杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

マダム・フローレンス! 夢見るふたり

2016年12月07日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2016年12月1日公開 イギリス 111分

ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンス(メリル・ストリープ)の尽きない愛と財産は、夫のシンクレア(ヒュー・グラント)と音楽に捧げられていた。ソプラノ歌手になる夢を追い続けるフローレンスだが、自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気づいていない。愛する妻に夢を見続けさせるため、シンクレアはおひとよしなピアニストのコズメ(サイモン・ヘルバーグ)という伴奏者を見つけ、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回っていた。しかしある日、フローレンスは世界的権威あるカーネギーホールで歌うと言い出して―。持病を抱えながらも音楽に生きる彼女の命がけの挑戦に、シンクレアも一緒に夢をみることを決める。さあ、笑いと涙で包まれた奇跡の公演の幕があがる!(公式HPより)

 

1944年、音楽の殿堂カーネギーホールで行われ、伝説として今なお語り継がれる音痴のソプラノ歌手フローレンス・フォスター・ジェンキンスの公演を題材に描いたドラマです。

歌の上手な人(メリル)が音を外して歌うというのはかなりの苦行じゃないかしらん?でも彼女の歌声は最後に出てくるマダム・フローレンスその人の歌声としっかりリンクして、確かにかなりの音痴なのに、何故か心惹かれる不思議な歌声を見事に再現していました。まさに女優魂というべきでしょうか 

マダムの歌声は、絶対音感のある人などは耐えらえない酷さかもですが、個人的にはオペラの歌詞は聞き取れないし、高音部の首を絞められたような「HA・HA・HA~」以外は許容範囲だったな~彼女自身が実に楽しそうに歌っている姿を見ていると、まさに音楽というのは音を楽しむことなんだと再認識させてくれます。

普通に考えたら、夫としては妻の音痴を本人に自覚させるべきだと思うのですが、夫人は最初の夫に梅毒をうつされ、以来50年の闘病生活を送ってきたことが明かされます。大好きなピアノも神経を冒されて弾けなくなった夫人ですが、それでも生きる希望は音楽だったのです。そんな彼女に音痴だから歌うなと言えるわけないよねあの手この手で、愛する妻を世間の批評から守り、真実を耳に入れないようにしようとする姿勢は、お金があるからできることでもあるけれど、それでも一種羨ましいほどの愛に溢れています。夫には愛人もいましたが、病気でベッドを共にできない夫妻にとっての愛の形をあれこれ批判することはできませんね。 

 夫人の歌の伴奏に選ばれたピアニストは気は弱いけれど人の善いコズメ。(彼が伴走者を選ぶ面談で弾いたサンサーンスの白鳥は個人的にも好きな曲なのでなんか嬉しかったな~ )初めて夫人の伴奏をした時の彼の何とも言えない表情が可笑しいです。それでも伴奏を続けたのは、週給150ドルももちろん魅力だったのでしょうけれど、次第に夫人の人柄に惹かれていったからだと思います。

リサイタルの成功(親しい友人や買収した観客ですから当たり前ですね)に気を良くした夫人は、今度はレコーディングに挑戦。出来上がったレコードを戦地に贈ったところ、これが受けた!!死と隣り合わせの戦場で、彼女の歌声はユーモアであり、生きることへの賛歌に聴こえたのかも。(これが平和な時代だったら絶対違う結果になっていた筈

ラジオでも流され世間で評判となり、夫人はカーネギーホールを予約してコンサートを開くと宣言!驚いた夫は止めますが、自分の歌で兵士たちを元気づけたいという彼女の愛国心に打たれ応援に回るの コズメもシンクレアの説得に覚悟を決め、当日、大勢の聴衆を見て怖気づいた夫人を励まします。その様子はとても頼りになるナイスガイでした。

歌い始めた夫人に会場の聴衆は嘲笑とヤジを飛ばします。この時、立ち上がって彼らを諌め夫人を応援したのは、以前夫人のリサイタルに来て笑い転げた成金?の妻です。彼女は教養のないグラマラスな美女という外見で前半は登場しますが、このシーンで一気に好感度UPでした 対照的なのはNYタイムズの記者の批評。彼の夫人の歌への評価は一見正しいけれど、でもそれはうわべの技術に対する評価であり、彼女の本質については何も理解していない上っ面な批評です。歌が上手いというのは、音楽的技巧に優れているということ以上に、聴き手に届く何かを持っていることだと思うな~その意味では夫人の歌は人々を魅了したといえるでしょう。

この辛口批評を夫とコズメは必死に夫人の目に触れないよう隠すのですが・・・。病に冒されている夫人にとって、コンサートは体力を限界まで使い果たす行為であり、その批評は彼女の命の灯を吹き消すに十分な破壊力がありましたそれでも彼女の最期はコズメが弾くピアノの調べに包まれた穏やかなものでした

上流階級に生まれ、金銭的な不自由もなく、深い愛を注いでくれる夫を持った夫人の人生は、たいそう恵まれたものだったと思います。音痴な彼女が、本人はそれと気付かず歌い続けられたのは、夫の献身的な裏工作はもちろんですが、彼女の純粋で天真爛漫な人柄が親しい友人・関係者たちに愛されていたということも大きいのでしょう

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