

こうした微生物は、自分を免疫が攻撃してこないように宿主の免疫系の働きを抑えている。

友好的な細菌も、排除されるべき細菌も、その表面には同じような分子…抗原を持っている。

免疫系がどのようにして、常在菌とそうでないものを見分けているのかが調べられた。

サルキス・マズマニアンは、バクテロイデス・フラジリスという細菌の信号を発見した――この細菌は、出生直後に腸に入る。

この細菌が生産する多糖類A…PSAは、表面を保護された状態で細胞から放出される。

これを免疫細胞が取り込み、PSAが制御性T細胞を増やす――そして、バクテロイデス・フラジリスは攻撃を受けない。

PSAのような分子は、他にもあるだろう。

生まれて早い段階でこのような作用を受けることが、適度に免疫系の炎症反応を抑えるのに重要なのだと思われる。

そしてマイクロバイオータの組成が乱れていると、腸壁が緩んで不要な分子が血液に入る――血液からは水が流れ出て、下痢になる。

これを攻撃するために、あちこちで炎症が起こる。

肥満の人は脂肪細胞が炎症を起こしている。

皮膚のトラブルも、心の病も、近年増えている病気の多くは免疫が過剰に反応している――その結果、どこかで炎症が起こっている。

生まれて間もない子供に抗生物質を投与することも、影響はあると思われる――必要ならためらうべきではない。

正常な免疫系の獲得に、衛生的でありすぎることは問題ではないのだろう――あえて病原菌に曝される必要はない。

免疫系の発達を促す、マイクロバイオータの多様性が重要なのだと考えられる。

            ―――

2型糖尿病は肥満に関係しており、生活習慣が原因でなるのは2型。

インスリンは血液中の糖を細胞内に入れるのに必要なホルモンで、すい臓で生産される。

1型は生活習慣には関係なく、すい臓がダメージを受けて発症する。

先進国では、この20年で1型の患者が倍になった。

かつて平均9歳で発症していたのが、6歳になっている――インスリンを生産するβ細胞が完全に破壊される年齢という事で、障害はそれ以前から始まっている。

1型を発症させる遺伝子はあるけど、近年は環境因子がより注目されている――ウイルス、ビタミンDの欠乏、牛乳によって生じる抗体、清潔になりすぎた・・・など。

だけど、生後すぐのマイクロバイオータ組成が関与している可能性がある。

1型糖尿病は、帝王切開で産まれた子供、背の高い男児、生後1年で体重が大きく増えた子供に多い。

人とは違うけど、1型に似た糖尿病を発症するマウスで実験が行われた。

結果は、少なくともオスのマウスに関しては抗生物質の投与によって発症数を増やし、発症年齢を下げるリスクを高めている。

                           zzz

37年前、医師のロビン・ウォレンは胃の粘膜中に細菌がいることに気付いた。

当初カンピロバクター・ピロリジスと呼ばれ、次にカンピロバクター・ピロリ、さらに数年後、ヘリコバクター・ピロリと呼ばれる――カンピロバクター属だと思われていたのが、その親戚だと分かったため。

