@新宿ピカデリー
私の悪い癖のひとつに、
映画ファンを自称しておきながら、
原作を鑑賞前に読んでしまう、というのがあります。
どちらに先に触れるべきか、というのは、永遠のテーマですが、
気になったものは確認しないといられない私にとっては、
原作を先に、というのが、今までの流れなので、
それはもう仕方ないのです。
そんな訳で、本作も映画製作情報公開後に、
原作を読みました。
たくさん文句があります。
ネタバレありきで書いてますので、
これから観る人は、読まない方が良いですよ。
--------------------------------------------
現場に謎のメモが残される猟奇殺人事件が矢継ぎ早に発生するが、
その事件は雨が降る日のみ起こっていた。
一連の事件の関連性を察知した沢村久志刑事(小栗旬)は、
自分の妻子が狙われていることを知る。
やがて、カエルのマスクをかぶったカエル男の存在が浮かび上がり、
犯人に近づいていく沢村だったが、
カエル男の仕組んだわなにはめられ窮地に陥り……。
--------------------------------------------
とりあえず、原作漫画はとても面白いです。
ストーリーもよく作り込んであるし、
読者への見せ方とか、騙し方とか、
二転三転する展開も非常に秀逸でした。
面白くて、一気に読みました。
そして、ああ、このまま映画化すれば、
大きな失敗はないだろう、とも思いました。
なんでかなー。
ホント、なんでかなー。
なんで、そのまま、映像化しなかったのかなーーーーーー。
キホンの展開は同じですが、
映画では、映像として派手に見せるための演出を
いくつか加えています。
そしてそれが、悉く失敗しています。
原作も、面白いとはいえ完璧ではないので、
ツッコミどころはあるんですが、
映画のツッコミどころは、それを補修するどころか
上乗せしておかしなことになっている印象。
ホント、どうしてこうなった・・・、としか。
私の中での、ツッコミポイントは、大きく3つです。
1.過剰演技。
これは俳優陣のせいではないと思います。
小栗旬は抑えた演技も出来る俳優だと思ってます。
置かれた状況から、込み上げる怒りを表現するにしても
あのヒステリックさは、無い。
演出が酷いです。
緩急、て知ってる???
終始あの調子でやられたら、観客は萎えます。
特に最後の対決シーン。クライマックス。
ただでさえ、犯人がイカレてて、テンション高めなのに、
主人公・犯人・奥さん・子供、全員の息の荒さが、もう合唱コンクールかよ、てくらいに重なって、
「うるっさい・・・」と思わず出てしまった私の声が、
全然周りに聞こえないくらいでした。ある意味感謝だよほんと。
2.完全不要なオリジナル要素。
映像化に当たり、オリジナル展開とか、結末を変えるというのは、
「デスノート」の成功例もあることだし、個人的にはありだと思います。
ただ、どんな展開においても、ちゃんと理由は必要で、
必然性を伴わない改変というのは、
ただの思い付きでしかなく、物語の中に違和感しか残しません。
本作には、映画オリジナル要素がいくつかあります。
上手く活かせば、原作と異なる面白い展開に持っていけたはずですが、
思いついた要素をとりあえず入れてみた、という印象で、
結果的に、アレ必要だったかな?という感じに終わっています。
更に言うと、物語展開上のツッコミどころも増やしています。
個人的には、光線過敏症を心因性、と改変したのが
必要だったかどうか、非常に、謎。
先天性だからこそ、抱えていた闇だったのでは?と思ったし、
謎の兄妹設定も相まって、
ただでさえ、描かれていない(これも問題)カエル男の過去が
見えない分も含めて、一気に軽く、薄くなっている気がします。
こんなに出来が良い原作があるのに、
どうして不要なオリジナル要素を入れたがるかなあ。
教科書持ち込みOKな試験で、
間違った自分の解釈を付け足した結果、
減点になっちゃった、て感じでしょうか。
3.カエル男の正体
原作でも、同じようなタイミングで明かされる犯人の正体ですが、
最初から、妻夫木が演じるという触れこみは、
はっきり言って
最悪です。
せっかくマスクで顔を隠して、ボイスチェンジャーまで使って、
得体の知れない不気味さが、観客の恐怖を煽り、
物語の展開上、これが誰だか分からないからこそ、目が離せなくなる。
はず、なのに。
しかも、映像でも、ずっと顔を隠しているにも関わらず。
最初からカエル男=妻夫木、だと分かってしまってることで、
観客が得られるはずの上記要素が一切得られず、ミステリーとしての面白みが損なわれています。
せめて公開初日まで、情報は隠すべきだった。
妻夫木は、この役をすごく頑張っていたし、
例え、公開後に正体を明かしたとしても、
彼の今回の演技の評価は、絶対に変わらないと思います。
それどころか、評価が後追いとなって、興行が伸びる要因にもなり得たはず。
・・・初動の数字がそんなに大事ですかね。
言葉が乱暴ですが、完全に宣伝担当がアホです。
とまあ、正直あまり良い点が思い当たらない作品でした。
これはあくまで個人的な感想ですし、
演技については、(過剰さを除けば)特に悪くないと思うので、
俳優陣のファンであれば見る価値ありと思います。
(ただ、これもあくまでも個人的にですが、
正直、妻夫木に関しては、頑張ってはいたけど、
今年、殺人犯の演技が達者な役者が多過ぎたので、
彼らと比較するとどうしても劣るとは思います。)
オススメはしませんが、気になるのであれば劇場で。
RとかPGとか、入るほど、エグくもないと思います。
(が、お前は普通の感覚ではない、と相方に言われたので、
自信が無い方は、あまり信じないで下さい・・・。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
すみません。
長々書きましたが、
もう少し余談を続けます。
さて、ここで大友啓史監督作品のラインナップを見てみましょう。
ハゲタカ(2009)
るろうに剣心(2012)
プラチナデータ(2012)
るろうに剣心 京都大火編(2014)
るろうに剣心 伝説の最期編(2014)
秘密 THE TOP SECRET(2016)
オリジナルは無いのかよ、というのはさておき。
話題作揃いですが、
興行的には当たっていても、
作品の出来としては、
正直、当たっている印象がないです。
ハゲタカはドラマ延長ですし、評価高い記憶があります。
観ていない作品を酷評するつもりはありませんが、
最近「秘密」の原作を読み、これが非常に面白かったので(別記事書きます)、
Yahoo映画の評価を見て、映画観るのは止めました。
正直「るろうに剣心」は、俳優陣とアクションスタッフに助けられたけど、
個人的には(特に最終作は)、出来が良いとは言えません。
今回「ミュージアム」は大丈夫だろうと思っていたのですが、
これもまた、期待を大きく下回る結果になりました。
そして次回作、私が人生で最も好きな作品の1つである「3月のライオン」です。
キャストにハズレが無く、正直期待しかありません。
公開までに、期待値をなるべくなるべく抑えるようにすると共に、
こんだけ揃えた優秀な俳優陣を無駄に使ってくれたらどうしてくれようか、と
ある意味、楽しみに、公開を待ちたいと思います。