社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

高崎禎夫「生計費指数の理論的把握」『広島大学総合科学部社会文化研究』第3号, 1978年

2016-10-16 16:49:27 | 9.物価指数論
高崎禎夫「生計費指数の理論的把握」『広島大学総合科学部社会文化研究』第3号, 1978年

 本稿は生計費指数に対する誤解を解きながら, この指数をどのように理解したらよいのか, また生計費指数と物価指数とはどのような関係にあるのか, を考察した論文である。この論稿が書かれた頃, 「東京都生計費指数問題研究会」が3種類の生計費指数の作成を提言した背景があり, 当時, この指数に関する関心は非常に高かった。筆者はそうした状況をふまえ, 一方でこの提言にもられた指数の性格を吟味し, 他方で従来, 生計費指数に関してどのような議論があったのかを紹介し, 両者を対比して, テーマの検討をおこなっている。

 「東京都生計費指数問題研究会」が提言した3種類の生計費指数とは, 以下のようなものである。まず, それらは従来, 総理統計局が作成していた汎用的指数ではなく, 社会階層別の階層・類型別生計費指数である。3つの生計費指数は, 「生計費指数A」「生計費指数B」「必要生計費数」である。このうち「生計費指数A」は, その中身に消費支出だけでなく, 家屋・土地購入費を含めて作成される指数であり, 「生計費指数B」はこれにさらに税金, 社会保険料を加えて作成される指数であり, 「必要生計費指数」は上記のいずれもが消費内容の固定を前提とし, そのうえでその費用変化を測定する指数であるのに対し, 消費内容の変化を含む同一生活水準維持に必要な生計費用の変化を測定する指数である。これらのそれぞれは, 4層の階層別(生産労働者[小企業], 生産労働者[中企業], 販売・サービス労働者生産労働者[中企業], に事務労働者[大企業])に作成されるので, 都合12種の指数が作成されることになる。

 筆者は「東京都生計費指数問題研究会」が提言した3種類の生計費指数を紹介した後, そもそも生計費指数がどのようなものとして考えられてきたかを紹介している。それによると, 生計費指数は「消費者標準物価水準」のことであった。しかもケインズなどによれば, それは労働者階級に対する消費者標準物価指数, 全体的消費者標準指数の部分指数であり, 内容的には生活必需品に限定された指数である。筆者はケインズの他にも数名の内外の代表的研究者の見解にふれているが, この稿が執筆された当時の指導的かつ支配的な指数論と目されていた主観価値説的物価指数論の代表者だったアルマーの見解をとりあげ, 彼が生計費指数を特定の社会階層にターゲットをおいた階層別消費水準物価指数と理解していたことに注目している。

 筆者は以上の検討を経て, 「東京都生計費指数問題研究会」が提言した3つの指数のうち, 「生計費指数A」は階層別消費水準物価指数, 「生計費指数B」は階層別生活費水準物価指数(正確には物価と税率等の混合指数), 「必要生計費数」は同一生活水準維持費用指数(正確には必要生計費金額指数)と, 結論付けている。関連して, この「必要生計費数」以外のすべての生計費数を「生計費物価指数」と呼ぶべきことを, 主張している。巻末に, 充実した指数関係主要参考文献がある。
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