社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

有田正三「ジージェック統計数獲得方法論分析」『彦根論叢』第40号,1957年

2016-10-16 21:42:56 | 4-2.統計学史(大陸派)
有田正三「ジージェック統計数獲得方法論分析」『彦根論叢』第40号,1957年

 ジージェックの統計数獲得論は,ドイツ社会統計学の統計調査論の最高の展開形態である。筆者は,ジージェックの晩年の著作『統計数は如何にして成立するか』(1937年)を参考に,その調査論(統計数獲得方法)の概要を明らかにし分析している。

 ジージェックの統計数獲得の構成は,基本的方法行程の確立を目的としている。基本的方法行程は基本的目標の達成を保証する原則的標準的な一般的図式的方法行程で,それは統計数獲得の実務形態を分解する要素的基礎操作(基本的なものを選び出し標準化する)をめぐって構成される。

 要素的基礎操作は,統計的労働行程と指導的統計家の決定とに分かれる。前者は「統計的補助力」(調査機関,統計官庁の職員)によって行われる行程である。後者は統計数獲得の目標と方法を決定し統計数獲得の全体を規制する行程で,そこには「論理的決定」と「組織的技術的決定」とがある。統計的労働行程と指導的統計家の決定では,後者のほうがその方法的意義がある。とくに論理的決定でそうであり,筆者の関心はそこにある。

 統計数獲得過程は,調査(把握すべき統計的集団を構成する個別的存在に関する材料の獲得)と調査資料の整理(調査によって獲得された「個別資料」を統合編成し,集団表示に変える過程[転換行程])からなる。統計数獲得の方法の問題は,「個別資料」獲得の方法および「個別材料」の集団表示の方法と関わる。この調査には第一義調査と第二義調査とがあるが,ジージェックにとっての本題は前者である。

 以下,ジージェックの議論にそって,「調査の方法的構造」と「調査材料の整理の方法的構造」の考察に入る。「調査の方法的構造」では調査に2つの基本的労働行程,すなわち調査単位の確認と調査標識の確認があることと,それに先立つ指導的統計家の決定としての規範(すなわち調査単位の確定,調査標識の確定,調査手続きの制定)が存在することが確認されている。「調査単位の確定」とは,どのような個別的存在が調査単位として実際に把握されるべきかを概念的に確定することで,統計的集団をとらえるための前提条件である。「調査標識の確定」は,調査単位について把握されるべき調査標識を概念的に規定することであり,「調査単位の概念」「概念としての抽象的調査機構」の形成である。「調査手続きの制定」は以上の2つの統計的労働過程の遂行をさし,その制定は指導的統計家の決定(調査期間の設定,非調査者の選定,調査票の作成)による。

次に「調査材料の整理の方法的構造」について。「調査材料の整理」を構成する基本操作は,「調査単位の部分集団への総括」と「統計的集団の全体および部分に対する数表示の算出」にかかわる労働行程である。調査材料の整理の段階を構成するもうひとつの要素的基礎操作は,「指導的統計家の決定」である。「調査単位の部分集団への総括」と「統計的集団の全体および部分に対する数表示の算出」は,「指導的統計家の決定」をつうじて行われる。「指導的統計家の決定」には論理的決定として,区別されるべき「組」の確定,獲得されるべき統計表示の確定が,組織技術的決定として整理手続きの制定がある。

 「組」とは調査標識の具体的変異を相互親近性により一つにまとめたもの,あるいは具体的変異の一定範囲である。「獲得されるべき統計表示の確定」は統計的集団およびその部分集団に対して算出すべき統計表示の種類形態(絶対数,相対数,中数値)を規定することである。部分集団への調査単位の総括および統計表示の算出は,指導的統計家の組織的技術的決定に定められた「調査材料手続き」として遂行される。

統計数値獲得の基本的方法行程は,ジージェックにあってはひとつの「装置」と考えられ,そこでは4つの論理的決定と4つの統計的労働行程との対応関係を軸に構成される。また,そこには2つの観念が底流に見出される。第一は統計数獲得方法の基本結節が調査単位,調査標識,組および表示の四者として示されていること,第二に方法行程が指導的統計家の決定と統計的労働行程とによって二重に構成されていることである。
 以上のジージェックの統計数獲得の方法論に対する筆者のコメントは,次のとおりである。第一の四結節の問題に関連して,四者のそれぞれが認識内容に対してもつ目的論的関係は明らかであるが,それらが対象に対してもつ必然的関係は不明であるのが最大の問題である。くわえて,調査単位,調査標識を基本結節とするのは正しいが,調査の場所,調査の時が基本結節とされていない。「組」を独立の結節とするのは,問題である。統計表示では絶対数が基本とされているが,絶対数は構成的統計系列としてとりあげられるべきである。個々の結節の取り扱い方が総体的に形式的である。

第二の基礎観念にかかわって,決定が目標から汲み取られる操作とされ,対象から汲み取られる操作とされなかったことが問題視されている。またジージェックは決定が労働過程を規制するものと一方的に考えられているが,決定が労働行程に制約される側面もみるべきである。むしろ,労働行程は決定に対して優位性をもつことがある。ジージェックは,この点を等閑視している。また,ジージェックは決定の担当者に指導的統計家を,労働行程の担当者に「統計的補助力」を想定するが,このように決定と労働行程とがそれぞれに専門的担当者によって担われると,労働行程を規制する観念が二重化する。本来,この機構では労働行程担当者の観念は決定に統一されなければならない。

以上,ジージェックによって構想された4つの論理的決定に重心をおく方法行程の構成は,方法行程全体の指導的統計家の論理的決定への一方的収斂を本質とする。再検討が必要である。
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