Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

生前退位のお言葉について

2017-01-18 11:50:28 | よしなしごと

去年の夏に天皇陛下が、いわゆる生前退位の意向を示してからというもの、
天皇の公務の負担軽減についての有識者会議が設けられて各界の専門家が
天皇の今後の身の振りから将来の皇室のあり方についてまで活発に意見を
述べ、宮内庁もまた未曾有の発言に対して困惑するとともに、今後の皇室に
ついて現実的な対応をせざるを得なくなっている。今、日本は天皇のことで
大きく揺れていると言っても過言にはあたらない。

ただ天皇のお言葉をよくよく考えて最近ふと思ったのは、私たちは何か大きな
勘違いをしているのではないか、ということだ。天皇が言いたかったのは、
「もう歳だから引退させてね」という単純な隠居の要望ではなく、昨今の
右傾化する日本の流れが、近い将来に皇室の存廃を左右しかねないと不安を
感じたのではないか、ということだ。

おさらいだけど、 天皇の地位について日本国憲法の第1条では、天皇を
「国と国民統合の象徴」としていて、その地位を「国民の総意」に基づく、
と定めている。また「天皇は国政に関する権能を有しない」として政治的
行為を禁じている。これがどういうことか噛み砕いていうと、天皇という
存在は国民全体が「もういらないよ」と言ってしまえば、それでおしまい、
ということだ。

「天皇は国政に関する権能を有しない」のだから、皇室を無理やり存続
させるように政府に対して働きかけることはできない。もしも政府が
国民の合意の下に天皇制や皇室を廃止するために動き出したら、皇室は
何もできずに指をくわえてその様子を見ているしかなくなる。とはいえ、
国民がどうやって「皇室なんてもういらない」という意思を表して、皇室を
なくすなんてことができるのか。それが、できるんです。

皇室を今後も存続させるべきかを争点にする解散総選挙、という手段を
取れば、それができてしまう。安倍くん率いる自民党の支持率はいまだに
高く、ほぼいつも50%程度は維持している。その安倍くんが解散総選挙を
やってしまったら、まず確実にまた勝つことになるでしょう。それじゃ
なぜ安倍くんはそんな手段を取ってまで皇室を廃止させたいのか。

明仁天皇は言うまでも無く、平和主義の立場を貫いてこられた。
天皇皇后両陛下だけでなく裕ちゃんも秋ちゃんも、懸命に平和主義の
大切さを訴えてきたし、日本が平和国家としてこれからも変わらずに
あり続けることを切望している。それが、安倍くんには目の上のたんこぶ
になっている。

天皇のお言葉を読んでいると、天皇皇后両陛下が長年にわたって日本
全国を回って「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添う」
日々を続けられてきたことが容易に目に浮かぶ。そして「国民を思い、
国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもって
なし得た」天皇は、日本国民から文字通り深い信頼を得られたといえる
と思う。その天皇が、安倍くんとは真逆の一貫した平和主義者であるの
だから、安倍くんとしてはおもしろくないだろう。

日本を戦争できる国にするために着々と外堀を埋めている安部くんに
とって、一刻も早くいなくなってほしいのが天皇であり皇室のはず。
「彼らさえ消えてしまえば、もう邪魔者はいなくなる」とまで考えて
いるかどうかはわからないけど、日本全体を戦争ムード一色にするには、
いないにこしたことはない。

常に「国民に対する理解を深め」てきた天皇にあっては、おそらく
どこかからそういう不穏な話を聞きつけていたのではないだろうか。
しかも、そんな安倍くんを支持する日本人が半分近くもいるという。
これまで日本のために文字通り身を粉にして働き続けてきた自分の
努力は、いったい何だったのか。そういうことを考えながら天皇の
お言葉を読み直すと、こんな意味に感じられてしまう。

「僕は天皇に即位してから28年、日本国民の生活に溶け込むように、
そして平和な日本がいつまでも続くように、ずっとがんばってきたよ。
でも、僕の努力と誠意を踏みにじる昨今の日本の右傾化のせいで、
もうやる気がうせちゃった。だから僕はこのへんで引退させてもらうけど、
これまで僕がこんなにがんばってきたことを、どうか評価してほしい。
そして、皇室をこれからも存続させてくれるように、サポートしてね。
あと、僕が死ぬと1年間は皇室がてんてこまいになってあれこれ忙殺
されてしまうので、その隙をついて解散総選挙なんかされたらお手上げだ。
だから、僕が死んでも日本を戦争できる国にするような風潮には乗らない
ようにしてね」

そう考えて読むと、天皇のあのお言葉の意味が違って聞こえるし、
「さもありなん」と納得もできてしまう。で、もしそうだとすると、
有識者会議の出そうとしている結論(一代限りの退位を認める)は、
見当違いなのではないだろうか。それとも、明仁天皇だけについては
退位という形で有終の美を飾らせてあげて、それ以降は頃合を見て
皇室を廃止させてしまおう、という計画なんだろうか(特に天皇
崩御が狙いどき)。だって、今後どの天皇だって年を取ればいつかは
死ぬのだから、一代限りなんて条件は無意味でしょう。それとも、
今後は天皇がある程度の年齢になったら定年退職させるとでも?

そう考えると、今後の天皇家の動きがより面白くなってくる。