社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

有田正三「ジージェックの統計学の特質(Ⅰ編・第8章)」『社会統計学研究-ドイツ社会統計学分析-』ミネルヴァ書房,1963年

2016-10-16 22:02:13 | 4-2.統計学史(大陸派)
有田正三「ジージェックの統計学の特質(Ⅰ編・第8章)」『社会統計学研究-ドイツ社会統計学分析-』ミネルヴァ書房,1963年

 本稿の課題は,ドイツ社会統計学を二期に分ける転換点に位置し,「実体科学としての統計学」から「形式科学としての統計学」への学問的転換,統計調査論の再編と統計利用論の本格的展開を示したジージェック統計学の特質の詳細を明らかにすることである。

 筆者はまずジージェックの一般方法論を「手続論的=論理構造追及的」と規定する。その含意は,統計学の全体系を主導する地位を与えられた一般統計方法論が手続論的性格を強くもち(社会的諸側面への統計の応用拡大にともなう統計的手続過程の特殊化=分化に対処した一般的効果的な原則的手続き過程の形成),同時に統計方法の論理的構造の解明に寄与したことにある。

 ジージェックは認識目標を方法構成の基準とするが,前者は現実の客体ではなく,意識に反映される過程で抽象化され加工変形された客体である。したがって認識目標は,厳密に言えば抽象化され加工された形式としての客体である。この方法構成では,客体抽象化=加工形式の定めた認識目標定立過程が方法的過程から排除され,方法が認識目標のなかに組み込まれた客体抽象化=加工形式の具体的手続きに局限される。目標基準のこの方法構成は,しかし,統計方法の論理構造への接近を可能にする。目標である認識内容を前提とすることにより,統計認識内容を規定制約する方法的因子の摘出が可能になるからである。ジージェックはこの方向で四基本概念(調査単位・調査標識・群・表示)を抽出し,統計的認識の基本的範疇とした。

 統計的認識の基本的範疇のこのような機能概念化は,統計方法の特殊な性格上の構成に対応する。すなわちジージェックが構成した統計方法は,社会的実践および社会科学の要請する数字情報を提供し得るかどうかに絞られる。統計方法の合目標的装置化である。一般統計方法論は,この装置の構造および操縦法の学として現れる。

 ジージェックは統計的認識の目標を「社会的集団の数的説明の獲得および解釈」と規定した。ここに統計的認識を量的認識とし,そのための方法として統計方法を基礎づけようとする自覚をみることができる。しかし,その自覚にも限界があり,それは彼が統計的認識の量的性格を類的把握の枠内で意識したにすぎなかったからである(同種個別事例の併存)。後者が社会構成体の構成要素であることは,無視されている。前面に表れているのは,類(しかも認識関心に応じて構成される帰納的なそれ)の量的認識である。

 ジージェックの一般統計方法論は,統計数獲得論=統計調査論と統計数解釈論=統計利用論からなる。前者は統計調査の手続き構造を,類の量的認識としての統計的認識から反省分析する内容で,統計調査の方法的基本結節を調査単位・調査標識・群・表示とする「四基本概念の理論」に定式化されている。この理論は類の量的認識の方向における統計的認識の範疇論で,統計調査論だけでなく統計利用論への足掛かりを与えるものである。後者は統計比較を要素的形態として統計数解釈の諸形態ととらえる統計利用論である。しかし,その内容は統計数解釈の方法的構造を指導するものではなく,未熟である。それだけでなく,その利用論はストカスティックな方向での展開を予定し,統計数獲得および統計比較に依存して統計数解釈を構成するための理論的基礎として,上記四基本概念の他にこれを補う大数法則の採用を図った。ためにその体質は,確率論的計算手

 続きを中心とした数理統計学的成果に寛容にならざるをえなかった。
ジージェックの一般統計方法論には,統計数獲得から出て統計数解釈に流入する「四基本概念の理論」と統計数解釈から出て統計数獲得に流入する大数法則が交錯している。両者の統一を可能にしているのは,類の量的認識としての統計的認識の解釈である。もとめられるのは,統計調査と統計利用とを一元的に基礎づけ一般統計方法論を確固たる体系に高める統一原理である。

 ジージェク統計学の位置は,次のようになる。それはドイツ社会統計学の第一次世界大戦後の転換を,すなわち「実体科学としての統計学」から「形式科学としての統計学」への転換を推進するものであった。彼はその統計学体系を一般統計方法論に優越的主導的地位を与えることにより「形式科学としての統計学」へ本質的に傾斜させたものの,認識目標として「社会的集団の数的説明」を掲げ,統計的認識を類とかかわらしめることで「実体科学としての統計学」(統計的認識の完結的自立性の観念)を完全に清算できず,両者の併存として特徴づけられるものであった。両契機の矛盾をもった併存は,その体系の全体的統一を不可能ならしめた。ドイツ社会統計学の「形式科学としての統計学」への完全な転換は次世代であるフラスケンパーの統計学の登場まで待たなければならなかった。フラスケンパーにおいて,統計学は形式科学として明確に構想され,一般統計方法論では統計利用論の十全たる展開がみられる。もっとも,その統計利用論はジージェックのそれとはかなり異なったものとなったのであるが。
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