現代医学的鍼灸治療

針灸師および鍼灸ファンの医師向けに、現代医学的知見に基づいた鍼灸治療の概要を説明する。

シンスプリントの針灸治療

2017-07-11 | 上下肢症状

1.シンスプリント  Shin sprints(脛骨過労性骨膜炎) の概念
  
Shinは向こう脛(すね)、Sprintsは短距離走の意味。短距離走を中心とするスポーツ選手が、運動中に生じやすい。長期にわたって繰り返し下腿の特定筋に負荷がかかることで、筋肉が損傷し傷んた状態。本疾患と疲労性骨折とは鑑別が必要。脛骨のある部分が痛むのは共通だが、骨折ので は痛む部位は限局性で強い痛みが特徴。シンスプリントの痛みはやや広く痛みの程度も強くない。 

シンスプリントは、後内側型と前外側型に大別される。前者の方が高頻度。単にシンスプリントといった場合、後内側型シンスプリントのこという。
 
シンスプリント患者は運動選手であることが多い。日常動作で痛みなく過ごせればよいとするレベルではなく、障害前と同じパフォーマンスの運動ができることを希望している。走っても痛みが出ない。全力で走っても痛みが戻らない。全力で走っても痛みが出そうな怖さがないといった高いゴール設定になる。 

2.後内側型シンスプリント

1)後内側型シンスプリントの病態生理

下腿後面の筋群(ヒラメ筋内側頭・長母趾屈筋・長趾屈筋・後脛骨筋で中心は後脛骨筋)の筋膜牽引痛。増悪するとさらに脛骨の骨膜に微細傷をきたした状態にまで拡大。
上記筋は、脛骨後部に起始を、足後部に停止をもつので、足関節を伸展させる共通の役割をもつ。これらの筋肉は走る・歩く・ジャンプする時によく使われる。
   
痛みはまず、脛骨内縁の下1/3ほどに出現し、悪化すると痛みの範囲が脛骨内縁の中1/3にまで長くなるという。ここで下腿屈筋をみると、脛骨内縁下1/3の範囲には筋は骨に付着していないので、筋膜痛だろうと思われる。これらの下腿屈筋群の骨付着部は、中1/3~上1/3なので、痛みがこの範囲に及べば、骨膜牽引痛と捉えたらよいだろう。
 

 

 

 

2)後内側型シンスプリントの針灸治療

片山憲史らの針治療の検討報告では、14名20肢(平均罹病期間4.6週)に針灸を行い、平均治療期間28日、平均治療回数 4.4回を要した。
  
①脛骨後内側の下1/3の痛み
       
仰臥位で下腿屈筋の深部筋(ヒラメ筋内側頭・長母趾屈筋・長趾屈筋・後脛骨筋)に対して刺針し、置針した状態で足関節屈伸の自動運動を行わせる。下腿内側の脛骨内縁の下付近の圧痛点(三陰交あたり)を刺入点とする。2寸針を用い、腓骨下縁に向けて直刺深刺。 
  
②脛骨内縁中央あたりまで拡大した痛み
上記方法に加え、仰臥位で脛骨内縁の地機あたりの圧痛点を刺入点とする。2~3寸針を使って、腓骨下端方向に向けて直刺深刺。脛骨内縁中央あたりの痛みは、筋の骨牽引痛なので、脛骨後内側の下1/3のみの痛みと比べて、治療効果は劣る。 

 

 

 

3)運動療法
    
踏み台の上に立たせる。その際、踵を踏み台に置き、足の前半分は踏み板の外に置いた姿勢にする。膝を伸ばした状態で、足関節の底屈・背屈運動を大きな動きで30秒間にできるだけ速く行わせる。30秒間休んだ後、両膝45度屈曲位で上記同様30秒間実施。
この組み合わせを1セットとして3セット実施する。セット間の休みは1~2分間とする。まずは安静。一般的に長期の安静は必要なく、痛みのない範囲での運動は可能。圧痛の状態を確認しながら徐々に運動を開始するようにする。(「シンスプリントに永久におさらばできる魔法の運動があるのだ」ギズモードジャパン YouTube 動画より)

 

 

 3.前外側型シンスプリント

1))前外側型シンスプリントの病態生理
    
すねの前面と外側の筋膜(前脛骨筋、長母趾伸筋)に牽引ストレスが作用して痛みを生じ、付着する脛骨骨面の骨膜にも牽引ストレスが作用して痛む状態。足関節背屈がしづらく  なる。前脛骨筋の障害では、脛骨前面の胃経から中封に沿って重苦しく痛むが、我慢できないほどの強い痛みになることはあまりない。後内側型シンスプリントに比べて治療に反応しやすい.

 

2)前外側型シンスプリントの針灸治療

①前脛骨筋への刺針

下腿前面の胃経ライン上の圧痛を探し、深刺し前脛骨筋中に刺入する。足三里~豊隆あたりに反応があることが多い。そのままゆっくりと徐々に足関節背屈の自動運動を行わせる。急な関節背屈運動では深腓骨神経の針響きは非常に強くなり、針体も曲がりやすい。


②長母趾伸筋刺針

足関節背面には、3本の腱を触知する。内側から外側に向けて、前脛骨筋腱・長母趾伸筋腱・長趾伸筋腱がそれである。足関節背面から2寸上方(脳清穴)に脛骨を触知し、その外   方にある長母趾伸筋腱を刺入点とする。刺針方向は腓骨方向に45度斜刺。置針したまま、母趾の背屈自動運動をゆっくりと少しづつ行わせると、刺針部に針響を与えることができる。

 

 

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