本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

聖の青春【映画】

2016年11月30日 | 【映画】


@新宿ピカデリー

ブログで何回書いたか分かりませんが、
今年は、稀に見る、邦画の当たり年です。
その締めのつもりで鑑賞しました。

そりゃあ、良いに決まってるよね。という気持ちがあり
若干ハードルが上がりました。

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幼少期から難病を患う村山聖は、
入退院を繰り返す中で将棋と出会い、15歳で森信雄に師事する。
10年後、名人になる夢をかなえるべく上京した聖(松山ケンイチ)は
周囲に支えられながら将棋に全力を注ぎ、七段に昇段したころ、
同世代で名人のタイトルを獲得した羽生善治に激しいライバル心を抱く。
さらに将棋に没頭する聖だったが、がんが彼の体をむしばんでおり……。
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私は将棋に詳しくないので、
「3月のライオン」は好きですが、
二海堂のモデルだ言われている、という程度しか
村山聖については知りませんでした。


棋士の世界は、静かな戦場だというイメージがありますが、
狭い盤の上で、人生を賭けて闘う男たちの姿が、
本作では、静かながらに活き活きと、描かれていると思います。


難病設定については、若干どころではなく相方が共感しており
実話ベースとして、きちんと描写されているのだと思います。
しかしながら、最近流行りの『感動ポルノ』ではなく、
1人の人生の物語として、その信念の強さに焦点を当てているので
不自然なお涙頂戴感が無いのが良かったです。

ただ、正直なところ、
本作の監督の経験値なのだと思うのですが、
映画として"魅せる"テクニックや演出面が、若干拙いです。
物語を淡々と描くのは悪いことではないのだけれど、
もう少しここをこう見せたら、もっと良くなるのに!!という
残念な要素が結構あり、
勿体ないなあ、と思ってしまいました。


例えば。

相方が力説していた、羽生&村山の食事シーン。
回想でセリフを流すならば、
ここでは無音でも良かったのでは、とか。

あと、個人的にもう少しだけ、時系列とか将棋の説明が欲しかった。
ルール無知な人間をターゲットにしていないのかもしれないけど、
今、聖がどの立場で羽生さんを追っているのか、
強い、というのが、どのレベルでの強さなのか、分からないから、
2人の距離が見えにくくて、気持ちが入りにくかったかなと。

上記のような、"あと一歩"の要素を少し変えるだけで、
本作は傑作になり得たと思います。うーん、残念。


とはいえ、まったくもって出来が悪い、というわけではないので、
そこのところは、誤解なきよう。


役者陣に関しては、言うことないです。
松ケンが出来る人なのは知っていたし、
周りを固める脇役俳優陣も素晴らしかった。
特筆すべきは、東出君。
彼は、どちらかと言うと、あまり演技が上手い印象はなかったけれど、
本作では、しっかりと役作りをし、羽生さんを研究した成果が
十二分に発揮出来ていました。
彼は、主役じゃない役を重ねてで、成長していってほしいなあ。


目立った作品ではないけれど、
静かな中に優しさを備えた、人間ドラマです。

村山聖という人間が、
決してただの天才としてではなく
みっともなく、でも強い信念を持って生きた姿が
観客に伝わる、とても良い映画です。

劇場、に限らなくても、オススメです。

秘密 ―トップ・シークレット―【マンガ】

2016年11月24日 | 【マンガ】


映画公開と合わせて、
LINEマンガで公開されているのを読み、
ああこれは面白い、先が気になる、と
TSUTAYAで一気にレンタルしました。

清水玲子先生の漫画は初めて読みましたが、
15年前の作品にしては前衛的というか攻めている印象。
当時の少女漫画ではあまり見ない社会派な作品だと思います。

すごく面白かったです。
この歳になって、
夢中で一気読みできる作品に出会えるとは。

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舞台は西暦2060年の日本、
「科学警察研究所 法医第九研究室」、通称「第九」。
そこで行われる「MRI捜査」では、
死者の脳から記憶を映像として再現する事が出来るが、
解明不能な事件の真相にさえ繋がる有効な捜査手段でありながら、
世間から強い偏見と反発に晒されていた。
捜査を担当する職員たちも
、凶悪犯罪に関わる凄惨な映像と日々向き合うことで苦悩し、
心を病む者も多い。

新人の 青木 一行 は
最先端捜査を担う「第九」に強い憧れを持って配属される。
だが、死者の脳から記憶を辿り、
被害者と加害者の「秘密」を暴きだすその仕事は、
想像を絶する凄惨なものだった。

