「あっれ~? おっかしいなぁ、また同じ場所に戻ってきちゃったよ」
緑色のポニーテールを揺らし、一人の少女が一本の竹を見て頭を抱えていた。
E-3の竹林、そのエリアを園崎魅音はすでに何十分もぐるぐると回り続けている。
目印にハンカチを巻いておいた竹を見上げ、コンパスを取り出して頭を捻る。
方角を指し示すための道具は、中の磁石をカラカラと回し続けていてその役目を果たしていない。
思わずため息を吐く、ただでさえ状況がわからないというのに、いつまでもこの竹の中に埋もれていては何も始まらない。
「もー、壊れてる磁石なんて渡さないでよねー。やる気あるのかなー」
実のところ、コンパスが壊れているわけではない。
この竹林は幻想郷に存在する迷いの竹林に酷似している。
一度迷い込めば「人を幸せにする程度の能力」を持った兎にでも出会わない限り人の身では二度と出れないといわれている竹林、その力はあらゆる方向感覚を狂わせてしまう。
しかし逆にその状況が魅音の精神を落ち着かせることにもなっていた。
殺し合いという異常な場、本来怯えるだろうし、実際初めは恐怖を感じていた。
けれども遭難するかもしれないという、彼女にとっても十分理解できる目先の危機が現れたことによりそのことを一時保留とできたのだ。
「まいったなぁ、こんなところで行き倒れなんて洒落にならないよ」
頭を掻きながらぼやくが、その声を聞く者はいない。
どこからともなく吹いてきた風が魅音の頬を撫で、ぞくりと身を震わせる。
竹藪に遮られ月明かりは地表までほとんど届かない、数歩先すら闇に包まれているこの場は他に理由がなくともそれだけで怖い。
「ど、どうしよ……日が昇るまで大人しくしてた方がいいかな。けど、圭ちゃん達探したいし……」
自分が作った部活の仲間たち、皆もこの殺し合いとやらに連れてこられているのならば心配だ。
とはいえ、この竹林から出られなくてはどうしようもない、一度足を止めて何か手はないか考えだす。
「長いロープか何かあれば、結んで行けたんだけどなぁ……」
デイパックを開くが、食糧や水といった基本セット以外に入っていたのは結崎ひよのという人物による自作スタンガンと可愛らしい人形が一つずつ。
スタンガンは護身用の武器としては最適だが、ここから出るのには到底役に立ちそうにない。
人形の方は何故かその首にロープが縛り付けられていて、一瞬魅音を怯ませる。
すぐさま立ち直り、そのロープを解いてみるが50cm程度では魅音の望む用途には到底足りない。
この状況を打開できる物は見つからず、溜息を吐きながら人形をぐにぐにと弄り気を紛らわせてみる。
「……人形、か」
ふと思い出したのは、ほんの数日前の事。
親戚のおもちゃ屋で行ったゲーム大会の商品として、一体の人形が圭一へと渡された。
女の子向けのその人形の扱いに圭一は困り果て、最終的にレナへと手渡されることとなる。
……その時魅音は、その人形が欲しいとは一言も言えなかった。
「はぁ……馬鹿みたい、この状況で何考えてるんだろ私」
今はそんなことを思い出している場合ではない。
そう思いながら、何故かその人形をしまう気になれずぎゅっと抱きしめる。
「圭ちゃん、大丈夫だよね……レナも、沙都子も、梨花ちゃんも、詩音も……」
自分が言うのも何だが、みんな子供とは思えないほど度胸が据わっているし、頭も回る。
例え大の大人に襲われようとも逃げ延びるだろう、それだけの確信を持てる。
ただ心配なのは、逆にその仲間達が誰かを殺したりしないか、ということ。
勿論あんな女の言うとおり殺し合う人が自分たちの中にいるとは思わない、だけど正当防衛として勢いあまって殺してしまうという可能性は十分ありえるだろう。
もしそうなった場合、詩音は……正直わからないが、圭一や沙都子などは心に大きな傷を作ってしまうだろう。
「そんなこと、絶対させない」
歯を強く食いしばり、虚空へと向かってはっきりと宣言する。
仲間達は絶対に守る、それが自分の、園崎魅音の勤めだ。
人形をデイパックの中へと戻し、今度は慎重に一歩一歩深く踏み込みながら歩いて行く。
一歩進む毎に振りかえり自分の足跡とその方向を確認、時間はかかるがこれで確実に一方向へと進めるはずだ。
「待っててよね、圭ちゃん、レナ……」
力強い呟きと共に拳を握る。
その拳に込められた力はとても、
そう、とても……
弱々しい物だった。
【E-3 竹林/1日目 深夜】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、ひよの特製スタンガン@スパイラル~推理の絆~、蓬莱人形@東方
【状態】:健康
【思考・行動】
1:竹林から脱出
