社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

高木秀玄「蜷川統計学における『物価指数論』」『現代の経済と統計』有斐閣, 1968年

2016-10-16 11:58:56 | 9.物価指数論
高木秀玄「蜷川統計学における『物価指数論』」『現代の経済と統計(蜷川虎三先生古稀記念)』有斐閣, 1968年

 高木秀玄は若いころから, 京都大学経済学部の蜷川虎三の研究室に出入りした。本書は, その蜷川ゼミと関わった研究者が, 蜷川虎三の古稀を記念して編まれたものである。

 高木はこの論文のなかで蜷川統計学における価格指数論の位置と意義を論じている。冒頭では, 蜷川統計学の基本的性格が要約されている。それによると, 統計学は統計の見方, すなわち統計の理解, 吟味, 批判の基礎としての統計の作り方に関する理論であり, この統計の利用目的を実現する統計の使い方に関する理論である。その実質的内容は, 図式化すれば, 「大量」→「大量観察」→「統計」→「大量の構成を示す統計系列」→「解析的集団」→「解析的統計系列」→「統計解析」ということになる。統計学の体系は, 統計学原論(総論)と統計学各論よりなり, 前者は一般的抽象的規定をその内容とし, 後者は特殊具体的規定を内容とする。経済指数論は, 統計学体系のなかの特殊具体的部門である経済統計論の, さらに特殊問題であり, 高木は本稿でこの問題の検討をとおして蜷川統計学の体系性を確認しようとしたわけである。

 蜷川においては, 物価は商品大量の一つの標識である。大量観察によって, 商品大量の価格, 数量が得られ, これが商品大量に関する統計である。物価指数は, 多数商品の異なる二時点間価格の比率の平均値を項とする時系列であり, 具体的には基準時の全商品の価格の合計と比較される時点のそれとの比率, さらには異時点に同一の取引量, 購入量を獲得するための貨幣必要量の相対的変化を語るものである。したがって, 蜷川にとっては, 各種の物価指数はそれぞれ独立の意味と内容とをもち, それによって測られる対象たる貨幣価値, 一般物価水準の一般性, 全体性を否定される。

 既述のように, 蜷川にとって物価指数は, 多数商品の異なる二時点間価格の比率の平均値を項とする時系列であったが, この場合, 平均化のもとになる平均値の系列は比率であるので幾何平均がとられる。また, ここで重要なのは, 「物価指数における平均の意味」である。一般に商品価格の変動要因には, 各商品の価格変動に共通な貨幣側の事情による「一般的原因」と個々の商品の特別な商品側の事情による「偶然的原因」とがある。平均によって語られるものは, 「一般的原因」によるものであり, これによって「偶然的原因」は除去される。ここで重要なのはウェイトを何でとるかという問題であり, その実質的意味をよく吟味しなければならないということである。この一連の指数論に関する所説で, 蜷川はフィッシャー流の貨幣数量説的価格指数論にたいして批判的姿勢を堅持した。しかし, 蜷川は, 最後に指数の形式的要件も問い, そこでは指数論の形式的性質の吟味を無視することができず, 高木によれば「いくらかそれにとらわれていたかの観がある」。
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