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芸文「フィガロの結婚」~庭師は見た!~

2015年06月07日 | 舞台
兵庫県立芸術文化センター 大ホール 3階3LA列16番 ¥3,000

指揮・総監督:井上道義
演出:野田秀樹

芸文HP「フィガロの結婚」
ぶらあぼ

面白かったですよ。色々と小ネタがちりばめられて飽きない演出で。ちょっとやり過ぎ・・・とも思ったけど。
ただ、レチタティーヴォが一部セリフになっていたり、「庭師」が場面説明したり・・・かなり楽譜から離れたものになってしまっているのに、オペラ「フィガロの結婚」と言ってしまっていいのか?というのは疑問。

「新演出」というより「新解釈」。
そもそも、たいていの場合どこで上演されているものでも(新国立等の再演を除いて)「新演出」じゃないですかねぇ?

日本語・イタリア語が入り混じっていたけど、やっぱり日本語だと違和感が先に来てしまう。上手く作ってあるけど、言葉の持ってるリズムも音楽の一部だからねぇ。
実際、日本語で歌われたところは歌として印象に残ってないし。
イタリア語で歌われていた部分は今作品オリジナルの日本語訳が字幕で出ていたけど、良く知っている曲はほとんど見てなかったし。
どうせなら日本語だけで「音楽劇」としてやった方が良かったんじゃないかしら。


歌手陣は当然海外勢に期待していたのだけど・・・・もちろん良く歌えてました。でもそれだけの印象。
日本勢の方がちゃんと演技もできるし歌も良かった気がします。日本勢は時間を掛けてワークショップをやってきたってことだし、そもそもオーディションで演技のできる人を選んだと聞いて納得。

ケルビーノを男性(カウンターテナー)で、っていう意図は外れちゃったかも。演技はダメだし、大柄で女装しても様にならないんじゃ見てても楽しくないし。もう少し可愛らしい男性だったら良かったのかも。高音がきつそうだったけど調子悪かったんでしょうか。
伯爵は淡々としていて迫力も凄味もなくて。伯爵のオーラを感じないんだなぁ。演技が淡泊ならアリアも単調。Hai gia vinta la causaはとっても楽しみにしてたんだけどな~。
伯爵夫人はもう少しマシだったけど・・・・Dove sono i bei momentiは、何というか・・・伝わりませんでした。

マルチェッリーナとスザンナの対決は「l'eta」の訳が強烈で面白すぎましたねぇ
フィガロのAprite unpo' quegli occhiは楽しかったなぁ。かなり歌い込んでるんでしょうね・・・と思ったら、演劇やミュージカルでも活躍されてる方だそうで。これはイタリア語だったけど、ほかの歌はみな日本語で歌ったんじゃなかったっけ。

フィガロとスザンナが仲直りする場面が日本語だったのも残念ポイント。
あれはやっぱりPace pace・・・で聴きたかった。

オケがもたもたしていたのか、音楽が進まないと感じるところが多かったのも残念でした。

フィナーレで伯爵夫人がスザンナの衣装から自分の衣装に着替えて出てきたのは、どうして?
これだと伯爵がスザンナだと思って追い回していたのは伯爵夫人だった、ってのが分からないなぁ。
その前に、伯爵婦人が同じドレスを2着も作ってるなんてありえないし。

最後はなぜか伯爵夫人が猟銃を伯爵の方に向けて1発ぶっ放してエンディング。でも伯爵は死ななかったんだよなぁ。あれは何だったのか????
「ハッピーエンドで終わらせたくない」という野田さんの意図があったのでしょうけど、中途半端な印象。ここまでイリュージョンやら皿回しやら、あの手この手で観客を楽しませてきたのに後味が悪くなっちゃったなぁ。

舞台上は能舞台を意識したような形のセットに和風の柄の箱が3つ。
あとは人間が長い棒やリボンなどを持って色々な形を造って場面を表現。
黒船来航の頃の長崎が舞台という設定らしい。(ってことは出張に行くのは東京じゃなくて江戸だよね・・・。)
日本人は和風な装いで、外人勢は洋装。スザンナの婚礼衣装の「帽子」が洋風ベールだったのはちょっと謎。

幕間に1階席後方からステージを観たらとても美しかった。やっぱり正面から見るように造られてるのね~と思わされました。

ステージ後方上部に大きなスクリーンで字幕を出して。これ、いつもの両サイドの字幕よりも字が大きくて見やすいし、ステージ左側・中央・右側でそれぞれ違うセリフを出せるから重唱のときも分かりやすくて良かった。でも背の高いセットだと使えないでしょうね。

オペラを全く見たことが無い芝居ファンの人が何の予習もなく見るには良い舞台だったと思う。これを見て「オペラって楽しいのね」と思ったら、それで成功だと思うし。
でもある程度この作品を知ってる人がオペラとして観るにはチときついかな・・・。

ちょいと関係が無くもない方が出ていたからチケット買ったけど、まぁ3,000円なら良いよね。
最高級席でも比較的お安いお値段で見られるのは全国共同制作で各地で公演されるからでしょう。(フェスティバルホールはかなり高い設定だったけど)
こういう形式の制作がもっと増えればいいな~とは思います。


チラッと物販を覗いたらCDをいっぱい並べてたけど・・・・
「フィガロの結婚」のCDってありましたっけ?
目に付いたのは井上さんのほか大植さん指揮のオケのCDばっかり。
フィガロのDVDはグラインドボーンのものしか見えなかったけど・・・・これだけ?
他にもっといいのがたくさんあるのに・・・。
なんかセンス無いなぁ、商機を逸してるなぁと思ってしまいました。


全国共同制作プロジェクト
モーツァルト/歌劇『フィガロの結婚』 ~庭師は見た!~新演出
(全4幕・字幕付 原語&一部日本語上演)

アルマヴィーヴァ伯爵:ナターレ・デ・カロリス
アルマヴィーヴァ伯爵夫人:テオドラ・ゲオルギュー
スザ女(スザンナ):小林沙羅
フィガ郎(フィガロ):大山大輔
ケルビーノ:マルテン・エンゲルチェズ
マルチェ里奈(マルチェリーナ):森山京子
バルト郎(ドン・バルトロ):森 雅史
走り男(バジリオ):牧川修一
狂っちゃ男(クルツィオ):三浦大喜
バルバ里奈(バルバリーナ):コロン・えりか
庭師アントニ男(アントニオ):廣川三憲
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

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2 コメント

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Unknown (きよか)
2015-06-09 20:04:30
楽しかったね。
でも家に帰って、やはり正統派のほうが心地よく
心に響いてきますね。
音楽が本当に素晴らしいのですね。
まだ、聞き飽きず、ずっと聞いて余韻にひたっていいます。ハンガリー国立もちょっと行きたくなったな。
素敵な時間をありがとうございました。

また行きましょうね (Angelina)
2015-06-10 00:08:49
音楽が語っているのだから余計な味付けは要らないのだと思います。
私も家に帰ってダーリンの出ている映像でお口直ししました。

ハンガリー国立かぁ・・・正統派っぽくていいかも。
いろいろと見比べるのもオペラの楽しみだね。

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