京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

連作緋牡丹お竜参上

2016年09月19日 | 日記

 連作緋牡丹お竜参上

 

   降る雪や傘に寄り添ふ今戸橋

  火の国の女が拾ふ冬蜜柑

  雪国の男の指がそつと触れ

  瓦斯燈は揺れて眼と眼で別れゆく

  任侠を乗せて馬車ゆく冬木立

  氷雨降る凌雲閣に灯がともる

  短刀(どす)呑んで義理と人情の影二つ

  鉄火場に女緋牡丹舞ひにけり

  黒髪は乱れ命の果つるとも

  下駄履いて京一会館行きし頃

 

 京都の京福電鉄一乗寺駅から、曼殊院道を西にしばらく行った商店街に、京一会館という場末な映画館があった。学生時代、授業をさぼって、よくそこへ映画を観に行った。上映していたのは古い日本映画だったが、藤純子の主演する『緋牡丹博徒』シーリズは残らずみた。芸術性も思想性もない勧善懲悪の活劇であったが、主人公「緋牡丹お竜」こと矢野竜子を演ずる藤純子が好きだったからだ。品のよい色気を見せながら明治の任侠女を演じる純子は、銀幕の中でたまらなく魅力的であった。

 加藤泰が監督をした第六作『緋牡丹博徒お竜参上』(一九七〇年)はシリーズ中の最高傑作で、忘れ得ぬ数々の名シーンがある。中でも純子と菅原文太が演ずる「今戸橋の別れ」は映画史上に残る名シーンと言われている。

 

 

 雪の降る中を、お竜が旅姿の青山常次郎(文太)を追いかけて今戸橋にやってくる。加藤泰は得意なローアングルで撮影するために、今戸橋を太鼓橋に設定している。このシーンで、手作りの弁当を恥ずかしげに男にわたそうとするときの声にならないお竜の「あの」は、最近の女性からはほとんど聞けない「あの」となった。そして、最後に純子が文太に手渡そうとして落とした蜜柑が、薄く積もった雪の上を転がるシーンが、この映画を不朽の名作にし上げた。転がる蜜柑が主人公の心の動きを見事に表象しているのである(楽蜂)。

 

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