映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

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映画寸評 「64-ロクヨン - 前編・後編」

2016年11月07日 11時00分16秒 | 映画寸評

「64-ロクヨン- 前編・後編」(2016年 日本)
監督 瀬々敬久

オーバーな表現が目に付く
(以下、ネタばらし有り)

横山秀夫の「最高傑作」と宣伝されたミステリーの映画化。本作は未読ながら横山秀夫の諸作品はかなり評価しているので、期待して前編・後編を通して名画座で観たが、ちょっと期待外れであった。

一週間しかなかった昭和64年に起きて迷宮入りとなった小学生少女誘拐殺人事件から、14年後へと舞台が移る。警察庁長官の視察でこの事件の被害者・雨宮(永瀬正敏)宅訪問が予定され、事件当時の担当刑事で広報官に移動した三上(佐藤浩市)がその折衝に当たる。そこに新たな誘拐事件が起こり、そのつながりで前の事件の真相も明らかになる、という話。その中で広報室と記者クラブの緊張した関係が繰り返し描かれるのだが、前半はひき逃げ事件の加害者の匿名発表問題、後半は新たな誘拐事件についての報道協定問題がテーマである。

昭和64年の事件は事件発生から身代金受け渡し・逮捕失敗・死体発見の経過をじっくりと描き、現在では上司から難問を丸投げされた三上の苦境や、雨宮の事件当時からの憔悴した状態をからめて描いてなかなか見ごたえがある。しかし、対記者クラブ問題はどう見てもお粗末すぎる。ひき逃げ加害者が妊婦であるという理由だけで実名を伏せたり、誘拐事件では余りに無内容な警察発表等、ちょっとあり得ない話で、不信感を抱いた記者たちを納得させられないのは当たり前である。新たな誘拐事件の捜査を優先させるのはわかるが、そのためにも報道協定は必要であり、通常、刑事部長か捜査一課長が担当する記者会見をほったらかしで捜査二課長にやらせる意味が不明である。また、仮にも捜査二課長ともあろう者の記者会見が、資料の棒読みのみで、何の下調べもしていないなどということはあり得ない話であろう。無理に固執する匿名発表問題同様、記者クラブと警察の対立をオーバーに表現するためとしか思えない。

また、様々な警察小説で言われている、タテ社会としての警察組織のいやらしさはよく描かれているものの、警務部長や刑事部長などが、あれほど自己保身のみを最優先しているというのは、やはり大げさすぎるのではないか。またその上でも、難題を広報官一人に丸投げして知らん顔、というのもちょっとおかしい。広報官が失敗して破綻すれば、その責任は自ら問われるはずなのに。さらに、新たな誘拐事件は64年の犯人を追い込むためのものだが、二人の娘の不在を続けて利用して誘拐に見せるというのは、ちょっと都合よすぎる話であろう。

妻子を失った雨宮の孤独と、犯人を突き止め追い詰めるための執念、また、不条理な状況に追い込まれた三上の苦悩や、その中で真摯に職務を担当しようという誠実さはうまく表されている。永瀬正敏と佐藤浩市が好演し、広報室員の綾瀬剛や榮倉奈々もなかなか良い。新聞記者の瑛太はちょっと浮いているが、いやらしいキヤリア本部長役の椎名桔平や、実働部隊を指揮する捜査一課長役の三浦友和も好演である。これらの関係を丁寧に描いていることで観られる作品となってはいる。

それにしても、テレビドラマじゃあるまいし、ミステリーを前編・後編とは観客をなめた話である。約4時間の「愛のむきだし」などの例もあるのに、始めから1本にまとめるつもりがないようである。そのため、前編のひとつの山にしようと、匿名報道問題を無理に膨らませた感じで失敗している。この辺りを整理すれば3時間くらいには絞れると思うのだが。興行的にどうしても2本にしたいというのなら、せめて前編・後編とも同時公開にすべきであろう。

総合評価 ③ [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]

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