それはS字型の細菌で、胃酸の中で生きていた――胃は無菌だと思われていたけど、そうではなかった。

さらにその保有者は、胃壁に炎症の兆候がみられることも分かった。

研修医のバリー・マーシャルと共に研究を続けた。

胃潰瘍の患者は、例外なく胃炎を発症している。

それを知っていたマーシャルは、胃潰瘍の患者とそうでない患者を調べた。

潰瘍患者のほぼ全員に、その細菌と胃炎が見つかった。

だけど、潰瘍でない多くの人にも細菌と胃炎がみるかる。

数年後、2人は新たに開発された方法を用いて、ピロリ菌の培養に初めて成功する。

生検の結果、マーシャルの胃にピロリ菌がいない事が分かった。

ピロリ菌と潰瘍形成の関連を証明するために、マーシャルはピロリ菌を飲んだ。

数日後に消化不良が見られ、生検で胃からピロリ菌が見つかった。

さらに胃炎が起きた。

数日後の生検で、その胃炎はほぼ消失していた。

この急激な胃炎は数日で自然治癒した――ピロリ菌保有者の、慢性胃炎とは違った。

ピロリ菌の残留を恐れたマーシャルは、チニダゾールという抗生物質を飲む。

その後、ピロリ菌はいなくなった。

この実験が、ピロリ菌が病原体だという考えを広めることになった。

けど現在、チニダゾール単独ではピロリ菌除去の効果がないことが分かっている。

つまりマーシャルの炎症とピロリ菌感染は、自然に消失していたのである――そして、胃潰瘍は発症しなかった。

ピロリ菌は一度胃の中に落ち着くと、とても粘り強く持続感染する――ペットやヨーグルトの細菌は、一時的に体内で生活するだけである。

マーシャルとウォレンは、さらに研究をつづけた。

ピロリ菌がたまたま居ただけなのか、潰瘍の原因となるのかを調べた。

潰瘍患者に、殺菌効果のある蒼鉛を使った治療と、使わない治療を行った――蒼鉛を使ったほうが潰瘍の再発率が低く、他の研究者も追試した。

こうして、抗生物質を含む薬剤で潰瘍の治療が可能となった――そして再発の予防も。

これらの功績に対して、11年前に2人はノーベル賞を受賞した。

遺伝子研究から、私たち人は、このピロリ菌を少なくとも10万年以上保有していることが分かっている――現在の方法では、それ以前の事は分からない。――――

胃潰瘍は男性の方が多く、幼少時からピロリ菌を保有していても、その発症は30代から50代で高く、その後減少する――理由はまだ分かっていない。

31年前、マーシャルらの主張に疑問を持ったマーティン・ブレイザーらは独自に実験を始めた。

ピロリ菌は多様であるけど、感染者は菌に対する抗体を保有していることを発見した――共同研究者のギレルモ・ペレスは、抗体を用いたピロリ菌の検査法を開発した。

そして、CagAと名付けられた遺伝子を発見する。

ピロリ菌には大きく、CagA陽性と陰性の2種類がいる――陽性菌は胃の細胞と活発に相互作用し、陰性菌はそれが低い。

強毒のピロリ菌はCagAタンパク質を生産し、宿主の胃壁細胞に注入していた――これが炎症の原因で、当初はよくない事だと思われた。

続いて、すべてのピロリ菌が保有するVacAというタンパク質が発見された。

このタンパク質が一定量あると、胃上皮細胞に穴をあける。

さらに、冷凍保存されていた退役軍人の検体を用いて、胃がんとピロリ菌の血中抗体価の比較が行われた。

結果は明らかで、ピロリ菌保有者の胃がん発症率は、保有しない人の6倍に達した。

別のチームの研究も同じ結果を示し、その後、CagA陽性菌の保菌者はさらに2倍の発症率であることが分かった。

胃潰瘍から胃がんまで、当然だけどピロリ菌は排除すべき対象になった――現在の治療法だと、80%でピロリ菌を根絶させることができる。

消化管に症状を持つ患者は、ピロリ菌の検査が行われた――保菌者は抗生物質で治療される。

ただ、潰瘍以外の症状に対して、ピロリ菌の除去が症状を改善させると言う臨床試験の結果は出なかった――それでも除菌は続けられた。

世界的にピロリ菌保有者は減り、先進国で時に速かった。

ピロリ菌の宿主は人だけで、他の動物や土壌から感染することはない。

おそらく多くの場合、母親が赤ちゃんに食べ物を与える際、子供に移る――以前は衛生状態が悪く、排泄物が水や食べ物を汚染することは多く、そうした感染も多かったと思われる。

