青空の Café time

私の中には♪
いつも青空がある♪

アルファ スパイダー Part4 『今日は最悪』

2016年10月11日 12時07分24秒 | 車のショートストーリー


会社の駐車場から出て駅方面に向かう。

今日は朝から体がだるい。

少し熱があるようだ。

明後日の会議の準備があるから仕事は休めない。

それに。


仕事が終わってから彼と会う約束をしている。

話したい事があるからと、一昨日私から連絡した約束。


いつもは通勤に車は使わないが、今日は満員電車に乗る気が起きず車にした。

運悪く普段の足として使っているアルファ156を整備に出していたので、仕方なくスパイダーで行くことにする。

オープンカーは都内を走る通勤車には向いていない。

排気ガスを吸いたくないし、何も通勤で目立ちたくないので屋根は閉めておく。

そして屋根を閉めた状態のスパイダーは視界が良くないのだ。


前方は問題無い。

問題は後方。

左右の斜め後ろが良く見えない。

屋根の幌が視界を狭くしている。


まあ仕方無い。

今日は特に安全運転を心掛けよう。


仕事中は忘れていた、だるさが戻ってきたようだ。

駅前通りの交差点で赤信号。

頭が少しぼうっとする。

青に変わって右折待ち。

そして発進でエンストさせた。


ああ。

私、今日だめみたい。

前にエンストさせたのはいつだろう。


苦笑いしながらエンジンを再始動させ慎重にクラッチを繋ぐ。

私が右折するのを待ってくれたレクサスにパッシンクして駅方面に向かう。


先月完成したホテルの駐車場にスパイダーを入れエレベーターに乗る。

約束は8時。

まだ余裕がある。


私は落ちてきた髪をかきあげ、エレベーターの壁に寄りかかって階数の表示を眺める。

朝より熱が上がってきたかもしれない。

最上階に到着。

レストランで名前を告げテーブルに案内される。

彼はもう来ていた。





ごめん。待たせた?

「いや。僕も今着いたばかり。何にする?メニューもらおうか」

そう。予約したときコースをお願いしてあるから。ワインは?

「ん。今日はアルコールはやめておこう。君が車で来ると聞いたから。一人で飲んでもね」

ごめんね。


口数少なく運ばれてくるコースを口に運ぶ彼と私。

彼は気がついているのかもしれない。

私がこれから話すことを。

メインディッシュが終わりデザートとコーヒーが運ばれてきた。


味がしない。

まずいな私。

料理ではなく私の体調が。


「この前のこと、すまなかった。あんな言い方をするつもりじゃなかった。」

何だっけ。頭がぼうっとする。

「ほら、この前君が誘ってくれたドライブのことだよ」

ああ、そんな事。

「せっかく君が誘って・・君、顔色悪いよ。大丈夫?」


うん。大丈夫・・じゃ無いかな。

あなたの顔がグルグルしてる。

何であなたが蒼い顔してるのかな。

あ、あなたの手、冷たくて気持ちいい。

私の額に手をあてて蒼から白くなった彼。

「すごい熱だよ!病院に行かないと!」


そんなひどいのか私。

でも病院はいいや。

家で寝てれば大丈夫だから。

悪いけど家まで連れてってくれる?

スパイダーで。

あなたが運転して。

ここにキーがあるから。

ごめんね。

話したいことがあるけれど、また今度にする。


彼に抱えられスパイダーの助手席に。

たまにはいいかな。

アルファの助手席も。

体が熱い。


エンジンが掛かった。

ああ、もっと丁寧に。

特にクラッチは。

レディに接するジェントルマンのように優しくね。

「何か言った?いいから寝てなさい。大丈夫。僕がついてるから」

そんなこと言っちゃって。

ほら。

この交差点の赤信号長いから、ニュートラルでサイドブレーキ引いてクラッチとブレーキを離して。

もう。

耳を貸して。

「なに?どこか痛いのか」

違う。

いいからこっち寄って耳を貸して。

そして彼の耳にこう囁いた。



『まだまだね。あなたの運転。もっと優しくしないと。アルファにも私にもね』



それからあとは覚えていない。


気がついたらベッドに寝ていた。

ここは。

私の部屋じゃ無い。

白い壁、白いベッド、窓から高層ビルの赤いライトが点滅してるのが見える。

病院かな。


横を見ると彼の心配そうな顔。

「ごめん。勝手に知り合いのドクターに連絡して病院に連れてきた。疲れが溜まっているところに、ここ数日急に寒くなって体調を崩したらしい」

そうか。

ごめんね、迷惑かけて。


今何時?

もう11時回ってるじゃない。

帰らないと、あなた。

「いいんだ。別に。もう少し居るよ」


だめ。

そう言いながら時計気にしてるじゃない。

私は一人で大丈夫だから。

今日はありがとう。

本当にごめんなさい。

迷惑かけて。


でも。

もう帰って。

あなたの帰りを待ってる人のところへ。

心配させちゃだめよ。


それから30分ほど居て彼は帰っていった。

私に済まなそうに。

別にいいのに。

ねえ。


腕に点滴の針が刺してある。

熱は少し下がったようだ。

まだふらふらするけど。


点滴スタンドを押しながら窓に近寄る。

あれは。

新宿の高層ビル群かな。

見おろすとライトに照らされた駐車場が見えた。


あそこにある車は。

スパイダーだ。

置いてっちゃったのか、彼。

そうだよね。

彼、乗って帰れないもの。

振り返るとテーブルにキーが置いてあった。


やれやれ、何してるんだろ私。

ごめんね。アルファ。

今日は病院の駐車場で一泊になっちゃった。

でも。


今はとりあえず休もう。

何も考えず。

彼と私の事も。


元気になったらまたアルファと走ろう。

青空の下を。




〜END〜










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