ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

天使のように馬に乗る男。ディック・フランシス【興奮】

2011-11-16 | 早川書房
 
とうとう読みました。ディック・フランシスの競馬シリーズ。
1976年4月初版、2011年1月で29刷。

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 興奮

 著者:ディック・フランシス
 訳者:菊池光
 発行:早川書房
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主人公ダニエル・ロークは、オーストラリアの牧場主です。
18歳で両親を事故で失い、それを機に牧場を初めて成功、弟妹達を育ててきたという彼は、まだ27歳という若さ。
髪は黒くて、目は茶色、イギリス生まれのオーストラリア育ちで、。体格もよい好男子。両親が健在だったなら父と同じく、法律の道に進んでいただろうという青年です。
その彼がひょんなことからイギリス競馬の障碍レースで疑われている不正について内偵することを依頼されます。

オーストラリアの成功した牧場主が、氏素性を隠してイギリスの牧場にちんぴら厩務員としてもぐりこむ。
降ってわいたようなスパイ作戦です。
いきなりですよ?
でも、ロークが落ち着いているくせに、賢くこの話を断るにはわくわくしすぎている、そのアンバランスな感じについついひきつけられてしまいます。
そうしているうちにも、素人スパイのロークを取り巻く状況の危険度はアップ。
えっ、そんなことしちゃって大丈夫なの?!と、ベテラン腕利きスパイが主人公の物語を読むのとは一味違うドキドキがあります。

読みながら、ふと、こういうタイプの人間になりたいと思っていることに気づきました。
内心ではいろいろへこんだり、さびしくなったりしているけれども、顔には出なくて、少し我慢しているうちに、ぽん、と自分を突き放したように冷静になれるローク。
ひどい目にあっても、回数が重なれば慣れるものだろうかなどと考えているあたりの、ちょっととぼけた抑制の効き方がいいなぁと。
だた、それも仮の姿であればこそかも。
正真正銘の自分自身できっぱりできてしまったら、人格が分裂していきそう。
ひどい目にあっているこの人間は私ではない。他のだれかだ、と。
出来過ぎ感のある主人公ですが、ほんとの俺はこんなもんじゃないぜという、ちょっと人が悪くて、でもちょっといたずらっぽい優越感と、隠し切れずこぼれてしまっているもともとの誠実さと、誤解されたままでいたくない自尊心がまだらになっているあたりに親近感が持てます。
終章でロークが言う何より我慢できなかったことには、思わずにやりという感じ。
「ローク、最初の冒険」といったところですが、この先はあったのでしょうか。
気になります。

が、それより気になるのは、やはりこの競馬シリーズそのもの。
馴染みのない世界を垣間見る面白さがありました。
「天使のように馬に乗る男」って、どんな手綱さばきなのでしょう。

さて、次はどれにしてみようかなぁ。
やっぱり、これでしょうか。

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 大穴

 著者:ディック・フランシス
 発行:早川書房
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