ァァァァァ ・・・・・・
カタ ――
トコ
大きなガラス・・・
昼なら森がよく見えるんだろうけど、もう外は暗い。
静かな場所だから、ゆれる木々の音はずっと聞こえる。
ト
「・・・」
しまネコがテーブルにのった。
古い、木製の長いテーブル。
食堂に来た。
トコ ・・・
合衆国にはいろんな国からの移民が住んでいる。
開拓時代、ヨーロッパのいつも曇っている地域から来た移民たちが、西部の砂漠を見て感動したらしい。
よく晴れているので。
砂漠だったけど水を引いて来て、世界でも有数の穀倉地帯となる――私の祖国の人も、ここのものをよく食べている。
そしてこの州は、合衆国の中で最大の人口と経済規模になった。
だけど川の水量が減って、移民の増加もあって州同士で水の取り合いになっている。
中西部の地下には、私の祖国と同じくらいの面積の帯水層があり、これも過剰な揚水で水位が下がっている――このため中西部では、水不足になっている。
スプリンクラーを使わずに点滴灌漑という方法にすると、水の使用量を減らして単収も増加させられる。
そして完全制御型の野菜工場なら水も肥料も無駄を大きく減らせるし、農薬もいらない――ビルにすれば同じ面積でも上にのばせるので、収量が増やせる。
収穫回数も多く、毎月か、それ以上のペースで野菜を市場に出せる様になるかもしれない――年に数回しか収穫できない場合と比べると、より少ない面積で多くの人口を養えるようになる。
街の近くにも作れるので、輸送費も抑えることができる。
現在は二酸化炭素を得るのに化石燃料を使っていて、それ以外にもコストがかかって作物が高価になる。
将来的には、溶融炭酸塩形燃料電池…MCFCという燃料電池を併設すれば、大気中の二酸化炭素を高濃度にして送れる――私の祖国の電力会社が、二酸化炭素回収の目的でMCFCを使う方法を開発している。
これは高温型燃料電池で、負極側に燃料となる水素、正極側に酸化剤となる空気を送り込む。
正極側で空気中の酸素と二酸化炭素が炭酸イオンになり、炭酸イオンは電解質である溶融炭酸塩を通って負極側に移動して、負極側の水素と反応して二酸化炭素と水になる――水を分解する光触媒の効率が上がれば、そこから水素も得られる。
MCFCだと通常の燃焼の4倍近い、80%ほどまで二酸化炭素濃度を高めることが出来る――この二酸化炭素は発電反応に再利用することができるけど、回収することも出来る。
発達したこの街も、ポンプが止まるか水がなくなれば砂漠に戻るだろう。
水が高価なものになってくれば、いずれ採算は合うようになってくるのだろうと思う。
トコ ・・・・
アンティークのお店みたいな食堂。
開拓時代に移民がつくった屋敷なのかもしれない。
隣がキッチンで、エレガントさんやノロマさん達が夜の食事の準備をしている。
キッチンはIHとか巨大な冷蔵庫とかがあった。
ホットケーキも焼けそうである。
ミャ~
しまネコが鳴いたけど、私は窓に近づく。
夜空の灯りで、ゆれる影がわかる。
高い天井から吊られてる長いカーテンも、古そう。
「・・・・」
リスが張り付きそうだな・・・・
トコ ・・・
ミャ~
ザヮヮヮヮ ・・・・・