このため母親が非保菌者の場合、その子供もピロリ菌を持っていない場合が多い――現在20歳以下の人は、保有していない場合が多い。

1歳から10歳までに、いくつかの種類のピロリ菌に感染する――その後は感染頻度は減り、成人で感染することは多くないと思われる。

また、人とサルの実験で、ピロリ菌が宿主に適応するのに時間がかかることも分かった。

胃食道逆流症は治療しないでおくとバレット食道を起こし、続いて食道がんを引き起こす。

こうした食道がんは、食道の下の方から胃の上部に多い――それ以前は、食道上部から中部に発症していた。

バレット食道は先進国で増えている――胃食道逆流症は子供にも増えていて、制酸薬の投与を受けている。

胃食道逆流症とピロリ菌の関連が、疑われた。

患者とそうでない人の血液検査で、ピロリ菌の保有の有無に違いがあるか調べられた。

こうした検査は一般的に、二重盲検で行われる――研究者も、どの血液が患者のものか分からない状態で検査する。

患者にピロリ菌保有者が多いと予想されていたけど、逆の相関が示された。

現在では、ピロリ菌を保有しない人は胃食道逆流症の発症率が8倍になることが分かっている。

さらに、CagA陽性菌がいる方がより発症を抑える事も分かった。

普通は胃に炎症がある状態は正常でないと考えるけど、ピロリ菌は胃に炎症を起こすことで胃酸生産の調整をしている。

人は年齢とともに、慢性の炎症で胃酸の生産を減らしている。

だけどピロリ菌を持たない人は、胃酸の高生産を40代になっても続ける。

このため酸性度の高い胃酸が食道を傷つけることになる。

ピロリ菌は胃がんのリスクを高めていると同時に、食道がんのリスクを低下させているらしい。

        パチチ  ・・・

この70年、喘息の罹患率が増えている。

胃食道逆流症と喘息に関係があることは、以前から知られていた――食道を逆流する胃酸が、気道を刺激して塞ぐと思われる。

喘息患者が制酸薬投与などの治療を受けると、呼吸状態も改善する。

こうした関係はあったけど、喘息は外部の物質に対する反応が主な原因だとされてきた。

ブレイザーは喘息とピロリ菌の関係を研究しようとしたけど、協力する臨床医がいなかった――ピロリ菌は危険な細菌だと思われていたため。

その後、呼吸器専門医のジョーン・リーブマンが協力することになった――成人喘息のための病院を立ち上げた女性。

二重盲検で行われ、ピロリ菌と喘息に逆相関が示された。

ピロリ菌の保有者は、喘息の発症率が30%低かった。

さらにCagA陽性菌の保有者は、ピロリ菌を持たない人よりも40%低いことが分かった。

またピロリ菌を持つ人が喘息になる平均年齢は21歳だったけど、持たない人は11歳だった。

別の大規模調査では、1歳までの抗生物質投与と7歳時点での喘息に関連があることも分かった。

さらに、別のアレルギーにも、ピロリ菌との逆相関が分かった。

アン・ミュラーの研究チームは、マウスを使った実験を行った。

喘息を誘発したマウスにピロリ菌を感染させると、アレルゲンに対する反応が低下した。

そして、死んだピロリ菌を投与しても喘息予防にはならなかった。

追加実験で、ピロリ菌が胃壁の樹状細胞と相互作用して、制御性T細胞の生産を引き起こすことが分かった――自分自身を排除する免疫を抑制しているのである。

その結果、アレルギー反応も抑制される。

ピロリ菌を保有することの利益は、子供の頃に特に高い様である。

人によって除菌した方がいい場合、または再感染させた方がいい場合があるだろう――今後の研究でより理解が進めば、そうした判断もより正確に行えるようになると思われる。

                    ――

都市に暮らす人は、殺菌作用のある製品に接する機会が多い。

衛生状態をよくするのには、微生物が付着しやすい汚れ、彼らのエサとなる食べかすなどが洗い流すことができれば十分に効果がある。

だけど殺菌効果があるとする製品は増えている――99%の殺菌作用と書かれている場合、それは実験容器の中で死んだ微生物の割合で、わずかに生き残った微生物はライバルが減るので増殖しやすく、そして病原菌の多くは殺菌剤に接すると芽胞をつくって危機が去るまで休眠する能力がある。

