社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

高岡周夫「ケトレーとマイヤー」『経済論集』(北海学園大学)10号, 1962年

2016-10-16 21:51:57 | 4-2.統計学史(大陸派)
高岡周夫「ケトレーとマイヤー」『経済論集』(北海学園大学)10号, 1962年(「ケトレーとマイヤー(第2章)」『経済統計論の基本問題』産業統計研究社, 1988年)

 本稿はケトレー(1796-1874)とマイヤー(1815-1925)という二人の偉大な統計学者の理論の同質性と差異性について論じたもの。ケトレーとマイヤーの統計学を論じたものは少なくないが, どちらかというと後者が前者を乗り越えてドイツ社会統計学の礎石を築いたとの言われ方が目立つ。端的に言えば, それらは両者の差異性を論じながら, マイヤーにはケトレー的弱点の痕跡が残っていたと評価する。それに対し, 本稿では, 両者の同質性, 強い関連が強調され, その延長で差異が確認されていて, この点が「通説」と異なるところである。

 ケトレーは統計学を「社会物理学」とみなし, 社会現象の分析に確率論の適用を意図し, 「平均人」を想定した。対するに, マイヤーは統計学「精密社会学」とみなし, 社会現象の分析に大数法則を想定し, そのための方法として悉皆大量観察法を意図し, 観察の対象としての社会的集団を措定した。筆者は二人の統計学者の理論を整理したうえで, 「社会物理学」と「精密社会学」との, またケトレーの社会現象への数量的接近法と「悉皆大量観察法」との照応関係, 共通性を確認し, 上記の結論を得ている。換言すれば, それは, マイヤーが社会現象に実質的に, 具体的に接近しようとしながら, それを実現できなかったことの理由であった。

 高岡周夫はマイヤー研究を生涯の仕事とした研究者であり, 『経済統計論の基本問題』(産業統計研究社, 1988年)には, 本稿以外にもマイヤー研究の成果が多数おさめられている。高岡の精力的な仕事にもかかわらず, 同じ研究分野の他の研究者(有田正三, 足利末男, 長屋政勝)によってあまりとりあげられたことがなく, その理由がよくわからなかった。今回, 実際に本稿を読んで, その理由が部分的に分かった。

 その理由はまず, 文章が正確でなく, 読みにくいことである。また繰り返しが多く, 整理が行き届いていない。さらに本稿には「J.M.ケインズとマイヤーの技術論争」という一見, 魅力的な「節」があるが, その内容は, ケインズがマイヤーの「悉皆大量観察」を「単なる技術的な操作にすぎない」と非難したとの指摘がわずかにあるだけで, 後はその前から述べられていたマイヤー統計学の中身の繰り返し的説明である。
もう一歩踏み込んでいうならば, 筆者のマイヤー論が傍流におかれているのは, 以上の技術的な理由の他に, 筆者のマイヤー 統計学の押さえ方に甘さ, 曖昧さがあるのではなかろうか。ケトレー理論との強い関連を強調するのでは, マイヤー以降のドイツ社会統計学の発展と矛盾を立体的にとらえる視点を示すことができないのではなかろうか。
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