青空の Café time

Summer love is Passionate

奇妙な話『レイトショー』

2016年11月26日 08時51分59秒 | 奇妙な話



里美の趣味は映画を観ること。

洋画、邦画、恋愛ものやアクション映画などジャンルは問わないが、特に好きなのはホラー映画である。

だが、今付き合っている彼はホラーが苦手だった。

一緒に観ることはもちろん、ホラー映画の話しをすることすらNG。

里美がうっかり口を滑らそうものなら、怒りだしてしばらく口もきいてくれない。

だって好きなものはしょうがないでしょう、と里美は映画のチラシを見ながら呟く。

今週末から公開されるジョ○ーデップ主演の新作映画のチラシである。

19世紀のイギリスで起こった"切り裂きジャック"事件を基にした陰惨なストーリーらしい。

これは絶対に観に行かなくちゃ。

平日は仕事があるから行くなら土曜日か日曜日ね。

上映スケジュールを確認したところ、隣町にある映画館でも上映されるようだ。

だが土日は昼間の上映は無く、夜9時からのレイトショーのみ。

雰囲気を盛り上げるためだろうか

徹底しているわね。期待できそう。

だけど、どうしようかな。

上映時間は2時間半とあるので、映画が終わるのは11時半過ぎになる。

電車で行くと帰りは深夜だ。

一緒にホラー映画のレイトショーに行ってくれるような友人は居ない。

無論、彼は誘えないから、女一人で深夜の道を帰って来ることになる。

しかもホラー映画を観た後で。

いくらホラー好きの里美でも、それは嫌だった。

そうだ。自分の車で行こう。

あまり運転は得意ではないけど、隣町までだから大した距離ではない。

車なら深夜の帰り道も問題無いだろう。

里美は、次の土曜の夜のレイトショーに行くことにした。


週末は11月にしては冷え込んで、まるで真冬のようだった。

そして土曜日。

昼間、里美は彼と会う約束をしていたが、急な仕事が入ったとかで丸一日フリーになった。

彼にホラー映画のレイトショーに行くと話したら、ちょっと呆れていたけど「運転気をつけて」と言ってくれた。

結局、一人で出かける気がせずダラダラ過ごしているうちに夜になり、里美は一人で車を運転して隣町の映画館へ。

映画館の立体駐車場に車を入れる。

思ったより空いている。

2階でチケットを購入したが、やはりあまりお客さんがいないようだ。

開場までまだ時間があるので、1階のカフェで時間を潰すことにした。

コーヒーを飲みながらさっき買ったパンフレットを読む。

ただし、じっくり読んでしまうと映画がつまらなくなるので、荒筋程度でやめておく。

今夜のレイトショーは2作品。

里美が観るホラーと、もう一本はどうやら恋愛もののようだ。

そうこうしているうちに開場時間になった。

上映は4番のシアターだ。

里美はコーヒーを飲み干して席を立った。

それにしても客が少ない。

レイトショーに来たのは初めてだったが、こんなものなのだろうか。





4番のシアターについたが、入口に案内係はいなかった。

自由に入って良いようだ。

通路を歩き中に入ると・・

とても暗い。

そしてガラガラだ。

暗くて良く見えないが、広いシアターの後ろの方の座席にカップルが2組だけ。

それにしてもこんなに暗かったっけ。

スクリーンには上映前の映画予告が映っていたが、目を凝らしても後ろの方の座席は良く見えない。

里美はカップルの邪魔をしないように、前の方の席に座った。

ジョ○ーデップ主演なのに、人気無いのかな。


ブザーが鳴り映画が始まる。

映画の内容は、ジョ○ーデップが演じるアヘン中毒のスコットランドヤードの警部が、切り裂きジャックの正体に迫ってゆくというストーリー。

だけど・・

暗い。

映像の作り方も暗いが、ストーリーが救いようの無いほど暗い。

ホラー映画と言えばそうなのだが、里美の趣味とは少し違ったようだ。

2時間半の映画は、最後にジョ○ーデップがアヘン窟で死んでるところを発見されたシーンで終わった。

良く出来たストーリーだったけど、こんなに暗い話しでは人気が出ないかもしれない。

里美はエンドロールを眺めながらそう思った。

さあ帰ろうかな。

映画が終わり照明が明るくなる。

席を立ち上がり、ふと後ろを振り返った里美が見たのは、誰もいない劇場だった。





そんなはずは?!・・

カップルは?

確かに見た。

暗かったけど女性の方は白っぽい服を着て、男性に話しかけてた。

もう1組のカップルは、暗くて良く見えなかったが年配の雰囲気でもっと奥の方に・・

だけど誰もいない。

出入口は前方右手にある。

上映中に出て行ったのなら里美が気付かないはずは無い。

誰もいないなんて・・そんなはずは・・

2時間半のレイトショーの間、この陰惨な映画を里美一人で観ていたというのか・・


誰もいない、がらんとした客席を眺めていた里美は、寒気を覚えて足早に劇場を出る。

途中に案内係の女性が立っていた。

里美はその女性に、今の上映回の観客は自分だけだったのかと聞こうとしたが、一瞬躊躇してからやめてしまった。

どんな返事が返ってくるのか、聞くのが怖くなったのだ。

もし、そんなことは無いと言われたら、他の客はどこへ行ったのか。

もし、一人だけだったと言われたら、里美が見たカップルたちは何だったのか・・


それから里美は、どんなに魅力的な映画でも、レイトショーには行かないことにしている。









⇨ 前回 : 香織 『エレベーター』へ



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2 コメント

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わア、怖いよー (あやか)
2016-11-26 15:45:55
『レイトショー』のお話怖かったですウ。それから、エレベーター、のお話もこわかったですね。エレベーターって、わりと怖い話が多いですね。私が、中学生のころ読んだ雑誌に、
★或るビルで、夜間ひとりでエレベーターに乗っていたところ、途中で故障して、おかしなところで停止してしまい、いったん降りてみると、何か気味の悪いオフィスが立ち並ぶフロアにでたので、急いでエレベーターにもどり自分の事務所にもどったのですが、翌日、ビルの管理人さんに聞きますと、そんなフロアは、このビルには無い★ーーと、いうおはなしだった事を
おぼえています。
それから、小学校の修学旅行で、ある海辺のホテルに泊まったとき、夜中の激しい潮騒の音で、なかなか寝られなかったんですが、隣に寝てた子が、『夜の波の音は、海で死んだ人の叫び声なのよ』と言ったので、私は、『わア、こわいよー』といって、おふとん頭にかぶって寝たこともあります。
私は怖がりですが、それでも怖いお話、好きですね。
aozora様の、ホラー短編小説、よくまとまっていて、面白くて、ぞくぞくします。
あやかさんへ (aozora)
2016-11-26 16:26:30
エレベーターのお話しはもっと怖いものがあります。
それはまたいずれお話ししましょう。
映画館のお話しも、いろいろなものがあります。観客の中に、既に亡くなった人を見たとか、レイトショーを観た帰り道で、何者かが後をついてきたとか。
これからも不思議な話しをご紹介していきますので、ご期待ください。

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