青空の Café time

私の中には♪
いつも青空がある♪

シトロエン2CV Part1『Antique shop I 』

2016年10月13日 11時51分17秒 | 車のショートストーリー



高速道路は思ったより空いていた。

中央道上り。

前をゆっくり走っているトラックを左に車線変更して追い越す。


この車は29馬力しか無い。

誰がどう見てもクラシックカー。

だから高速道路を走ってると珍しい動物でも見るかのように注目を浴びる。

中には並走してついてくるドライバーもいる。

もう慣れたから、そういう時はにっこり微笑んであげている。


車名の2CVは「ドゥシュヴォ」deux chevaux と読む。

にしーぶいなんてダサい読み方はしないの。


下りなら大人4人乗せて120km出るらしい。

下りなら。

私は4人乗せて高速道路走ることはまず無いし、フラットな道でも私ともう一人ぐらいなら普通に流れに乗れる。

アクセルは床までベタ踏みだけどね。


大人4人が余裕で乗れる大きさなのに、車体の重さは軽自動車の半分ぐらい。

その代わりエアコンが付いていない。

だから真夏はちょっと乗りたくない。

だって、いい女が汗だくで運転してるのは絵にならないでしょ。


真っ赤な顔して。

首にタオル巻いて。

無い無い、ありえない。


でも。

もう十月。

だいぶ涼しくなった。

特に朝は肌寒いぐらい。

今の時刻は9時。


左手に新宿のオペラシティが見えてきた。

その先の西新宿ジャンクションで中央環状へ。

結構混んできたけど目的地まであと少し。

初台南で高速を降りて道なりにしばらく走る。

やっぱり高速道路より一般道の方が気楽に走れる。


中目黒の手前で左に折れ、橋を渡る。

この目黒川沿いには、おしゃれな飲食店や様々なショップが軒を連ねている。

目的地のアンティークショップはもうすぐ。


一週間前ここに友人と来た。

恵比寿駅から代官山まで歩いて、このイタリアンレストランは美味しそうとか、このブティックは何の雑誌に載ったとか、女二人でおしゃべりしながらね。

でも私が行きたかったのは、代官山から目黒川に向かって少し下りたところにあるアンティークショップ。

友人の買い物に付き合い、比較的空いていたレストランで食事をして、そのアンティークショップに向かう。

このとき欲しかったのはアンティークのシャンデリア。

小振りでフランスのアールヌーヴォーデザインならベスト。





ショップに着いて店内を見て回る。

それほど広くない。

友人はこういうジャンルに興味ないので手持ち無沙汰のよう。

でもあなたの買い物に付き合ったのだから我慢してね。


うーん。

デザインの良いものはあるけど、日本の住宅事情からすると少し大きい。

とりあえず奥のカウンターのスタッフさんに、私の希望を伝えてみよう。


真鍮製で小振りのシャンデリア探しているのですが、他にあります?倉庫とかに。

「すみません。私ではわからないので、オーナーをお呼びします」


ああ、そうなんだ。

ご店主にしては随分若いなと思ってた。

大学生ぐらいかな。

アルバイトかも。


暫しオーナーが来るのを待つ。

友人は飽きてしまったようなので、この周辺で良さげなカフェを探してと言って追い出す。

「すみません。お待たせいたしました」

背後から声をかけられた。

落ち着いた声。

どうやら入り口からやって来たようだ。

てっきりお店の奥から来ると思っていた私は少し驚いた。



振り返ると、白いシャツに折り目のついたリネンのパンツ。

カジュアルだけどお店の雰囲気に合っている。

そして声。


「どのような品を、お探しでしょうか」

落ち着いた知的な声。

年齢は。

私より少し上ぐらいかな。

アンティークショップのオーナーにしてはかなり若い。

だから見た目より少し上かもしれない。


先ほどの私の希望をオーナーに伝える。

まっすぐ目を見つめて。


ああ、目が綺麗。

明るいブラウンなんだ。


「今はございませんが、週末に先月買い付けた船便が到着します。確かそのようなシャンデリアがあったと思います」

うん。

いい声。


「確認したらご連絡いたしますので、こちらにご連絡先を」

