アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

「こころのおと」ができた理由

2017年08月03日 | ピアノ
金スマで聞いた野田あすかさんの演奏は、編集で無残に切りつなぎされていたけれど、それでも心をわしづかみにする力のある音楽であることはよくわかった。

   にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ←伝える技術があることも、伝える中身があることも重要。

あすかさんは言葉による指示に対しては「馬鹿」がつくほどの素直で真面目で、たとえば小学校のときに草むしりの時間があれば言われたとおり丁寧に丁寧にむしり続けて、チャイムが鳴っても教室に戻ってこない。先生が探しに来て怒るんだけどなんで怒られてるかわからない。だって「チャイムが鳴ったら終わり」って指示はなかったものね。

そんなに素直なら自分の気持ちにも「素直」になれたら話は早いんだけれども、気持ちから言葉への回路(言語化)はどこかで断線している。

「本当は、なにかいやなことを言われたら、私のこころもその場でズキッとしているらしいのですが、自分のこころが傷ついていることすら、そのときの私にはわかりません。
そんなときにピアノを弾くと、楽しい音を悲しい音色で弾いている私がいます。
その音色を聞いて、「私、今日はなんか、ズキッってしたのかなあ…?」と初めて思います。自分が弾くピアノの音色を聞いて初めて「あ、私、いやな気持ちなんだ」とわかるのです。ピアノが自分の気持ちを教えてくれるのです。」(「発達障害のピアニストからの手紙」より、本人の記述)

それで生活支援センターに電話をかけて職員さんに聞くと、
「あすかちゃん、利用者さんからつかみかかられそうになって、私らがあわてて止めたじゃない」
(略)
「…それってイヤなことだったの?」
「そうだよ。誰だってあんなことされたら傷つくよ」
なんてことがようやくわかるわけだ。話が遠すぎる。

ということで、あすかさんにとってのピアノは、定型発達の人にとっての言語のようなもので、言語化の回路をぶちっと切られたら、そりゃ表現欲で爆発してしまうだろうってことはわかる。それほどの強い強い思いでピアノを弾いているのだ。

しかしピアノの音が「こころのおと」として機能するようになったのはそんなに早い段階ではなく、解離障害にによる長い入院ののち、獲得したものらしい。

「小さいころから、あすかが発表会などで弾いているときのビデオがたくさんあるのですが、中学、高校のときに弾いた曲と、入院して苦しんだあとに弾いた曲を聴き比べると、まったく違うのです。
音が変わっているのです。高校時代は巧いテクニシャンが弾いているような弾き方をしていますが、入院して戻ってきてからは、別人ではないかと思うくらい、曲の流れがとても優しくなっているのです。」(「発達障害のピアニストからの手紙」より、父の記述)

変化のきっかけは、いったんどん底までいったことと、その後に田中先生との出会いがあったこと。
それまで、コンクールなどでは曲に合わせた(教えられたとおりの)音色で弾けず自分の心のありようが出てしまうのがよくないのかと思っていたところ、田中先生は、
「あなたの音のままでとても素敵よ。あなたはあなたのままでいいのよ!」
といってくれて、
「それまでは、自分を否定したり、殺したり、だめだとあきらめたりすることしか考えられなかった私にとって、「私は私でいい」というのは、救いの光のような、すごくびっくりする考え方でした。」

それでだんだん、
「あれ? なんか、前より自分の音が好きだな」
となり、初めてピアノと友だちになれた、と。
「田中先生と会う前までは、音楽は好きでしたが、ピアノを好きだと思ったことはありませんでした。
ただ、お母さんやピアノの先生から言われて、ほかにすることもなかったから弾いていた、それだけでした。」

ピアノを、自分の心を表現する声として獲得したあすかさんにとって、その切実さは別格。そんなこんなのピアノの音色なので、それはもう人の心にもずっしりと染み込んできてわしづかみにしてしまう。もちろん、そうやって開花した土台は、ピアノが好きでなかったころの先生が叩き込んでくれたものではあるけれども。

あすかさんの音色は、物理的にいわゆるきれいな音色というものとはちょっと違う。叩き弾きもかなり残っていて、ノイジーなところもあるけれど、音楽として聞こえるときにはきれいで優しく、そして心に直接伝わる力強さを持っている。

でもそのすばらしい「こころのおと」ができあがった成り行きを聞いてしまうと、重すぎてむしろ心が痛い…とつい感じてしまう…それはあすかさんの本意ではないだろうけど。おびただしいリスカの跡、パニックで飛び降りたときの粉砕骨折でペダルが踏めなくなった右足。(つづく)


にほんブログ村 ピアノ  ←ぽちっと応援お願いします
にほんブログ村 ヴァイオリン ←こちらでも
にほんブログ村 中高一貫教育


「はじめての中学受験 第一志望合格のためにやってよかった5つのこと~アンダンテのだんだんと中受日記完結編」ダイヤモンド社 ←またろうがイラストを描いた本(^^)


「発達障害グレーゾーン まったり息子の成長日記」ダイヤモンド社
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 実はゆっくりなのも弾きにく... | トップ | 凸凹の凹をとことんがんばる... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ピアノ」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。