2:部活の仲間達を守る
緑色のポニーテールを揺らし、一人の少女が一本の竹を見て頭を抱えていた。
E-3の竹林、そのエリアを園崎魅音はすでに何十分もぐるぐると回り続けている。
目印にハンカチを巻いておいた竹を見上げ、コンパスを取り出して頭を捻る。
方角を指し示すための道具は、中の磁石をカラカラと回し続けていてその役目を果たしていない。
思わずため息を吐く、ただでさえ状況がわからないというのに、いつまでもこの竹の中に埋もれていては何も始まらない。
「もー、壊れてる磁石なんて渡さないでよねー。やる気あるのかなー」
実のところ、コンパスが壊れているわけではない。
この竹林は幻想郷に存在する迷いの竹林に酷似している。
一度迷い込めば「人を幸せにする程度の能力」を持った兎にでも出会わない限り人の身では二度と出れないといわれている竹林、その力はあらゆる方向感覚を狂わせてしまう。
しかし逆にその状況が魅音の精神を落ち着かせることにもなっていた。
殺し合いという異常な場、本来怯えるだろうし、実際初めは恐怖を感じていた。
けれども遭難するかもしれないという、彼女にとっても十分理解できる目先の危機が現れたことによりそのことを一時保留とできたのだ。
「まいったなぁ、こんなところで行き倒れなんて洒落にならないよ」
頭を掻きながらぼやくが、その声を聞く者はいない。
どこからともなく吹いてきた風が魅音の頬を撫で、ぞくりと身を震わせる。
竹藪に遮られ月明かりは地表までほとんど届かない、数歩先すら闇に包まれているこの場は他に理由がなくともそれだけで怖い。
「ど、どうしよ……日が昇るまで大人しくしてた方がいいかな。けど、圭ちゃん達探したいし……」
自分が作った部活の仲間たち、皆もこの殺し合いとやらに連れてこられているのならば心配だ。
とはいえ、この竹林から出られなくてはどうしようもない、一度足を止めて何か手はないか考えだす。
「長いロープか何かあれば、結んで行けたんだけどなぁ……」
デイパックを開くが、食糧や水といった基本セット以外に入っていたのは結崎ひよのという人物による自作スタンガンと可愛らしい人形が一つずつ。
スタンガンは護身用の武器としては最適だが、ここから出るのには到底役に立ちそうにない。
人形の方は何故かその首にロープが縛り付けられていて、一瞬魅音を怯ませる。
すぐさま立ち直り、そのロープを解いてみるが50cm程度では魅音の望む用途には到底足りない。
この状況を打開できる物は見つからず、溜息を吐きながら人形をぐにぐにと弄り気を紛らわせてみる。
「……人形、か」
ふと思い出したのは、ほんの数日前の事。
親戚のおもちゃ屋で行ったゲーム大会の商品として、一体の人形が圭一へと渡された。
女の子向けのその人形の扱いに圭一は困り果て、最終的にレナへと手渡されることとなる。
……その時魅音は、その人形が欲しいとは一言も言えなかった。
「はぁ……馬鹿みたい、この状況で何考えてるんだろ私」
今はそんなことを思い出している場合ではない。
そう思いながら、何故かその人形をしまう気になれずぎゅっと抱きしめる。
「圭ちゃん、大丈夫だよね……レナも、沙都子も、梨花ちゃんも、詩音も……」
自分が言うのも何だが、みんな子供とは思えないほど度胸が据わっているし、頭も回る。
例え大の大人に襲われようとも逃げ延びるだろう、それだけの確信を持てる。
ただ心配なのは、逆にその仲間達が誰かを殺したりしないか、ということ。
勿論あんな女の言うとおり殺し合う人が自分たちの中にいるとは思わない、だけど正当防衛として勢いあまって殺してしまうという可能性は十分ありえるだろう。
もしそうなった場合、詩音は……正直わからないが、圭一や沙都子などは心に大きな傷を作ってしまうだろう。
「そんなこと、絶対させない」
歯を強く食いしばり、虚空へと向かってはっきりと宣言する。
仲間達は絶対に守る、それが自分の、園崎魅音の勤めだ。
人形をデイパックの中へと戻し、今度は慎重に一歩一歩深く踏み込みながら歩いて行く。
一歩進む毎に振りかえり自分の足跡とその方向を確認、時間はかかるがこれで確実に一方向へと進めるはずだ。
「待っててよね、圭ちゃん、レナ……」
力強い呟きと共に拳を握る。
その拳に込められた力はとても、
そう、とても……
弱々しい物だった。
【E-3 竹林/1日目 深夜】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×1、ひよの特製スタンガン@スパイラル~推理の絆~、蓬莱人形@東方
【状態】:健康
【思考・行動】
1:竹林から脱出
2:部活の仲間達を守る