と言ってメモとペンを差し出された。

電話番号と名前を書いて渡す。


一瞬指が触れ合った。

そして束の間見つめ合う私と彼。


「では、ご連絡いたします。来週の月曜日には多分ご連絡できると思います」

わかりました。ご連絡いただいたら今度は車で参ります。

「駐車場があります。お車運転されるのですか?」

そう。シトロエンを。

「そうですか。僕はルノーに乗っています。シトロエンのなんというモデルですか?」

優しく微笑んで答える。

2CVですと。


言葉を失った彼に、また来ますねと爽やかに言い残してお店を後にする。


そして金曜日の夜。

アンティークショップオーナーの彼から電話。

確か月曜日と言ってたのに随分早いな。


「昨日船便で着いた荷を今日ショップに運んで来ました。ご希望のデザインの物が何点かございます。せっかくいらしていただいたので作業日程を早めました」

そんな。

私のために?

ありがとうございます。

では日曜日の午前中に伺います。

そして私はこう言った。


『お時間がありましたらコーヒーでもご一緒しませんか?』



この前。

彼の手。

白く華奢な指に指輪は無かった。

仕事中は外しているのかもしれないけどね。


出逢いは突然やって来る。

気づかなければすり抜けてしまう瞬間。

小さなチャンスを見逃しちゃだめ。

もし思うようにいかなくても。

それならそれで構わないから。


そして日曜日。

青空が広がり秋風が爽やかな朝。

私は2CVで彼の元に向かう。

待っているのはシャンデリアとコーヒータイム。

今日は良い日になりそう。











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6 コメント

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はじめまして (コケムス)
2016-10-13 14:16:13
aozoraさんへ
コメントをいただき感謝いたします。
今後とも宜しく願います。
ストーリの展開が面白くて、(どきどきしながら)一気に読ませていただきました。
素晴らしい方との出会いは、よかったですね。
一期一会、風景にしても、人にしても
動物にしても、輝いてる瞬間を大切にしたいです。癒やしと感動有難うございます。

コケムスさんへ (aozora)
2016-10-13 15:14:41
コメントありがとうございます。
お褒めいただき感謝です。
そう。素晴らしい出会いは、ある日突然ですから(^^)
続編もどうぞご期待ください。
よろしくお願いします。
Unknown (一炊の夢)
2016-10-13 17:59:37
シトロエンの旧車は「おとぎの国」に出て
来るような形のフランスの車。

ドアを開けたら白雪姫が・・・・違ったご本人
でも「姫様 御手をどうぞ」
一炊の夢さんへ (aozora)
2016-10-13 18:15:13
コメントありがとうございます。
まあ、お姫様なんて・・
では助手席へどうぞ。
次回は私のエレガントな運転をご覧に入れますので・・・
この車のギアチェンジ方法はとても変わっていますから。
出会いは突然に (イエズスのペトロ)
2016-10-13 19:47:15
私もドライブは大好きですが、環状線はちょっと・・・怖くて運転する勇気はありません。そして初対面の人に「お茶をご一緒しませんか?」なんて言う勇気もありません。青空さんの積極性に拍手!!続編、期待しております。追伸・・・文章が物語風なのに詩的でおしゃれで素晴らしいですね。読者登録させて頂きました。今後とも宜しくお願い致します。m(__)m
イエズスのペトロさんへ (aozora)
2016-10-13 20:18:20
コメント、読者登録ありがとうございます。
素敵な出逢いは大切にしないといけません。
素敵な風景、素敵な思い出、そして素敵な人。
>文章が物語風なのに詩的でおしゃれで
お褒めいただき、ありがとうございます(*^^*)
これからもよろしくお願いします。

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