殺菌物質のトリクロサンは、人体への害の可能性が指摘されている――排水から水源に入り、生態系のバランスも崩す。

人体では、生まれた子の臍帯血、母乳、脂肪組織から見つかっている――75%の人の尿から検出されている。

体内にトリクロサンが多いほど、花粉症などのアレルギーを発症しやすい――重症度にも相関関係がある。

どのような作用を及ぼしているのかは分かっていないけど、幼児に触れる製品を抗菌剤で洗うのはデメリットが大きいかもしれない。

そしてトリクロサンは、成人の鼻水からも検出される。

濃度が高いほど黄色ブドウ球菌のコロニーができやすく、本来の抵抗力を低下させている――エストロゲンやテストステロンなどの働きを阻害する効果も持っている様。

そしてトリクロサンが塩素消毒した水道水と結合すると、発がん性のあるクロロホルムになる。

製品に使われている抗菌作用のある物質は数万種あり、そのほとんどは安全性の確認はされていない。

普通の石鹸で手を洗うのは重要で、手の常在菌のバランスを乱すのだけど、それ以上に感染症のリスクを下げるのでメリットが大きいと思われる。

消毒するのなら、アルコールを使うのがいい――消毒用のエタノールは市販されてる。

アルコールは細胞を構成する構造を破壊するので、耐性菌にも効果がある。

             zzz

                      ――

人の汗のにおいは、全身にあるエクリン腺ではなく、わきと陰部に集中しているアポクリン腺がもとになる。

アポクリン腺は思春期になるまで活性化はせず、それ以降は異性に自身の健康状態と妊娠可能かどうかなどの情報をフェロモンで伝える。

アポクリン腺からでる汗はもともと無臭で、皮膚のマイクロバイオータによって分解されて匂うようになる――組成に個人差があるので、どんな匂いになるかも個人差がある。

微生物を減らそうとしたり洗ったりすることで、マイクロバイオータの組成が変わる。

特に影響があるのがアンモニア酸化細菌で、一度減ると増えるのに時間がかかる。

これらの細菌は、アンモニアを亜硝酸塩と一酸化窒素に変える。

亜硝酸塩と一酸化窒素は細胞の活動調整の他、微生物の抑制作用もあり、これがないとコリネバクテリウムとブドウ球菌が増える――コリネバクテリウムがとくに不快なにおいの原因になる。

泥の中でゴロゴロしたり、天然水に浸かっていればアンモニア酸化細菌が補充できると思われる――スプレーでそれを補充するための商品も、研究されている様。

原始的な生活を送る人達は川などで体を洗うのだけど、暑い日も激しく動いた後も、彼らは体のにおいは気にならない――石鹸を持っていて、たまにそれで体を洗う人たちがもっともにおいが気になる。

