社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

木村和範「所得分布とパレート指数」『開発論集』(北海学園大学開発研究所)第75号,2005年3月

2016-10-17 15:15:30 | 4-2.統計学史(大陸派)
木村和範「所得分布とパレート指数」『開発論集』(北海学園大学開発研究所)第75号,2005年3月(『ジニ係数の形成』北海道大学出版会,2008年)

 19世紀中葉から20世紀初頭までの所得分布の研究では,3種類の手法が開発されたという。第一は,ジニ係数に代表される単一の数量的指標の考案,第二はローレンツ曲線その他を用いたグラフ法の提案,第三は所得分布に関数関係をあてはめ,そのパラメータの値を計算する方法である。パレート指数は,このうちの第三の試みである。

 筆者はパレートの所得分布図の解説から入る。パレートは,各国の税務当局が収集した所得統計により,一方に所得(x)をとり,他方にその所得がx以上になる世帯の数をとりまとめ,横軸にN(x) 縦軸にxをとったグラフを描くと,どの国の所得分布も同じ形状の図を概観できるとした。この図は,パレートにあっては,富の分布の「統計的法則」の形状であり,この図が示す現象の主要な原因は人間の本性のなかに求められるべきとした。

 パレートが考案した所得分布の関数は,次のようなものである。
    N(x)=H/〖(x+a)〗^α
 ここで,xは世帯,N(x) は所得がx以上の世帯数,α(> 0)とHはパラメータ。a は所得の源泉。この値は所得源泉ごとに正負の値をとると考えられ,部分所得を合算した総合所得ではこれらが相殺されて,a = 0 となり,上記の式は,N(n)=H/x^α となる。この式は,「パレートの第一法則」(コンスタンチーノ・ブレシアーニ=チュッローニの命名)と呼ばれ,αがパレート指数である。

 パレート自身はαをもとめるため,簡便性を理由に,コーシーの補間法(内挿法)を使った。筆者は,この方法を使ったパレートの例解,またイギリスにおける所得分布(1843年と187-80年)に関する計算を丁寧に紹介し,パレートが行わなかった内挿直線の切片の計算を補完している(パレートは内挿直線の傾きのみ計算)。

 パレートは様々な時期の各国についてαを計算し,この値が安定的であると結論付けた。その一覧表の掲載がある(p.13)。結果として,そこには比較的安定的なパレート指数が並んでいる。それらは対象とした国々の社会が平等な方向にも,不平等な方向にも進んでいないことを意味した。

 通説では,パレート指数は大きいほど,所得分布は均等になる。パレート自身の解釈は,これとは逆であった。すなわちαの増大は,不平等度の進行を意味した。筆者は,通説を支持しているが,パレート法則の数学的含意を検討すれば,さらにほかのことがわかってくるはずとして,これを爾後の課題としている。

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