事件の捜査を通じ、
青木は尊敬する第九室長 薪 剛 が抱え持つ
「秘密」とも向き合うことになる。
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私が読んだのは、新装版です。
1巻ごとに1エピソードで区切られているので
読者にとっては非常に読みやすいです。



故人の脳の記憶を、映像化して犯罪捜査に役立てる、というのは、
一見すると、事件がすぐに解決しそうな方法ですが、
倫理観や心身的負担、を『秘密』という観点から問題提起しつつ、
ちゃんとした犯罪ドラマとして成立させています。

登場人物が、個性的且つ魅力的なので、
人間ドラマとしても面白いです。
先述したサスペンス要素とのバランスも良い。
設定の作りこみや、伏線の張り方も上手いと思います。


若干のSF要素+重めのサスペンス、という非日常展開の中に、
現代社会における問題提起をしっかり混ぜているので、
男性も含め、大人が楽しめる作品だと思います。
絵も(グロイ描写はあれど)キレイだし。

強いて言うなら、薪と青木(+鈴木?)の関係性に、
若干見え隠れするBL感が気になるくらいかな・・・。
まあ、恐らくは、薪の容姿によるものなので、
最後の方までは余り気にならないかも。




1エピソード=1事件ですが、
サスペンスにそれほど慣れていない私には、
どのエピソードにおいても、予想の斜め上をいく展開に驚かされました。
正直、テレ朝のミステリードラマ枠の中に加えたとしても
かなり出来が良い部類の話が、ほとんどだと思います。

好き、というと語弊がありますが印象的だったのは、
「2005」の篠崎佳人の事件かなあ。
着ぐるみのシーンで、ひええええ!!!てなったし。
それと、全然好きではないんだけど
「2008」の「コンビニ店員惨殺事件」は、読んでて本当にしんどかった。


全巻揃えたいけれど、
我が家の本棚、入れ変えてもさすがに限界なので、もう少し我慢。
(紙媒体が好きだけど、電子って便利だなと痛感・・・。)

でも、興味ある方にはとてもオススメです。




ちなみに余談ですが。

先述した通り、各エピソードが面白いので、
個人的には、連続ドラマにすればいいのに、と思いました。

すでに実写映画が公開した後なのですが
キャストも入れ替えで。
何故なら、生田斗真のイメージだけが極端に合わないから。
という個人的見解だけ、書いておきます。

所々で目にする映画の評価が、すこぶる悪いので
私は観ないつもりです。あしからず。


くりかえしますが、
原作は非常に面白いので、心からオススメです。

あげくの果てのカノン【マンガ】

2016年11月22日 | 【マンガ】


本屋の平積みが気になって、1巻をジャケ買いしたものの
読まずに忘れていた頃に2巻が発売。
色んなところで話題作として紹介されており、
流石に読まないのもどうかと思い、今更ながら読みました。

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地上のパティスリーで働く高月かのんは、
高校時代の片思い相手・境先輩と偶然? 再会。
相変わらず優しくてかっこいい先輩から、
誕生日を祝ってほしいといわれるも、
嬉しさとともに戸惑いを覚える。
だって先輩は、わたしだけのものじゃないから――。
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1つの物語の中に混在する
SFと、ラブコメと、ドロドロ、という要素が
一見かみ合わなそうに見えて、きちんと纏まっています。

疑問符が多い物語ではありますが、
読み進めるうちに少しずつ世界観が明かされていくストーリー運びは
非常に上手いと思います。
1巻の終わり方は、「アイアムアヒーロー」的な、気になる締め方。
いやー、2巻買っといて、良かったです。


最初の方だけ、絵がちょっと不安定ですが、
読み手に不穏な気持ちを抱かせたまま、
最後まで読ませる、そして次へつなげる求心力があると思います。
構図とかモノローグも上手。


ただまあ、三十路過ぎの私には
そのエネルギーが残っていないせいか、
はたまた、不倫という題材のせいか、
終始、共感できない話だなあ、と思いながら読みました。笑


各所で紹介されているコピーは
「メンヘラ女子に共感の嵐!!!」みたいなのが多いのだけど、
なるほど、私はメンヘラではないということか。


冒頭から暴走する、主人公・かのんの恋心。

23歳だとしたら幼いとは思うけど、
『拗らせている』という形容詞をここまで体現している主人公は珍しい。

良く言えば、一途、純粋、無垢。
悪く言えば・・・何だろうなあ。頭おかしい、は言い過ぎか(笑)。

既婚者である先輩に高校時代から片思いするも、
自意識が過剰に低すぎるからか、
脳内妄想の域を出ず、相対峙してもテンパりまくりで、
いやはや体力使う恋だなと。
恋愛の醍醐味、と言ってしまえばそうなんだろうけどね。