清潔であることがよいと思って体を泡で洗うのだけど、それがにおいの原因になっているのである。

先進国では、9割の人がにきびに悩まされる時期を経験する――特に10代後半が多いようで、男性よりも女性の方が多い。

原始的な暮らしをする人たちは、にきびにならない。

何十年か前に、アクネ菌が原因だとする考え方が広まった。

抗生物質を皮膚に塗布しても、直接飲んでも、症状は改善することが多い。

このためアクネ菌が原因だとする説が長く支持されていた。

アクネ菌はにきびでない人の皮膚にもいて、その多さはにきびの多さと重症度には相関しない――皮脂や男性ホルモンの量も。

にきびの皮膚には免疫細胞が多く存在する――症状の出ていない場所にも。

アクネ菌を含む皮膚の常在菌を、免疫系が間違えて攻撃している事が原因だと思われる――まだ、断定はできない。

腸でも同じことが起こる。

マイクロバイオータの組成が変わると、通常は攻撃対象とみなさない常在菌を攻撃する――制御性T細胞の働きが弱くなる。

その結果、炎症性腸神官や潰瘍性大腸炎を患う。

炎症が腸壁のDNAを傷つけて、結腸直腸がんのリスクが高まる。

痩せたマウスと肥満のマウスに発がん物質を与える実験が行われた。

太ったマウスは1/3が肝臓がんになった――痩せたマウスはほとんどがんにはならなかった。

肥満マウスの血液は、DNAを傷つけるデオキシコール酸の濃度が高くなっていた――デオキシコール酸は肝臓で分解される。

これは胆汁酸のひとつで、脂肪を消化するのを手伝う。

このデオキシコール酸の生産を手伝うのはクロストリジウム属の細菌たちで、肥満マウスの腸にはクロストリジウム属の細菌が多い。

クロストリジウム属を標的にする抗生物質を与えると、肝臓がんのリスクは減った。

                 パチン ――

6年前、当時56歳だったペギー・リリスは歯の治療を受けた――いろいろな仕事をしながら2人の子供を育てていて、最後は幼稚園で働いていた。

歯科医は治療後、感染を防ぐために1週間分の抗生物質を処方した。

週が終わるころ下痢になり、火曜日に消化器内科を受診することになった。

火曜日、彼女はベッドから起き上がることが出来なくなっていて、救急隊員が来た時にはショック状態になっていた。

病院で検査し、クロストリジウム・ディフィシルに感染していることが分かった。

この細菌は健康な人なら数は少なく普段は害はないけど、抗生物質によって競合する腸内細菌が一掃され、増殖した――12分で倍に増え、数時間で腸内を覆う。

クロストリジウム・ディフィシルは、大腸に結合するために毒素を出す――大腸は穴だらけになる。

ペギーがどこで感染したのかは分からない。

もともと持っていたのかもしれない――大腸が健康なら、他の細菌によって増殖は阻止される。

病院にいる場合、他の患者や医療従事者から感染することが多いけど、彼女は入院した経験はなかった。

ボロボロになった腸管壁から細菌が漏れだした――このため敗血症で高熱が出て、その治療でさらに抗生物質が投与された。

医師は大腸を取り除くために手術をしたけど、歯の治療から2週間後に亡くなった。

クロストリジウム・ディフィシルが下痢を起こすことは、30年以上前から知られている――抗生物質が下痢を起こすことは、50年以上前から知られていた。

入院患者に多く、これは抗生物質を多く投与されるため――医療従事者の手洗い、床磨き、重症の下痢患者を隔離するなどの対策で、院内感染は減少した。

そして10年前から、クロストリジウム・ディフィシルへの感染が重症化し亡くなる人が増えた。

DNAが分析され、遺伝子に変化が起きて毒素の生産量が増えていた。

さらに、複数のクロストリジウム・ディフィシルがそれぞれ異なる変異を起こしており、そのいずれもが、毒素の生産率を高めていた――同じ時期に、別々に同様の変化が起きたことになる。

こうした強毒性の菌は、ヨーロッパや合衆国で多い。

そしてペギーのような入院経験のない人にまで感染しており、感染力が高い。

―――マイクロバイオータの重要性を示す実験は、60年以上前に行われていた。

マジョリー・ボンホとフィリップ・ミラーは、マイクロバイオータが病原体に対して防御的な働きをしていると信じていた。

マウスを使った実験で、サルモネラ・エンテリティディスを接種した。

正常なマウスの場合、半数のマウスを感染させるのに数十万の菌が必要だった。

だけど抗生物質を投与した数日後のマウスだと、3個の菌で感染した――最初はストレプトマイシンで、その後ペニシリンなど他の物質で行われた。

30年前、合衆国でサルモネラ菌の大流行が起きた。

16万人以上が感染し、数人が亡くなった――狭い範囲で流行しており、感染源が、ある工場の牛乳だと分かった。

保健局はこの時、患者50人と、発症しなかった50人の対照群に「1か月の間に抗生物質を飲んだか」という質問をした。

その結果、抗生物質を飲んだ人の発症リスクは5.5倍だった―――

88年前、アレクサンダー・フレミングがペニシリンを発見する。

すぐに、この物質への耐性を持つ菌が現れることを懸念していた。

ペニシリンが量産されるようになって数年後、耐性菌が現れる――ペニシリナーゼという酵素でペニシリンを分解する。

この耐性を持った黄色ブドウ球菌に対抗するため、57年前にメチシリンという抗生物質がつくられた――黄色ブドウ球菌はよくいる細菌で、私たちの体にも付着している。

3か月後、病院でペニシリンとメチシリンに耐性を持った新種が発見される。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌…MRSAと呼ばれ、現在も多くの命を奪っている。

抗生物質を使うと常在菌が減り、生き残った耐性菌に感染する可能性が高くなる――友好的な微生物が多くいるときは、耐性菌がいても数を増やすことができない。

合衆国の疾病管理予防センター…CDCは3年前、現在最も危険な耐性菌はカルバペネム耐性腸内細菌だとしている。

致死性の高い細菌で、現在の抗生物質にはほぼすべて耐性を示す――その耐性遺伝子を、他の細菌に渡すこともできる。

次に危険だと報告されたのはクロストリジウム・ディフィシル。

多くの医療施設で、抗生物質への耐性を持った細菌が見つかっている。

                                       バチ チ

100年前の前世紀初頭、大腸は必要のない器官だという説が支持されていた時期がある――結腸の切除手術もしていた様。

大腸に微生物がいることが分かった時期で、それがいない方がいいと思われたのである。

この時期に最初のプロバイオティクスのブームがあって、ラクトバチルス属の細菌が乳製品やカプセルに入れて販売された――ラクトバチルスが嫌気性でなく、比較的簡単に培養できるため。

