社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

森田優三「物価指数の沿革と現状(第17章)」『物価指数の理論と実際』東洋出版社, 1935年

2016-10-16 11:46:12 | 9.物価指数論
森田優三「物価指数の沿革と現状(第17章)」『物価指数の理論と実際』東洋出版社, 1935年

 物価や貨幣価値の変動の測定は, これまでどのようになされてきたのか。そもそもそれを指数で測る試みは誰によって考え出され, 種々の測定の方法が工夫されてきたのだろうか。本稿は, そういった疑問に対する平易な解説である。物価指数の理論と実際の変遷が鳥瞰でき, 有意義なので, 以下に, その要約を掲げる。

 筆者は, 物価指数の歴史は古いとして, フランスのデュトが18世紀の中葉に, ルイ12世および14世の時代(1462‐1715)の物価の状態をいくつかの商品の価格の単純な総和(総和法)で比較した試みをあげている。次いでイタリアのカルリが統計指数の形式で, 平均法を使って, 1764年にアメリカ大陸の発見と物価の関係を調べるために, 1500年を基準とする1750年の価格比率の測定を行った(穀物, 葡萄酒, 油の3品目)。これらが物価指数の最初の試みである。

 その後, この種の指数はイギリスを主として展開された。その発端となった人物は, シュックアバーグ・イーヴリン卿であり(1798年), これにアーサー・ヤング(1812年), ロウ(1822年), プーレット・スクロープ(1833年), ポーター(1833­37年)が続いた。イーヴリン卿は11世紀以降の貨幣価値の下落を把握することを試み, 15種の商品と家事労働に対する価格を調査し, 1550年の価格を100とする価格表を作成した。ロウとプーレット・スクロープは, 加重総和指数の方法を主張した。

 1840年代に半ばを過ぎると, 一時下火であった物価問題の研究が, カリフォルニアやオーストラリアの金鉱発見による物価騰貴が引き金となって, ドイツのゼートベーヤ, イギリスのジェヴォンスが画期的研究を示すにいたった。とくにジェヴォンスは, フィッシャーによって「物価指数の父」と呼ばれた。ジェヴォンスはその論文のなかで, 39種の商品の1782年から1865年にいたる物価指数を計算し, かつ物価指数の計算に幾何平均を使用するべきことを提唱し, その理論的根拠を明らかにした。ラスパイレスはジェヴォンスの幾何平均説に反対し, 1864年に, 一定種類の品目の基準年度の数量をウェイトとする算術平均法を提示した。さらにパーシェは, 1874年に, 22種の品目により, それらのドイツ関税同盟において消費された数量を調査し, 比較年度のウェイトを採用した指数を開発し, 1868年から72年にいたる指数計算をおこなった。これより先, 1871年にはラスパイレスとドローヴィシュの間で, 指数の計算法をめぐって論争がなされた。

 19世紀後半, 物価の一般的下落が顕著になり, 物価指数研究が再燃する。この時期, この分野で論陣をはったのがイタリアのメッセダリア, イギリスのエッジワースであった。とりわけ, エッジワ―スは単純および加重算術平均, 中位数, 幾何平均などの計算法を比較研究し, 指数はその目的によって計算方法を異にすべきであると, 主張した。また, 1890年にはウエスターゴルが初めて物価指数算式の充たすべき形式的なテストを試み, その結果, 指数に用いられるべき算式は単純あるいは加重平均式がベターであるとした。

 筆者はさらに, ピアソン, ウォルシュ, フィッシャー, ミッチェルの業績を, さらに1920年, 21年のマルク, ボーレー, ピグーなどの研究を紹介し, フィッシャーにおいてはじめて指数の算式が網羅的に収集され, テストにかけられ, 理論的にはパーシェの算式および加重総和算式が, また実際的には加重中位数が最も優秀な算式であると推奨した。フィッシャーはまたいわゆる理想算式を提唱した。

 以上, 物価指数理論の沿革をおさえたうえで, 筆者は各国における実際的調査の歴史, 官庁による指数(卸売物価指数, 消費者物価指数)の公表について言及している。それによると官庁統計として物価指数が公表されたのは20世紀初頭であって, アメリカでは1902年, イギリスで1903年, フランスで1904年, ドイツで1905年とのことである。

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