メンヘラな感情表現描写もさることながら、
1巻の終わりから2巻にかけて
どんどん見た目が可愛くなっていくのは、物語展開ともリンクしていて、
作者の表現力が見事だと思います。
(もちろん、画力の向上もあるだろうけど。)


そして、お相手の先輩。

飄々として、チャラい、というのが第一印象ですが、
読み進めていくうちに、その原因が分かるようになっています。

一応ネタバレなので控えますが。
私はキライですけどね、こういう人。
なので彼にも、少しばかり同情はするも共感は一切なし。


しかしながら。

1巻は、ほぼかのんと先輩の話ですが、
2巻に入り、更に明かされる別の主要人物の内面。
私はこちらの方が好きで。

これはネタバレではないので書きますが、
先輩の奥さんと、かのんの弟君。(特に奥さん。)
2人には結構共感できて、行く末が気になるから、
この先も読んでみようかなと思ったくらいです。

でも、もしかしたらこれも狙いなのかしら。
主役2人の恋路が、
どうにもこうにもならなそうに見えるので、
彼らの破局、からの展開を引っ張るための役回りなのか・・・。
というのは穿った見方かもしれないけれど。


ともあれ、この"非共感"の物語が
どう決着するのかは気になるので、
長くならない程度に追いかけようと思います。

正直、面白い作品ではありますが、
何とも形容し難い、胸糞悪さは感じるので、
人を選ぶ作品だとは思います。

気になる人は是非。

ミュージアム【映画】

2016年11月15日 | 【映画】


@新宿ピカデリー

私の悪い癖のひとつに、
映画ファンを自称しておきながら、
原作を鑑賞前に読んでしまう、というのがあります。

どちらに先に触れるべきか、というのは、永遠のテーマですが、
気になったものは確認しないといられない私にとっては、
原作を先に、というのが、今までの流れなので、
それはもう仕方ないのです。

そんな訳で、本作も映画製作情報公開後に、
原作を読みました。

たくさん文句があります。

ネタバレありきで書いてますので、
これから観る人は、読まない方が良いですよ。

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現場に謎のメモが残される猟奇殺人事件が矢継ぎ早に発生するが、
その事件は雨が降る日のみ起こっていた。
一連の事件の関連性を察知した沢村久志刑事(小栗旬)は、
自分の妻子が狙われていることを知る。
やがて、カエルのマスクをかぶったカエル男の存在が浮かび上がり、
犯人に近づいていく沢村だったが、
カエル男の仕組んだわなにはめられ窮地に陥り……。
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とりあえず、原作漫画はとても面白いです。

ストーリーもよく作り込んであるし、
読者への見せ方とか、騙し方とか、
二転三転する展開も非常に秀逸でした。
面白くて、一気に読みました。

そして、ああ、このまま映画化すれば、
大きな失敗はないだろう、とも思いました。



なんでかなー。
ホント、なんでかなー。

なんで、そのまま、映像化しなかったのかなーーーーーー。



キホンの展開は同じですが、
映画では、映像として派手に見せるための演出を
いくつか加えています。

そしてそれが、悉く失敗しています。

原作も、面白いとはいえ完璧ではないので、
ツッコミどころはあるんですが、
映画のツッコミどころは、それを補修するどころか
上乗せしておかしなことになっている印象。

ホント、どうしてこうなった・・・、としか。


私の中での、ツッコミポイントは、大きく3つです。

1.過剰演技。

これは俳優陣のせいではないと思います。

小栗旬は抑えた演技も出来る俳優だと思ってます。
置かれた状況から、込み上げる怒りを表現するにしても
あのヒステリックさは、無い。
演出が酷いです。

緩急、て知ってる???
終始あの調子でやられたら、観客は萎えます。


特に最後の対決シーン。クライマックス。

ただでさえ、犯人がイカレてて、テンション高めなのに、
主人公・犯人・奥さん・子供、全員の息の荒さが、もう合唱コンクールかよ、てくらいに重なって、
「うるっさい・・・」と思わず出てしまった私の声が、
全然周りに聞こえないくらいでした。ある意味感謝だよほんと。


