社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

坂田幸繁「フランクフルト学派統計学におけるH・グローマン」『統計学』第41号, 1981年9月

2016-10-17 11:29:50 | 4-2.統計学史(大陸派)
坂田幸繁「フランクフルト学派統計学におけるH・グローマン」『統計学』(経済統計研究会)第41号, 1981年9月

 フランクフルト学派に属するH・グローマンの統計学理解とその位置づけを, 論稿「経済学と経済政策のための統計学-その目標と可能性に関する若干の方法論的考察-」を読み明らかにしたもの。結論は, グローマンはフラスケムパーなどのフランクフルト学派の問題意識と同一で, 統計的認識の特質を展開しているものの, 統計学の問題点をこの学問それ自体においてではなく, 経済研究の適用の仕方にもとめたことにある。筆者は書いている, 「したがって, 彼が志向するものは, もはや統計方法論ではなく, いわば実証的経験科学の研究方法論ともいうべきもののように思われる」と。

 グローマンの問題意識は, 現代の数理統計学が経験的経済研究に十分な貢献力をもちえないか, あるいは形式的貢献力と実質的貢献力との間で矛盾をきたしていることを重視し, そうなってしまったのは経験的研究に対して統計方法を科学的に適用するための確実な方法論が欠如していることなのだという。グローマンはその解明を, 統計学の2つの認識目標である「記述」と「推論」とに分けて考察しているので, 筆者もそれにしたがって解説している。

 「記述」では, 記述的目標における方法行程が「実質的問題設定」→「操作・方法の選択」→「統計方法の適用」→「結果の解釈」でとらえられている, と要約され, それぞれに対応して, 「価値概念と目的観念にてらした評価を可能にする理念的概念, 分類, モデルの構築」「研究対象に関する操作的概念の規定, 統計方法の選択」「調査, 集計, 利用」そして, 「吟味, 検討」が示される。

 また「推論」についても, 同じ行程が措定され, それぞれに「支配的価値観念, 規範に関連づけた理念型的仮説, 理論, モデルの構築」「操作的仮説, モデル, 観念の定式化, 統計方法の選択」「推定, テスト」「分析」が示される。特徴的なのは, 後者の「推論」の科学的基礎にポパーの批判的合理主義にもとめられていることである。従来のフランクフルト学派の統計学で弱かった「推論」の領域の理論的展開を, ポパーの批判的合理主義で突破をはかったのがグローマンである。
筆者はさらに, グローマンが推論的研究の出発点を経済生活における合法則性発生のプロセスと関連づけて論じていることに着目している。そこでは, グローマンの提示する方法が機械的, 確率論的な研究様式に傾斜していきかねないことを読み取りつつ, しかしグローマンにあっては, 既存の統計的方法は推論的研究における科学的認識獲得のための「手段」ないし「道具」として位置づけられ, 研究主体のもつ科学理論こそが研究過程を主導性するという主張があるとの確認をしている」。
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