社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

有田正三「統計的集団論(Ⅰ編・第3章)」『社会統計学研究-ドイツ社会統計学分析-』ミネルヴァ書房, 1963年

2016-10-16 21:58:22 | 4-2.統計学史(大陸派)
有田正三「統計的集団論(Ⅰ編・第3章)」『社会統計学研究-ドイツ社会統計学分析-』ミネルヴァ書房, 1963年

 統計的集団概念は, ドイツ社会統計学の要諦である。統計的認識は, これらを対象とする。具体的には, 社会的集団現象, 社会的集団, 統計的集団である。「実体科学としての統計学」から「形式科学としての統計学」への移行期にあったチチェクは, それらをどのように考察したのだろうか。以下, 有田の文章に即して, 要点をまとめる。

 チチェクは, その主著『統計学綱要』で統計学の固有の対象を「集団現象」であると書いている。彼は一般的には, 統計的集団の語を用いている。統計的集団は「ある見地から同種であるが, 他の見地からするとさまざまな相異を示す単位の総体」, 多数の個別事例の総体, と定義される。その実態は, 時間的空間的に特殊な限定のもとにおける個別事例の併存であって, 現実の統一体ではない。統計的集団概念が現実的統一体であるか否かの問題は, ドイツ統計学の課題であったが, チチェクはこれを, 現実的統一体=「自生的集団」, 観念的統一体=「人工的集団」という仕方で解答を出した。統計的集団は後者であり, 現実からの一つの抽象, 現実からの個別事例の摘出=分離を前提とした, 個別事例の総体である。

 統計的集団は, 形式的同種性にもとづいて構成される。それは現実事態の認識克服のために, 主観によって構成される。形式的同種性は, 個別事例に同一の概念が妥当することをいい, 個別事例がある徴表において同じ性質をもつことを規定することができ, いわば「統計的集団構成の規則」である(対象があらゆる徴表において同じ性質をもつことを示す同等性と異なる)。チチェクにあっては, 前提される性質の実体的内容, 分離が行われる総体の客観的制約は不問にふされ, そのようなものとして認識内在化されている。

 以上のように規定されるチチェクの統計的集団概念は, いくつかの派生的諸問題に直面する。一つは, その統計的集団は, その論理的性質からいえば類であり(この論文は「類」の説明が十分でなくわかりにくい), その限りでドイツ社会統計学の古典家のそれを継承している。違いはドイツ社会統計学の古典家が統計的集団概念のなかに観念的統一体と現実的統一体という論理的性格上, 対立するものを含め, 統計的集団概念と社会構成体との間に克服しえない間隙をつくったのに対し, チチェクは統計的集団概念の認識内在化によってこの間隙を繕ったことである。

 社会構成体の量的規定性は等質の個別事例の併存としてしか現れないので, これを見いだすには構成要素に着眼しそこにおける等質性を基準にしなければならない。そうすると, 個々の構成要素はそれぞれ一者になり, こうして一者の併存継起が生まれ, その総括が量的規定性である。したがって, 社会構成体の量的規定性を見出すには, 社会構成体をその構成要素に分解し, 量的規定性の基礎である等質を基準に社会構成体をその構成要素たる等質の素材的個別事例の併存の継起に編成替えしなければならない。これが統計的集団である。統計的集団はしたがって, 社会構成体の量的規定性を見出すための抽象物である。

 「チチェクは, 統計的集団を等質の個別事例の併存としてとらえることによって社会の量的認識としての統計的認識の基礎づけに一つの前身を示した。しかし, 同時に大きい欠陥をもつ。すなわち, 等質の個別事例の併存を類としてそれ自体に意味をもつものとすることによって, 社会構成体の量的規定性との関係を切断し, ひいては社会構成体の質的規定性との間に必然的関係をつける余地をなくしてしまった。このことは, 社会の量的認識としての統計認識の基礎づけの可能性を奪い去るもの」であった(p.128)
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