社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

戸塚茂雄「シェーファーの19世紀後期ドイツ社会統計学について」『研究紀要』(青森大学・青森短期大学学術研究会)第21巻第4号,1999年3月

2016-10-17 15:12:17 | 4-2.統計学史(大陸派)
戸塚茂雄「シェーファーの19世紀後期ドイツ社会統計学について」『研究紀要』(青森大学・青森短期大学学術研究会)第21巻第4号,1999年3月(『社会統計学研究序説』青森大学附属産業研究所,2004年)

 本稿は,ウッラ・シェーファー『歴史的国民経済学と社会科学としての社会統計学-19世紀後期ドイツにおける理論社会学と経験的社会研究の前史についての研究-』(1971年)のうちの19世紀ドイツ社会統計学に関する所論から学んだことを整理して書かれたものである。 

本稿は筆者によるシェーファーのこの書の社会統計学に関する部分の「要約」である。以下では,その本稿をさらに要約する。この本は,「新経済シリーズ」の一環として出版され,その特徴は19世紀後期ドイツでの社会研究における歴史学派経済学と社会統計学及び社会学の歴史的関連を研究している点にある。

構成は,「19世紀後期ドイツ社会学の歴史的出発点の状況と理論的位置についての導入的覚え書き」「第一部:19世紀後期における国民経済学と統計学の自己理解。歴史的国民経済学及び社会統計学者の共同作業センターとしての社会政策学会」(「A:国民経済学の歴史学派」「B:社会統計学」),「第二部:経験的社会研究に対する国民経済学と統計学の業績」(「A:経験的方法」「B:テーマと結果」),「第三部:歴史的国民経済学時代における国民経済学者の社会概念と国家概念」(「A1:国民経済学者と社会改革」「A2:国民経済学者と国家」「B:統計学,社会及び国家」「C:イデオロギー批判の観点からみた国民経済学者と統計学者)」「結論の覚え書き:歴史学派と社会統計学者の現実性について」からなる。

 筆者はこの書の全てを本稿で紹介しているのではない。紹介部分は,第一部の「B:社会統計学」と第三部の「B:統計学,社会及び国家」がメインである。

 第一部の「B:社会統計学」の構成はさらに,「1.官庁統計と学問的統計学の概念と展開」「2.社会統計学の指導的な代表者の理解する統計学」「3.社会科学としての統計学」である。これらのうち「2.社会統計学の指導的な代表者の理解する統計学」は,3つの部分(a.量的集団分析の方法としての統計学,b.統計学の研究対象としての社会,c.社会に於ける合法則性の学問としての社会統計学)に分かれている。

 細かく内容が祖述されているので,詳しくは本稿を読んでもらうのが一番良いが,箇条書き風に要点のみを示すと,次のようなことが書かれている。統計学の発展を歴史学派との関連で,とくに1850年のクニース「独立の学問としての統計学」以後の展開を解説。ドイツ国状学のケトレーへの影響,国状学と社会統計学との関連。リューメリン,エンゲル,マイヤーの統計学(統計的合法則性)理解,社会科学の他の分野と統計学との関連,国家行政と統計学,統計学の批判力,統計学と社会制度,政策の認識手段としての統計の意義,などなど。

 筆者は末尾で本稿の全体を総括している。シェーファーは,この本で,19世紀後期,より限定的にはクニース以降の社会統計学者を網羅的にとりあげ,鋭い分析を行っている。しかし,ファラティー,モール,ヨナク,ヴァッポイスといった学者への言及を欠いている。とりわけ国状学派の軽い扱いが気になる。

 シェーファーは統計学を量的集団分析の方法に関する科学とおさえ,社会科学の諸分野と統計学との違いを「数量的方法への傾向」ととらえている。その際,マイヤーを議論の俎上にとりあげているが,彼の悉皆集団観察という手法をみていないのは問題である。
 統計学の研究対象としての社会というテーマについて,学説史を要領よく纏めている。そのなかでエンゲルが国家と社会の区別と関連をみてとれず,そのためクニースのように国状学と統計学との対立を認めることができなかった。

 シェーファーは,エンゲルがケトレー的統計学(社会における合法則性を探求する学問とした)を極端化した点を批判している。また,彼女はマイヤーの統計学に絡めて,この時代の社会統計学が「独自な精密社会理論として理解される」としているのは,誤解である(筆者は「誇張である」と書いている)。

 シェーファーが社会統計学を批判的科学とみなしているが,その指摘は説得的でない。社会統計学とそれを担う学者の問題意識ないし批判力とは,別個の問題である。

 シェーファーは,統計学が異なる領域間の相互関係を明瞭にしたことをその功績にあげているが,妥当な指摘である。本書は,総じてこの時代のこの分野の歴史的展開を網羅的に説得的に論じている,すぐれた業績である。   
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 戸塚茂雄「クニース『現在の... | トップ | 佐藤博「ケトレーにおける『... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む