社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

有田正三「一般統計方法論の課題と方法(Ⅰ編・第2章)」『社会統計学研究-ドイツ社会統計学分析-』ミネルヴァ書房, 1963年

2016-10-16 21:56:54 | 4-2.統計学史(大陸派)
有田正三「一般統計方法論の課題と方法(Ⅰ編・第2章)」『社会統計学研究-ドイツ社会統計学分析-』ミネルヴァ書房, 1963年

 ドイツ社会統計学は20世紀に入って, 実体科学としての統計学から形式科学としての統計学へ転換したが, その転換のプロセスでの大きな変化は一般統計方法論の学問的地位と内容の変化である。すなわち, 一般統計方法論はそれまでの統計学における従属的地位から主体的地位へと移行する。チチェクは, その学問的営為の大半を一般統計方法論の研究にささげた代表する論者であった。一般統計方法論に関する定式化は主として, その著『統計学要綱』(1923年), 『わたしの批判者へ』(1924年)および『一般および特殊統計方法論』(1933年)で行われた。

 チチェクにあっては, 一般統計方法論が統計学体系で最も重要な分野となる。それは次のような言い方をするとより的確で, 具体的である。すなわち, 一般統計方法論は特殊統計方法論で自己を特殊化し, 統計的結果学で自己の応用結果を示し, 「一般統計方法論→特殊統計方法論→統計的結果学」といった関係をとる。

 これ以降の筆者の解説は, 非常に哲学的であって, 必ずしもわかりやすいものではない。しかし, しばらく, それにつきあうことにする。一般統計方法論は, 統計方法を一般的(普遍的)把握(定式化)において形式的観点から特徴づける。「一般的(普遍的)把握(定式化)」とは, 統計方法を応用領域に適用される定理をたてることであり, 「形式的観点」とは統計方法が適用される応用領域の実体的問題を無視することである。これらを一般統計方法論の「一般的形式的性格」という。一般統計方法論の形式的観点=一般的定式化には統計実務が「材料」とされるが, 一般統計方法論の「一般的形式的性格」の構造は, 統計実務の本源的統一性の志向のもとに追及され, それは原則的で, 規範的な性格のものである。その指導原理は, 方法が目標に到達することを可能にし, 保障する手続きたらしめることである。方法は目標に従属し, 目標に対する手段である。

 チチェクは統計方法を目標とこれを実現するための方法的過程に区分し, それぞれの一般的原則的形態を, 一般統計方法論の独立の研究対象とする。両者のうち, 一般統計方法論が最初に扱うのが目標規定である。目標を独立に研究の対象化することは, 統計方法論の科学的扱いの新基準である。次に目標を前提とし基準とする統計方法(狭義の統計方法)の構成が問題となる。これはどのようになされるか。第一は原則的純図式的な方法の構成(統計的研究に一般的に妥当する目標の規定, それに関係させた統計実務の構成要素(操作)への分解とその機能の吟味, そしてそれらの, 基本的目標への志向を前提とした連結, 手続き過程の定理への表現)である。第二は個々の場合における実体的な対象, および実体的な目標にこの原則的純図式的方法を順応させる処置の規定である。前者は, 標準化された, いかなる場合にも効果を発揮する装置の構成であり, 後者は装置の操縦法である。これは一種の「機械学」である。一般統計方法論は, このようなものとして, 社会科学の補助学であり, 立法, 行政および経営と結びつく。目標基準の方法構成, 統計方法の装置化, 一般統計方法論の「機械学」的構想, これがチチェクの統計学の要である。

 それではチチェクの一般統計方法論の問題点は, どこにあるのだろうか。一つは, チチェクでは方法の合目的性がすべてであり, 目標および方法の合目標性が過大視されていることである。その延長で方法から目標が切り離され, 方法は基本構造を与えられたものとして前提し, これを社会的条件のもとに実現する過程にしかすぎなくなる。しかし, 目標は客体の意識への定在である。目標基準の方法構成は, 客体を基準とした方法構成であるべきである。一般統計方法論が社会科学的一般統計方法論であるためには, 社会=客体からみて必然的な認識をもたらす統計方法を基礎づけることが必要である。認識の必然性は, 客体, すなわち意識から独立に存在する物質が認識に正しく反映されることであり, 合目標性ではない。チチェクは, 認識の必然性を問題にせず, 合目標性を問題にする。「一般統計方法論は社会科学の要求する数字を・・・技術的に適確に提供することができるならばそれでよいというのであろうか。チチェクはこの方向においてももっぱら合目標性を志向して統計方法を図式的に一種の措置として構成しその操縦性を定めた。一般統計方法論はチチェクにおいてはいわば『機械学』としてあらわれるのである」, これが筆者の結論である。(pp.109-110)
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