このときは、ラクトバチルスが腸内を掃除してくれると思われていた――バクテリオシンという抗菌物質を出すので。

こうした微生物は腸で数を増やすことができず、通過するだけになる。

私たちにとって利益になる微生物や、それを含む食べ物の事をプロバイオティクスと呼ぶ。

微生物が増えるのを助ける物質をプレバイオティクスと呼び、それと微生物と一緒にしたものはシンバイオティクスという。

健康食品としても売られている。

ごく一部をのぞいて、厳密に科学的な効果が確認されているものはない――審査には費用がかかるので。

効果を実感したとして、それはプラセボ効果かもしれない。

ただ、少なくとも大半は安全ではある様――健康なひとであればそれらを食べることのリスクは少ないと思われ、生きた細菌を食べること自体のメリットがあるだろう。

そして近年、健康的なマイクロバイオータを移植するために便移植という治療法が行われている――便の重量の75%以上は細菌で、色は壊れた赤血球の色素によるもので、においは大腸で食べ物を分解するときにでる硫黄を含んだガス。

腹痛や下痢に悩んでいる人が、便移植をする例も増えている――苦しい思いをしている人は、便移植への抵抗はあまりない様。

生理食塩水と便を混ぜて腸に入れる方法で、アレクサンダー・コルツが用法を開発した――1000年以上前の医学書にも、直接飲ませるという治療法が載っている。

お尻からチューブで大腸まで届けるのだけど、鼻や喉から胃に流し込む方法もある――トム・ボロディとコルツは、カプセルに入れて投与する方法も開発した。

そして3年前、クロストリジウム・ディフィシル感染の再発患者に対して臨床試験が行われた。

通常の抗生物質による治療を受けるグループと、便移植を受けるグループに分けられた。

抗生物質の治療では31%の治療率だったのに対して、便移植は94%に達した。

その差があまりにも違いすぎるので、抗生物質を用いる治療は倫理的でないという事で試験はすぐに中止された。

これは、腸内のマイクロバイオータの多様性を失った人には、それを回復させる治療が有効であることを示している。

この研究以降、便移植をする人が増えてた。

それによる被害はまだ報告されていないけど、病原菌が移植されるリスクもあるため、安全確保のための規則の整備が進められている。

マーク・スミスの友人は便移植を受けたがっていたのに、それを実行に移す医者がいないかった。

それでジェイムズ・バージェスと共に、スミスの指導教官だったエリック・アルムの支援のもと、オープンバイオームという非営利の便バンクをつくった――便の提供者とスクリーニング、水溶液の調合とその出荷までを行う。

痩せた人の便を肥満の人に移植して、減量できるかどうかの臨床試験も行われた――マウスでは成功していて、アンネ・フリーゼとマックス・ニュードープのチームが行った。

移植を受けた9人の男性はインスリン感受性が上がり、細菌も178~234種増えていた――6週間ほどで。

自分の便を戻された9人の対象群では、依然と変わらなかった――現在、2度目の試験を行っている。

自閉症児への臨床試験はまだ行われていない。

だけど自閉症児の親はどんなものでも試したいと思っており、動画サイトを見て自分でそれを行う例が増えている――20程度の単語しか使えなかった子が、800語まで増えたという事例もある様。

微生物学者のエマ・アレンは、痩せていて健康で病気の経験がなく、けがの時に抗生物質を単回投与されただけだという女性を見つけた――授業の時に学生に聞いていてらしく、数十年かけて外国から来た農村の女性を発見した。

理想的な腸マイクロバイオータを持っていると思われるので、彼女の協力を得て33種の細菌を選んで培養した――いずれも危険はなく、万が一の時は抗生物質で除菌できるもが選ばれた。

