ANANDA BHAVAN 人生の芯

ヨガを通じた哲学日記

クリヤ・ヨガ

2011年08月19日 | 日記
クリヤ・ヨガ

 近代インドのヨガの聖者であるラヒリ・マハサヤ(1828〜1895)は33才の時、つまり1861年の秋にヒマラヤの山中で初めてババジに出会い、出会いの翌早朝にババジからクリヤ・ヨガの技術を伝授されました。ラヒリ・マハサヤは本名をシャーマ・チャラン・ラヒリと言い、マハサヤとは「偉大な内面者」と言った意味の呼び名です。マハトマ・ガンジーのマハトマは「偉大な魂」と言う意味の呼び名ですから、インドではそう言った呼び名が一般的に使われるのでしょう。

 ババジは固有名詞では有りません。ババとは「お爺様」とか「お父様」と言った意味の敬語で、ジは日本 語でそのまま「様」と言う意味です。ババジは神の化身(アバタラ)ですから、人間としてはラヒリ・マハサヤがクリヤ・ヨガの元祖と言う事になります。インドでも長い間忘れ去られていたクリヤ・ヨガをババジがラヒリ・マハサヤに伝授して、クリヤ・ヨガの復興をラヒリ・マハサヤに託したと言う訳です。

 ラヒリ・マハサヤはクリヤ・ヨガをスリ・ユクテスワルジに伝授し、ユクテスワルジはパラマハンサ・ヨガナンダ(本名ムクンダ・ラル・ゴーシュ)に伝授しました。ヨガナンダはユクテスワルジの要請でヨガを教える為にアメリカに渡ります。後年ヨガナンダがインドへ帰省した際に、ヨガナンダはマハトマ・ガンジーにクリヤ・ヨガの技術を伝授しています。

 さて、ヨガナンダが実弟のヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュ先生にクリヤ・ヨガを伝授したか、また、ヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュ先生が弟子のジバナンダ・ゴーシュ先生にクリヤ・ヨガを伝授したかは良く分かりません。ジバナンダ・ゴーシュ先生は私のヨガのグル(先生)です。

 私はヨガの練習を30才の時に始めましたが、以来30数年の間、クリヤ・ヨガとはどういったものか分かりませんでした。日本ゴーシュ・ヨガ道場で私が教わったのはハタ・ヨガだったからです。ヨガナンダの著書に「ヨガ行者の一生」が有りますが、その本の中には度々クリヤ・ヨガと言う言葉は出て来ますが、クリヤ・ヨガについての体系的な説明は出て来ません。

 佐保田鶴治さんによれば、インドでヨガと呼ばれる行法や思想は余りに多種多様で、それを一本化するのは大変難しいとしたうえで、主だったヨガの流派を(1)ラージャ・ヨガ、(2)ハタ・ヨガ、(3)カルマ・ヨガ、(4)バクティ・ヨガ、(5)ジュニャーナ・ヨガ、(6)マントラ・ヨガ、等として挙げています。そしてそこにクリヤ・ヨガという名称は見当たりません。

 ここでパタンジャリの「ヨーガ・スートラ」を思い出して見ましょう。ヨガの8段階と言って、.筌沺紛慍)、▲縫筌沺粉戒)、アサナ(坐法)、ぅ廛蕁璽淵筺璽沺閉澗)、ゥ廛薀謄ヤーハーラ(制感)、Ε瀬薀福塀乎罅法↓Д妊ヤーナ(瞑想・禅)、┘汽泪妊(解脱・三昧)、の順に修行を進めて最後のサマディ(解脱・三昧)に至るという修行法です。

 上記の.筌沺紛慍)と▲縫筌沺粉戒)の内容を復習しておきますと、.筌沺紛慍)にはアヒムサ(非暴力)、サットヤ(正直)、アステヤ(不盗)、ブラフマチャリア(禁欲)、アパリグラハ(不所得)が有り、▲縫筌沺粉戒)にはシャウチャ(清潔)、サントッシュ(知足)、タパス(苦行)、スヴァーディアーヤ(読誦)、イシュワラ・プラニダーン(神の意思に全てを委ねること)が有ります。そして上記タパスは(苦行)と訳されていますが、内容は少し違うようです。タパスには「熱」という意味があります。ですからここでは(良くない想念を焼き尽くすこと)と解釈した方が当たっているようです。嫉妬や憎悪や嫌悪や怒りや恐怖等の想念を焼き尽くす修練をするのです。

 「ヨーガ・スートラ」のお話が長くなりましたが、ここで佐保田鶴治さんの言われる、主だったヨガの流派のお話に戻りましょう。(1)ラージャ・ヨガとは「ヨーガ・スートラ」にあるヨガの8段階を修行することによってサマディ(解脱・三昧)に至る道の事です。ヨガの王道なので、ラージャ(王者の)・ヨガと言います。(2)ハタ・ヨガではヨガの8段階のうちのアサナ(坐法)とぅ廛蕁璽淵筺璽沺閉澗)を主に練習し、心身の健康と安定を得て心の純化を図ります。(3)カルマ・ヨガは日常の行いを正しくする事で心の純化を図る道です。(4)バクティ・ヨガは一心に神を信じ、神を愛する事で心の純化を図る道です。キリスト教はこのバクティ・ヨガに当たると私は思っています。(5)ジュニャーナ・ヨガは哲学のヨガです。「自分の本質とは何か、そしてそれは何処から来て何処へ行くのか」と思索を続けて解脱を図ります。(6)マントラ・ヨガはヨガのグル(先生)からいただいたマントラ(真言)を唱える習慣の中で心の純化を図ります。

