社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

有田正三「ジージェック統計数獲得方法論分析序説」『彦根論叢』第37号,1957年

2016-10-16 21:41:39 | 4-2.統計学史(大陸派)
有田正三「ジージェック統計数獲得方法論分析序説」『彦根論叢』第37号,1957年

ジージェックの統計調査論は,統計数獲得論として構成され,その方法論と成果論とからなる。前者は統計数獲得過程の方法的構造を問題とし,後者はその過程の成果であり,獲得過程の方法的構造がその成果に刻印した統計数の諸性質を問題とする。

 ジージェックは,『統計学綱要』(1921年)の前半である「一般方法論」で,また『統計方法論の5つの主要問題』(1922年)で,さらに『統計数は如何にして成立するか』(1937年)[以下,『成立』と略す]で統計数獲得方法論を体系的に展開した。本稿は,『成立』によりながら,統計数獲得方法論の分析の展開方法を問題としている。

 ジージェックの統計方法論は,一般統計方法論と特殊統計方法論とからなる。方法は一定の認識を目標とし,これに到達することを可能にし,保証する手順である。ジージェックの方法観がこれである。方法は目標に向かって,それに到達できる構造で組み立てられなければならない。統計獲得方法はこの方法観から,一定の目標に到達するための手順である。そこで統計数獲得方法の志向する目標が規定されなければならない。原則的標準的な一般的図式的統計数獲得方法は,基本目標を定めることから始まり,要素的操作に分解した統計数獲得の実際をこの目標と関係づけて検討する。ジージェックはこれを「統計数獲得における基本的(本質的)方法行程」と呼ぶ。「基本的方法行程」の内容とやり方は,定理に表現される。この定理は,個々の統計数獲得に対して規範的意義をもつ。定理の定立によって「統計数獲得の理論」が確立する。  

上記の「基本的方法行程」に規定された統計数獲得の原則は,具体化(特殊化,実質化)されなければならない。これは特殊統計方法論の課題である。統計数獲得方法論は一方で原則的方法を定式化するとともに,他方でこの原則的方法が個々の統計数獲得に際してその実質的目標に順応し得る可能性とその方法的措置を規定する。

統計数獲得の基本目標は,一つの集団およびそれにおいて問題となる部分集団に関する数的説明の獲得である。統計数獲得に際しては,二種類の目標が定立される。一つは(現象の惹起からみて)「同質的な」集団または部分集団に対する統計数の獲得,もう一つは現象に作用する一般的本質的原因の結果を表現する統計数の獲得である。これらの目標は統計数獲得の際に常に前提されるわけではなく,副次的目標である。

 筆者は最後に,以上の統計数獲得方法論に対してコメントしている。その方法論は要するに,<認識内容=目標>➡<方法>➡<目標実現>という円環形式で接近するやり方である。これは認識構造を,対象の構造から規定するやり方と対立する。認識内容から出発するジージェックの方法は,認識内容が意識における対象の定在であるので,対象から出発しているようにみえなくもない。しかし,認識内容は対象と必ずしも同一でない。ジージェックの場合には,認識内容から出発することが対象から出発することだといっても,それはあくまでも内在化された対象にすぎない。

次に,方法構成の特殊な仕方は,方法の特殊な内容づけが対応することについて。方法は,ジージェックによれば,目標あるいは目標設定を方法に含めるか否かで,二つの意味がある。広義の方法はそれを含め,狭義のそれは含めない。ジージェックが方法として問題にするのは,狭義のそれである。方法あるいは方法的過程から目標あるいは目標設定を除外することは,この本質的なものの規定と根拠づけを方法的過程から除外することを意味する。そうなると方法あるいは方法的過程として残るものは,この本質的なものの規定と根拠づけを取り除くことなので,いきおいこの本質的なものを統計数獲得の行われる社会的技術的条件にそくして具体化することにすぎなくなる。これは方法の貧弱化,方法規定の浅薄化である。  

 筆者はさらに,ジージェックが目標の規定においてどのような方法的性格と方法的構造を統計数獲得に予定したかを考察する。基本的目標の設定は,群的把握としての性格と構造を予定する。群的把握とは類的把握の一形態で,そこに一貫しているのは形式的同種性による個体の総括である。群的把握は,対象的にみると,統計的集団である。統計的集団は群的把握において成立する。ジージェックは統計数獲得を固定主義的にとらえる。この点で統計的集団を実在的集団として,その把握を統計数獲得とするいわゆる集団主義的立場とは一線を画す。しかし,注意しなければならないのは,ジージェックの個体主義的立場が統計数獲得を大数的把握(大数法則を原理として個体のもつ一般性を捉えること)でないということである。ジージェックは,大数的把握を基本的目標ではなく副次的目標と規定している。すなわち,ジージェックが副次的目標して規定する「現象に作用する一般的原因の結果を表現する数の獲得」は,大数法則の予定のもとに成立している。大数法則は,ここでは一つの方法原理として群的把握の結果のもつ偶然性を取り除くために役立つ,とされる。大数的把握は,群的把握に従属するものと理解されているのである。
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