ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

北森 鴻 【花の下にて春死なむ】

2006-03-27 | 講談社
 
安楽椅子探偵系列のミステリの連作短篇集。
探偵は、ビアバー『香菜里屋(かなりや)』のマスター。
常連客が持ち込む謎を、解き明かしていく。

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 花の下にて春死なむ

 著者:北森 鴻
 発行:講談社
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こんなお店が本当にあったら通いたい。
とにかくビールがおいしそうなのだ。
小さめのグラスで、すいすいと干していく。そして、少しずつ濃い味のビールに。
お料理も絶品とくれば言うことなし。
誰か、近所に作ってくれないものだろうか。こういうお店。
謎を解いてくれとはまでは言わないから。

表題作『花の下にて春死なむ」は、老俳人の孤独な死の謎を巡る物語。
故郷に帰ることも許されず、秘密を抱えたまま死を迎えた一人の男の人生が浮かび上がる。
短編だが、読みごたえがあった。

その他の作品も、同様。
大事件が起こるわけではない。
だが、その謎は、日々を生きてゆかなければならない人々の姿を映し出す。

謎を読み解いていく『香菜里屋』のマスターの、人に対する視線が優しい。
気軽に読むには多少重いが、マスターの人柄に読んでいるほうも救われる。

全部で6篇の作品が収められているが、その最後は表題作『花の下にて春死なむ』を受けた作品。
1冊の本としてのまとまりが良かった。





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2 コメント

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面白かったです (むぎこ)
2006-04-05 07:06:35
おはようございます。



雨です・・・こんな雨の薄曇りの明るさによく似合う本でした。



もともと安楽椅子探偵もの好きです。

シャーロック・ホームズよりマイクロフト・ホームズの方が本当は好きです。

おきにいりの時の娘もそうですし・・・。



で、これはいかにも日本の安楽椅子探偵風。

しかも、適度に落ち着いた雰囲気があって素敵でした。



ストーリーも「え?」という最後の部分を短編毎にそれぞれ個性的にまとめてあり、面白かったです。

そしょて夜の町並みとか、猫が路地を歩いていくと風景とか、であんまりうるさくない住宅街の一画の素敵な隠れ家・・・を想像させる雰囲気にも浸れ、かなり楽しい一品でした。

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この作家さん (きし)
2006-04-05 19:27:45
最近のお気に入りです。読んだのはだいぶ前ですが。

同じ本、選んでたんですね



むぎこさんの文章のほうが短いのに、本の印象がとても伝わります。
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