 さて私はクリヤ・ヨガとはどういうものか分からずに30数年を過ごして来ました。

 (株)大明堂発行、岸本英夫著の「宗教神秘主義」という本が私の本棚に有りました。私が35才位の頃に買って、そのまま読まずにいた本です。今回たまたま読んで見ますと、その内容は「ヨーガ・スートラ」を解説したものでした。岸本英夫さん自身にヨガの練習をした様子は無く、アメリカ人のウッズ教授にマンツーマンで指導を受けて書き上げたという学問書です。

 この本で私はやっとクリヤ・ヨガの表現に出会いました。こう書いて有ります、「ヨガの修行の第1歩に当たって営むべきものに、いわゆる行作ヨガ(クリヤ・ヨガ)が有る。苦行(タパス)、読誦(スヴァーディアーヤ)、神への帰入(イシュワラ・プラニダーン)より成る、一団の行法である。これが、煩悩を微弱にして、抑滅する事を、その目的とする」。そして、「神への帰入(イシュワラ・プラニダーン)の結果として、三昧(サマディ)の成就が説かれているけれども、これには、やや、無理が有ると言わなければならない」と続きます。

 クリヤ・ヨガとはヨガの8段階の中の2番目に当たるニヤマ(勧戒)の事でした。そしてそれは煩悩を抑滅すると言うのです。そしてヨガの8段階のうちの2番目なのに、それによってサマディ(解脱・三昧)が成就されるとは一体どう言う事なのだろうか。

 パタンジャリの「ヨーガ・スートラ」にはヨガの8段階が有って、1番目から順次修行を進めて、その8番目のサマディ(解脱・三昧)でやっと解脱に至ることになっています。8段階のうちの2番目のニヤマ(勧戒)でサマディ(解脱・三昧)が成就されるとすれば、そこに矛盾が生じますね。

 パタンジャリの「ヨーガ・スートラ」が成立したのは遅くとも西暦500年以前の事です。「ヨーガ・スートラ」成立よりも以前にクリヤ・ヨガと言うものが既に別個に存在していた。そして「ヨーガ・スートラ」が編纂される時に、以前から別個に有ったクリヤ・ヨガが編入されたのだろうと岸本英夫さんは推測しています。ありそうな事ですし、それなら先程の矛盾も理解出来ます。クリヤ・ヨガによって解脱に至る方法も有ったのでしょうが、ヨガの8段階は大変優れていて、心の働きの点検も丁寧に丁寧に行う事が出来ます。

 パラマハンサ・ヨガナンダ著の「ヨガ行者の一生」の中で、ヨガナンダはクリヤ・ヨガの技術として、「身体のある部位に心を集中させる」事や「特殊な呼吸法を用いる」事を挙げていますし、また、サマディ(解脱・三昧)の有様についても述べていますので、クリヤ・ヨガはニヤマ(勧戒)を骨子とした、スケールの大きいヨガの体系だったのでしょう。

 「ヨーガ・スートラ」が成立する以前から有ったクリヤ・ヨガの技術をババジがラヒリ・マハサヤに伝授した事は、クリヤ・ヨガとはどんなものであったかが大体分かった今でも、大変に興味深い事ではあります。

 追記

 改めて佐保田鶴治さんの「ヨーガ・スートラ」を調べて見ましたら、クリヤ・ヨガについての記述は、有りました。最初の「三昧章」に続く「禅那章」の始めに、「苦行、読誦、自在神への祈念の3つを行事ヨガと言う」、「行事ヨガのねらいは、三昧の心境を発現する事と、煩悩を弱める事とにある」。そして佐保田鶴治さんの解説として、「行事ヨガ(クリヤ・ヨガ)とは日常の行事として行うヨガの事である」、「ヨーガ・スートラの立場すなわちラージャ・ヨガから言えば、ヨガの本命は、心の働きの止滅という心理的な修練にある。行事ヨガは、その心理的修練に耐えられる心理的条件を作り出す為のもので、ヨガの予備的段階に属している」とありました。

 30数年の間、うっかり読み落としていたようです。











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2 コメント

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クリヤヨガ (瑞鶴居士)
2011-10-06 14:23:44
クリヤヨガにはもちろんパタンジャリのヨーガスートラのニヤマは含まれていますが、基本的にはラージャヨーガの中のクンダリニーヨーガの超進化系です。道教やチベットヒマラヤの秘密行と原理的には同じベースですが、人の意識に作用する点ではるかに優れた行法とも言えます。達磨大師の秘密行も口伝で教わる機会があり、その後クリヤの伝授を受ける機会がありましたので生理学的、形而上学的に作用する違いを体感しました。口外禁止なので具体的なお話はあまりできませんが。クリヤについての記述をされていたのでコメントいたしました。
あなたのグルは? (Ananda Bhavan)
2011-10-07 08:58:41
瑞鶴居士様 初めてのご登場、有難う御座います。クリヤ・ヨガがクンダリニー・ヨガやチベット密教と近いとの事ですが、そうしますとクリヤ・ヨガはタントラ・ヨガで有り、またシャクティ信仰も持っているのでしょうか。

私が一番知りたいのは、あなたのグルがどなたなのかです。

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