映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
お勧めできるか否かの気持を総合評価で示しています。

映画寸評「ハドソン川の奇跡」

2016年10月19日 09時56分33秒 | 映画寸評

「ハドソン川の奇跡」(2016年 米国)
監督 クリント・イーストウッド

ハッピーな事件の再現が主眼か
(以下、ネタばらし有り)

2009年1月にニューヨーク・ラガーディア空港から離陸直後にエンジン停止となり、ハドソン川に不時着して155人全員が生還し「ハドソン川の奇跡」と称えられた実話の裏の話を描いた映画。

鳥がぶつかるという不慮の事故から生還したベテラン機長・サリー(トム・ハンクス)は、世間からはヒーロー扱いされるが、国家運輸安全委員会から「川に墜落させるよりラガーディア空港に引き返すべきだったのではないか」として査問を受けることになる。その経過が描かれるのだが、素人の常識的感想だと、国家運輸安全委員会の言い分は単なる安っぽい言いがかりにしか聞こえない。現にその後のニューヨーク市民の反応もサリーを称える声が圧倒的なようである。このような話がドラマになるのかと思えるが、イーストウッド監督のさすがの作劇で、結構見ごたえのあるものになっている。

映画は、不時着に至るまでの機内の様子や、機長の日常や家族、機長と副機長(アーロン・エーカット)のやりとり、調査委員会の査問の内容などを交互に淡々と描いてラストの公聴会につなげていく。公聴会において、コンピューターを使ったシミュレーションでは調査委員会の言うように空港に着陸できることが証明されるのだが、サリーは方法を決断するための時間が必要だと主張し、それをくつがえす。ボイスレコーダーに残されたやりとりも再現され、結局あっさりとサリーの正当性が認められる。瞬時の不慮の出来事に対し、判断する時間が必要なのは自明の理であり、調査委員会はそのようなことも判っていなかったのか、また、公聴会の時までボイスレコーダーも聴いていなかったのかと、あきれるようなお粗末さである。したがって、法廷ものにある原告・被告のサスペンスフルな応酬など期待すべくもなく、最初に感じたように、単なるいちゃもんの話として終わりである。

ニューヨークに於いて飛行機の墜落というと、どうしても「9.11」のテロが思い出され、市民はいまだにそのトラウマから完全に自由ではないように思える。ハドソン川の不時着は、その対極にあるもので、ハリーの言うように、乗員・乗客、管制官、救助に向かった船舶・救助隊、その他それぞれの家族や市民の力が合わさった結果だと、皆の連帯感を称えてハッピーな気持ちになれるものであろう。イーストウッド監督は、調査委員会の話にことよせてその事件を再現してみせることで、その時の気分を思い起こさせ、改めて連帯感の意味を訴えているのであろうか。

総合評価 ④  [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]

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