安楽椅子探偵系列のミステリの連作短篇集。
探偵は、ビアバー『香菜里屋(かなりや)』のマスター。
常連客が持ち込む謎を、解き明かしていく。
花の下にて春死なむ
著者:北森 鴻
発行:講談社
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こんなお店が本当にあったら通いたい。
とにかくビールがおいしそうなのだ。
小さめのグラスで、すいすいと干していく。そして、少しずつ濃い味のビールに。
お料理も絶品とくれば言うことなし。
誰か、近所に作ってくれないものだろうか。こういうお店。
謎を解いてくれとはまでは言わないから。
表題作『花の下にて春死なむ」は、老俳人の孤独な死の謎を巡る物語。
故郷に帰ることも許されず、秘密を抱えたまま死を迎えた一人の男の人生が浮かび上がる。
短編だが、読みごたえがあった。
その他の作品も、同様。
大事件が起こるわけではない。
だが、その謎は、日々を生きてゆかなければならない人々の姿を映し出す。
謎を読み解いていく『香菜里屋』のマスターの、人に対する視線が優しい。
気軽に読むには多少重いが、マスターの人柄に読んでいるほうも救われる。
全部で6篇の作品が収められているが、その最後は表題作『花の下にて春死なむ』を受けた作品。
1冊の本としてのまとまりが良かった。
雨です・・・こんな雨の薄曇りの明るさによく似合う本でした。
もともと安楽椅子探偵もの好きです。
シャーロック・ホームズよりマイクロフト・ホームズの方が本当は好きです。
おきにいりの時の娘もそうですし・・・。
で、これはいかにも日本の安楽椅子探偵風。
しかも、適度に落ち着いた雰囲気があって素敵でした。
ストーリーも「え?」という最後の部分を短編毎にそれぞれ個性的にまとめてあり、面白かったです。
そしょて夜の町並みとか、猫が路地を歩いていくと風景とか、であんまりうるさくない住宅街の一画の素敵な隠れ家・・・を想像させる雰囲気にも浸れ、かなり楽しい一品でした。
同じ本、選んでたんですね
むぎこさんの文章のほうが短いのに、本の印象がとても伝わります。