それを再発性のクロストリジウム・ディフィシル感染に苦しんでいた2人の女性に移植すると、数時間で下痢がとまって帰宅できた。

抗生物質によって、私たちと共生してきた古い細菌が失われつつあると思われる。

それを保存するため、熱帯の森林や高地で周囲とあまり接触していない人たちの便を集めている研究者もいる。

どの細菌が重要なのかが理解されてくれば、それらの菌を培養することもできる。

便移植をしなくても、いずれ適切な組成のプロバイオティクスとプレバイオティクスをセットにして投与すれば、効果はあるのだと思われる――患者の生活の質を戻し、医療費の大幅な削減の可能性がある。

                    ポチャ  ・・・

ヨーロッパや合衆国では、子供のころから頻繁に抗生物質の投与を受ける――連合王国では、女性はほぼ毎年1回抗生物質投与を受ける頻度になる。

上気道感染症…風邪はほとんどがウイルス感染を原因とし、細菌が原因のものは5%ほど。

このため風邪で抗生物質を飲んでも、大半は意味がない――7年前にヨーロッパで27000人に対して行われた調査では、抗生物質がウイルスに効果があると信じていたのは53%で、47%は風邪とインフルエンザに抗生物質が効くと信じていた。

だけど病院に行くと、医師は抗生物質を処方する――万が一の合併症に備えてだけど、ほしがる患者も多い。

風邪は、ほぼすべての人が数日で回復する――咳が続く場合でも、数週間後には消える。

咳が続くのはつらく、数週間も咳が続けば病院に行く人は多い――特に子供なら。

ただ多くの場合、医師はウイルスか細菌かは調べない――現在の診断方法は、何の感染かの判断に時間がかかる。

連鎖球菌に感染して2~3週間放置すると、リューマチ熱と言う炎症性の疾患を発症する。

多くの子供が、特に冬場に、咽頭部にA群連鎖球菌を群生させている――健康であればそのまま数か月過ごす。

だけどその時期にウイルスに感染してのどが痛くなって病院に行くと、A群連鎖球菌が見つかる。

それで医師は、リューマチ熱を予防するために抗生物質を処方する――それが群落を形成しているだけなのか感染しているのか、軽症の感染症なのか深刻な感染症なのかの見分けは難しい。

連鎖球菌による咽頭炎は数日で回復するのだけど、その間に病院に行って抗生物質を投与されれば、そのおかげで治ったと思ってしまう。

抗生物質を投与された家畜の排泄物は有機肥料として畑にまかれ、それを通じて残留抗生物質が一部の野菜からも検出されている。

ヨーロッパでは、10年前から成長目的の抗生物質の投与は禁止されている――治療目的であればいい。

それ以外でも先進国であれば、通常、薬を投与した直後に搾乳したり食肉として出荷しないように規制されている。

だけどそうでない国もあり、旅行した時に肉などから抗生物質を摂取することもある。

                   パチチ ・・・

抗生物質は多くの命を救う。

ただ、処方されすぎている。

先進国では、徐々に抗生物質の使用頻度は減ってはいる。

耐性菌が増え、それに対抗するためさらに抗生物質が開発される。

製薬会社は、高い頻度で使用される広域抗生物質の開発を好む――広域抗生物質はどんな細菌への感染であっても、迅速に治療を始める事が出来る。

特定の病原菌をターゲットにした、狭域抗生物質の開発はまだ費用がかかる――使用頻度も限定されるため、広域の100倍くらいと値段も高価になる。

ただ、幼少期に常在細菌の多様性を失うことは、将来の医療費をより高いものにするかもしれない。

バクテリオファージを使った、新しい治療薬の研究も行われている――細菌に感染するウイルスで、抗生物質と同じ働きをする。

そして、ウイルスと細菌のどちらに感染しているかを区別する診断方法が開発されている――ウイルス感染に対して、抗生物質を使う事を減らすことができる。

                                  ポチャン

            ・・・

ライトは消してる。

ドラム缶の火の灯りだけ。

柱の影は、薄くゆれる。

黒猫があくびしてる。

「寝ていいよ」

「ニャ~」

鳴いた。

パチパチさせていた目が、細くなった。

                           バチ  バチ

暗い森をみていると、音がよく聞こえる。

水たまりもできてるだろう。

みえないけど・・・・

             パチン

                                              ・・・・   ァァァァァ

                                  バチ

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