社会統計学の伝統とその継承

社会統計学の論文の要約を掲載します。

内海庫一郎「フラスケムパーの指数理論」『経済論叢』第47巻第3号, 1938年3月

2016-10-16 11:47:30 | 9.物価指数論
内海庫一郎「フラスケムパーの指数理論」『経済論叢』(京都大学)第47巻第3号, 1938年3月

 本稿は, フラスケムパーの”Theorie der Indexzahlen, Beitrag des statistischen Vengleich ”(「指数の理論-統計的比較の論理のための一寄与」)を中心に, フラスケムパーの指数問題に関する所説の要点をまとめたものである。わたしは, フラスケムパーのこの本を読んだことはないので, 筆者のまとめがどれだけ要をえたものか, またその評価がどの程度, 適切なのかは, わかりかねる。そうは言っても, 筆者は著名な統計学者なので, 安心して読みとおすことができた。ただ, 原本を読んでいない哀しさで, 難解な箇所が随所にあり, 以下は概略的な祖述であることをおことわりしておきたい。

 フラスケムパーによれば, 統計的比較の論理は一般統計学の主内容である統計学の論理(一般統計方法論)の一構成部分である。フラスケムパーにあっては, 統計学の論理の基本的性質は「数論理と事物論理の並行主義」なので, 課題は指数の多様な計算可能性を事物論理に適応させて考察することとなる。このような問題意識のもとにフラスケムパーはいくつかの指数理論の意味を規定し, 指数の形式的吟味の問題, 「比率の平均」と「平均の比率」の問題など, 指数理論の一連の伝統的諸問題を論じている。主要論点は, 「統計的比較の論理」「指数算式の論理的意味」「平均の変動と平均的変動の概念的矛盾」である。

 まず「統計的比較の論理」。指数は, フラスケムパーによれば, 比率の一種である。また, 指数は統計的比較の補助手段であるので, その理論的諸問題は統計的比較の論理の特殊問題として扱われる。具体的には, 比較問題展開の出発点となる「根本的なもの」として, 比較の前提としての同種性(比較可能性)と比較結果を問題とし, 比較標準の相違について関説するかたちをとっている。

 次に「指数算式の論理的意味」である。指数算式は, まず比較される統計の大きさの性質から問題とされる。それが単一の大きさで特徴づけられる場合にはとくに問題がないが(算式は単純指数あるいは個別指数), 複合的な統計的大きさの比較が問題になるときは一定の困難をともなう(集合指数)。筆者はここで統計的現象を「外延的大きさ」「内包的大きさ」「その混合形態である, 構成部分が外延的大きさと内包的大きさよりなるもの」に区分し, それぞれに対応した算式を示している。

 次いで, 指数算式は, まず比較される目的から考慮されなければならないとして, 特定比較目的からする「構造的差異を除去する比較」について, フラスケムパーの方法論を価格指数算式の諸形態(ラスパイレス式, パーシェ式, ロウ式)とからめて, 論じている。どの算式を適用するかは, 具体的な比較目的がこれを決定する。

 最後の「平均の変動と平均的変動の概念的矛盾」に関しては, 複合指数が比率の平均で算定されるか, 平均の比率で算定されるかという問題である。この問題にたいするフラスケムパーの回答は, 平均の変動が算術平均で, 平均的変動が幾何平均で算定されるというものである。

 筆者は結論として, フラスケムパーの指数理論では, 指数の形式的問題が数理的にではなく, 形式論理的に解明しようとされている点で示唆にとむが, いうところの事物論理が社会科学の理論に裏付けられていない点で不満が残ると述べている。
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