2.完全不要なオリジナル要素。

映像化に当たり、オリジナル展開とか、結末を変えるというのは、
「デスノート」の成功例もあることだし、個人的にはありだと思います。

ただ、どんな展開においても、ちゃんと理由は必要で、
必然性を伴わない改変というのは、
ただの思い付きでしかなく、物語の中に違和感しか残しません。


本作には、映画オリジナル要素がいくつかあります。

上手く活かせば、原作と異なる面白い展開に持っていけたはずですが、
思いついた要素をとりあえず入れてみた、という印象で、
結果的に、アレ必要だったかな?という感じに終わっています。
更に言うと、物語展開上のツッコミどころも増やしています。

個人的には、光線過敏症を心因性、と改変したのが
必要だったかどうか、非常に、謎。
先天性だからこそ、抱えていた闇だったのでは?と思ったし、
謎の兄妹設定も相まって、
ただでさえ、描かれていない(これも問題)カエル男の過去が
見えない分も含めて、一気に軽く、薄くなっている気がします。


こんなに出来が良い原作があるのに、
どうして不要なオリジナル要素を入れたがるかなあ。

教科書持ち込みOKな試験で、
間違った自分の解釈を付け足した結果、
減点になっちゃった、て感じでしょうか。


3.カエル男の正体

原作でも、同じようなタイミングで明かされる犯人の正体ですが、
最初から、妻夫木が演じるという触れこみは、
はっきり言って最悪です。


せっかくマスクで顔を隠して、ボイスチェンジャーまで使って、
得体の知れない不気味さが、観客の恐怖を煽り、
物語の展開上、これが誰だか分からないからこそ、目が離せなくなる。

はず、なのに。

しかも、映像でも、ずっと顔を隠しているにも関わらず。


最初からカエル男=妻夫木、だと分かってしまってることで、
観客が得られるはずの上記要素が一切得られず、ミステリーとしての面白みが損なわれています。

せめて公開初日まで、情報は隠すべきだった。

妻夫木は、この役をすごく頑張っていたし、
例え、公開後に正体を明かしたとしても、
彼の今回の演技の評価は、絶対に変わらないと思います。
それどころか、評価が後追いとなって、興行が伸びる要因にもなり得たはず。

・・・初動の数字がそんなに大事ですかね。

言葉が乱暴ですが、完全に宣伝担当がアホです。



とまあ、正直あまり良い点が思い当たらない作品でした。


これはあくまで個人的な感想ですし、
演技については、(過剰さを除けば)特に悪くないと思うので、
俳優陣のファンであれば見る価値ありと思います。

(ただ、これもあくまでも個人的にですが、
正直、妻夫木に関しては、頑張ってはいたけど、
今年、殺人犯の演技が達者な役者が多過ぎたので、
彼らと比較するとどうしても劣るとは思います。)

オススメはしませんが、気になるのであれば劇場で。
RとかPGとか、入るほど、エグくもないと思います。
(が、お前は普通の感覚ではない、と相方に言われたので、
自信が無い方は、あまり信じないで下さい・・・。)


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すみません。
長々書きましたが、
もう少し余談を続けます。

さて、ここで大友啓史監督作品のラインナップを見てみましょう。

ハゲタカ(2009)
るろうに剣心(2012)
プラチナデータ(2012)
るろうに剣心 京都大火編(2014)
るろうに剣心 伝説の最期編(2014)
秘密 THE TOP SECRET(2016)


オリジナルは無いのかよ、というのはさておき。

話題作揃いですが、
興行的には当たっていても、
作品の出来としては、
正直、当たっている印象がないです。


ハゲタカはドラマ延長ですし、評価高い記憶があります。

観ていない作品を酷評するつもりはありませんが、
最近「秘密」の原作を読み、これが非常に面白かったので(別記事書きます)、
Yahoo映画の評価を見て、映画観るのは止めました。

正直「るろうに剣心」は、俳優陣とアクションスタッフに助けられたけど、
個人的には(特に最終作は)、出来が良いとは言えません。

今回「ミュージアム」は大丈夫だろうと思っていたのですが、
これもまた、期待を大きく下回る結果になりました。


そして次回作、私が人生で最も好きな作品の1つである「3月のライオン」です。
キャストにハズレが無く、正直期待しかありません。

公開までに、期待値をなるべくなるべく抑えるようにすると共に、
こんだけ揃えた優秀な俳優陣を無駄に使ってくれたらどうしてくれようか、と
ある意味、楽しみに、公開を待ちたいと思います。