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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

13度目の防衛目前で・・・・・山中慎介が散った!

2017年08月16日 | ボクシング

≪ワールドプレミアムボクシング26 The REAL≫ ~京都~
【WBC世界バンタム級タイトルマッチ 12回戦】

チャンピオン                同級1位
山中慎介(帝拳) ●    TKO    〇 ルイス・ネリ(メキシコ)
            2分29秒



衝撃の結末でした。
まさかの出来事でした。

あの伝説の王者、具志堅用高氏の持つ世界タイトル13度連続防衛の記録まであと1と迫った、
WBC世界バンタム級王者、山中慎介のタイトルマッチが行われました。

山中が『神の左』と形容された左の強打で、
若く強敵である挑戦者、ルイス・ネリをマットに沈めて13度目の防衛を華やかに果たすはず。。。。。
誰もがそう思って見守った一戦でした。

しかしながら、
戦前から挑戦者のルイス・ネリに対し、
どこか危険なにおいを感じていたファンも多く、
ボクシングを深く見ている人であればあるほど、
不安を口にしていたように思います。

そういうワタシも、
そういった「世論」に圧されてネリのVTRを見てみると、
『なんだか嫌な相手だな』
ということが刷り込まれて、
何とは言えない薄い黒雲が覆ったような状態で、
試合を眺めていました。

1・2Rで見せたネリの大振りのフック。
「あれ食らったら、やばいな」
と胸がドキドキし始め、
そして山中がほぼ足を使わない状況でネリの正面に立つシーンがやけに頭の中でクローズアップされ、
『今日は打ち合いをせず、アウトボクシングに徹してカウンター狙いで行ってくれ』
と思ったりしていました。

しかし。。。。

あえてというか、
”打ち合い上等”の構えから正攻法で臨んでいったチャンプは、
若く獰猛なネリのはじけるような圧力に巻き込まれ、
台風がやってきたときのように、
まさに一気に根こそぎ持っていかれてしまいました。

4RでのTKO負け。

画面を見ていると、
直前のやり取りでは山中がうまく相手のパンチを交わし、
まだギラギラと燃えた目をしていましたので、
陣営のタオル投入のタイミングが早すぎたのは、
言われている通りだと思います。

あの4Rをしのげば、
徐々に山中がペースをつかんで逆転勝ちできた可能性も、
十分にあったように感じました。

しかし。。。

やはりボクシングでの「王座交代劇」とはこういったものなんでしょうね。
いろいろ思うところはあっても、
やはり負けてしまったという事実は残り、
長く君臨していた王座から、
静かに山中慎介は下りて行ったのでした。

今回のネリ相手に、
陣営は綿密な作戦を練っていたことは確かでしょう。

しかしながらどこか山中に、
『きっちりと倒して勝って、お客さんに喜んでもらう』
という意識が強かったのではないか、
そんな気がしています。


もともと山中は目がいいアウトボクサー。
そのたぐいまれなる運動能力を駆使した反応の良さで、
相手の攻撃を完封してしまうというところに彼の強さの源はありました。

世界初防衛戦となった2012年のビック・ダルチニアンとの試合などその真骨頂。
世界有数の強打者と言われたダルチに対して、
山中の足を使った防御はすごかった。
最後の最後まで、ダルチは山中を全くとらえきることができませんでした。

しかしながら、
その後KO防衛を重ねるごとに、
『左の強打』ばかりがもてはやされ、
【神の左】という冠詞を頂いたのを機に、
世間に『山中の左がどこで炸裂するか』ということばかりに注目が集まっていったと思います。

そして7回目の防衛戦で、
日本記録となる”6連続KO防衛”が途切れた判定勝ちの際は、
世界タイトルを防衛したにもかかわらず、
世間にはため息が漏れる……なんてこともありました。

山中自身も、
プロ中のプロですからそういった空気は敏感に感じていたのでしょう。
『プロは勝つだけではなく、お客さんを喜ばせることが必要』
と語っていた通り、
『KOにあらずば勝ちにあらず』
ということに傾倒していったように思います。


これはもともとがアウトボクシングの選手だった長谷川穂積前世界チャンピオンにも、
同じことがいえたのではないかと思います。

世間の『もっと、もっと・・・・・・』というあくなき欲の前には、
だんだん『KOのみ狙う』という戦い方を、
余儀なくされるのかもしれませんね。

【神の左】やら【KOキング】やら【激闘王】やら、
と煽りまくるマスコミを中心とした世間の空気によって、
戦い方の幅を狭くせざるを得なくなるのかもしれません、
世界チャンピオンというボクサーは。

山中選手にとって、
一昨年、昨年に2度対戦した、
”世界の超強豪”アンセルモ・モレノ選手との世界タイトルマッチも、
そんな感じでしたね。

1度目の対戦は、
お互いがお互いを警戒して自分の戦いをした、
しびれるタイトルマッチだったものの、
僅差の判定への不満やKOできなかったことへの不満が、
何かこの素晴らしい試合を「凡戦」のように扱わせてしまう空気を試合後に熟成させました。

そして第2戦。
両者ともに「自分の本来の姿よりもKOだ」と果敢に打ち合い、
両者ダウンの応酬の末、
山中選手の見事なKO勝ちで決着をつけました。

しかしこの試合の前あたりから、
山中選手の戦い方に明らかに変化が見て取れて、
今までではありえなかったような相手の鋭いパンチをもらうことが、
明らかに多くなってきたように思います。

それは年齢による衰えなのか?

いや、違うと思います。
やっぱり、世間を納得させ、唸らせる勝ち方をしなければ・・・・・という、
世界チャンピオンならではの戦い方ゆえ。。。とワタシは思います。

山中の目指していた、
あの伝説の王者・アリの『チョウのように舞い、ハチのように刺す』戦い方は、
もう戦いの選択肢の中には、
残っていなかったのかもしれません。

『打ちあって、激闘でKO勝利』
を義務付けられた末の、
この日の戦いだった・・・・・とワタシは思っています。


山中慎介選手。

敗れたとはいえ、
ワタシは「第2章」が待っているのでは?
そんな気がしてなりません。

このままでは納得して、
引退できないという思いに至るのでは?

そこに『山中ファン』としては期待しています。

長谷川穂積に続いて、
山中慎介もまた、
我々に「魂の戦い」を見せてくれるはず!
そう、思っています。(願っているといった方がいいかも)


しかし。。。。。

12回連続の世界タイトル防衛。

その金字塔には、
いささかも傷がつくものではありません。

素晴らしいチャンピオンでした。

今はただ、
まずは体と心の傷をじっくりと癒して、
未来への英気を養ってほしいと思っています。
お疲れさまでした。

そして。。。。

待っているよ、チャンプ!!!


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