お正月はもう明日のこと。今年の旧暦の元旦は、Valentine’s day と重なっています。ベトナムで人々が
Valentine’s day のことを言うようになったのは、1990年代に入ってからだと思います。生活が豊かになれば、
お祝い事も多くなります。
Valentine’s dayのことを、ベトナム語では、「恋人達の日」と言います。日本のように「女性が男性に」という
決まりがなく、人々は恋人や気になる人にプレゼント、カードを贈ります。男性は女性にバラを贈ることが多いので、
この日はバラが高くなり、しかも売り切れて買えないこともよくあります。カード屋にはずらりとValentineのカードが
並んで、賑わっています。
ベトナム人の恋愛観は、日本人のそれと大分違っています。結婚を前提とされることが多く、付き合って
いたら、お互いに「一体感」が強いのです。「割り勘」文化がないので、お財布がほぼ共有のものになり、
共に行動し、大学生ならお互いに大学へ送り迎えをしたり、社会人だったら会社まで送り迎えをします。
(男性が女性を送ったり> 迎えに行ったりすることが多いですが)相手の同僚や友達の結婚披露宴や
各種パーティーに出席したり、とにかく、周囲に「付き合っている」ことをオープンにします。お互いによく
世話をしますが、その分、「所有意識」が強く、嫉妬も激しいです。
こうして、ベトナムの若者たちは、恋愛にかなりの時間とエネルギーを消費しています。
ちなみに、「同棲」に対しては批判的な見方がまだ一般的です。高等教育を受けるためや仕事のために
地方から都会に来た若者たちの間には少しずつ普及していますが、その親世代には(特に女性の親に
とって)非常に受け入れがたいことです。4,5年前、「同棲はしていいものなのか、すべきでないものか」
という議論がマスコミで大きく取り上げられました。様々な意見がありましたが、結論から言えば「(特に
女性にとっては)避けるべき」というものでした。なぜなら、女性に対する社会的な規範はまだ多く、一度
同棲して別れてしまうと、その過去がずっと引きずられて、残りの人生が幸せになれない恐れがあるから
です。他の男性と同棲した事実が新しく出来た彼氏とその家族に知られたら、悲しい結末になってしまう
ケースが多くあるようです。
女性向けの雑誌や新聞に、「心の相談」のような項目がよく設けられます。「とても気になる人がいるけど、
告白して良いかどうか?女だからしない方が良いでしょうか?」というような相談があったりします。
ベトナムにおいては、長い歴史にわたって水稲が主な産業です。そして、水稲の生産に牛はなくては
ならない労働力です。飼い主は牛の鼻に紐を通し、庭にたてられた一本の柱に結びます。柱は牛に
とって住まいの象徴とされるためか、「女は柱、男は牛。牛は柱を探すことがあっても、柱は牛を探す
ことはない」という例えは代々言い伝えられています。女性は恋心に流されて男性より先に心情を語る
ことが美徳に反する行為だと。
秘かに恋を抱き、「この恋を凌ぐのは辛すぎる。だけど、先に告白したら軽く見られてしまう」と、葛藤
している女性が多くいるでしょう。恋愛をすると、悩みが多くなるのに違いありません。
ベトナムの若者の間に「恋は苦。だけど恋をしないと損。損より苦がマシ!」という冗談が昔から繰り返し
使われています。辛くてもやっぱり恋をするんだ!と、恋愛に情熱的なベトナムの若者たち。恋愛に冷淡でいる
日本の若者との大きな違いでしょう。
少し前ですが、日本の若者の恋愛事情をテーマにするテレビ番組を見ました。現実の恋愛が面倒なので、
ゲームで恋愛欲を満たす若者達が急増しているそうです。オンラインゲームの中で、主人公・分身と
なる自分のキャラクターを作り、ネットで理想とするキャラクターを見つけ、デートし、幻覚の恋愛を楽しむ
のです。「合わない」と思ったら別のキャラクターを見つければいい、傷つくこともなく辛くなることもない、
という考えなのです。
結婚はしたいけれど、やはり恋愛は面倒くさいと考える、別のタイプの人たちもいます。その人たちは、お見合い
結婚を選びます。求める人柄、年齢、学歴、職業、財力など、全てが明確で、それに該当する相手だけ
に絞って選択でき、楽だし失敗の比率も軽減され、一石二鳥です。それでも面倒くさいと思う人は、代わりに
親がお見合いします。あるお見合いパーティーの様子が映りましたが、参加者は全員60,70代の年配の方です。
結婚適齢期の娘や息子の写真を持参し、他の親とその写真を交換し、結婚相手の条件をお互いに伝えます。
良さそうな相手だと思えば、アポイントを取って子供たちに会わせます。
確かに、どのタイプのやっていることも効率が良く、失敗の回避もできるのかもしれません。ところが、死にたい
ほど辛い気持を体験しても恋愛は拒むものではないとするベトナムの若い男女の方が、なんだか人間らしいと
思います。
今年のValentine’s dayは、元旦と重なっています。帰省し親兄弟とお正月を過ごすか、街に残って好きな人と
お祝をするか、迷う恋人達もきっといるでしょう。お花屋さんが休んでしまうお正月に、青年たちがどうやって
バラを手に入れるでしょう?・・・などなど、気になっているところです。
