本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

舞妓はレディ【映画】

2014年11月30日 | 【映画】


@スニークプレビュー試写会

だいぶ前に観ました。
確か同日に「ネブラスカ」を観たので、春ですね。

SNS投稿は上映が落ち着くまで、と控えていたら、
時間が経ちすぎて、今では記憶が薄いのですが(おい。)、
書かないのも気持ち悪いので、さらっと記録だけ。


-----------------------------------------------------
古都・京都。
お茶屋・万寿楽にある夜、
絶対に舞妓になりたいと少女・春子(上白石萌音)が押し掛けてくる。
春子は必死で頼み込むが、誰も相手にしようとしない。
ところが偶然その様子を目にした言語学者の「センセ」こと京野(長谷川博己)が、
鹿児島弁と津軽弁が混ざった彼女に関心を寄せたことから、
晴れて万寿楽の仕込み(見習い)になる春子だったが……。
-----------------------------------------------------


「マイ・フェア・レディ」がモチーフなのは明らかですが、
未観賞ゆえ、比較は出来ません。
なので、正直に感じたままを書きますね。


舞妓になりたい少女の成長物語ですが、
設定というか、展開が少し無理やりかな、とは思いました。
まあ、フィクションだし、ミュージカルだし、で
済んでしまうので、映画として観れば、優しい気持ちになれる作品だとは思います。

ちなみにミュージカル苦手な相方は、全然ハマらなかったらしいです。
私も、最初の歌が始まった時に、「あ、そういう映画なんだね。」と気付きましたが、
それほど抵抗は無かったです。

ただ、日本の伝統文化である舞妓に、普通のジャンルの歌、という取り合わせは、
ちょっと違和感あるかなあ、という感じでしたが。

物語の展開もベタなので、後半で明かされる真実に、
途中(いや結構序盤から?)観客は普通に気付きます。
それが良いか悪いかは分かりませんが、
私には、"今更"感に加えて、"茶番"感がちょっと鼻につきました。

そして、私の最大の違和感。
この物語は、春子の成長物語ですよね。
舞妓としてデビューし、これからどんどんキレイになっていく、という前向きなラストに、
どうして、春子の気持ち自体は変わらないのかなあ。
「マイ・フェア・レディ」未見の私が言えませんがね、
「足ながおじさん」的要素も加えたとしても、
先生は、決して褒められた人ではないんですよ。
成長した春子はそれが分かって、きっかけをくれたことに感謝はすれど、
それでも、まだ好きなのかー、というところに納得がいかなかった。
まあ、そんな弱さも受け入れる包容力を持てるくらいまでに成長した、とか、
弱い人でも、私にきっかけをくれた人だから、とか、
色々と理由は付けられますが、
客観的に見ると、それってダメ女の典型ですよ。
舞妓として成長したはずの春子が、人間的には成長できていない、と感じてしまい、
いささか残念に思いました。


前述した最大の違和感のおかげで、
何だか凄く、納得いかない映画になってしまい、
私の中での評価はあまり高くありません。
何となーく見るには悪くないし、そこそこ楽しめるとは思いますが、
好みにもよるかな、という感じ。


キャストは申し分ないと思います。
主役の上白石萌音ちゃんは、デビュー当初の不慣れさと、
撮影を重ねるうちに出てきた安定感がマッチしていたし、歌も上手かった。
ヒロインとしては十分な存在感でした。
長谷川博己も適当っぷりが板についていたし、
個人的には、濱田岳が良かったかなと。
草刈民代や、田畑智子も、安定の存在感でした。
ただ、竹中直人はやりすぎ。
いつも思うんですが、この人とても良い俳優さんなのにキワモノばかりな気が。
キワモノ出来る人が少ないのは分かるんだけど、
俳優の良さを殺し、挙句映画のジャマになるくらいの個性なら不要、というのが私の持論です。
(最近だと、香川照之とか、堺雅人。2人とも好きなので、余計に危惧してます。)

色々と書きましたが、もうあまり上映していないと思うので、
私の感想はスルーで構いません。
「shall we ダンス?」が好きな人にはオススメ、というレビューを見たので、
自身の好みと照らし合わせての観賞をお勧めします。

オオカミは嘘をつく【映画】

2014年11月25日 | 【映画】


@ヒューマントラストシネマ有楽町


「5時に夢中」で紹介されていたのが気になり初日に行って来ました。
都内だと、有楽町でしかやってないので要注意。

ちなみに、このブログは覚書なので、今回は特にネタバレ気にせず書きます
観ることを決めている人は、絶対に読まないでください。
てか、これ観たいなと思っている人は、チラシやポスターさえも読まないで、
早々に観に行った方が良いかと思います。

-------------------------------------------
イスラエルのとある森で、少女がむごたらしく
暴行された果てに殺される事件が起きる。
その容疑者として浮かび上がったのは、
中学校で宗教学を教えているドロール(ロテム・ケイナン)。
刑事のミッキ(リオル・アシュケナージ)が責任者として
彼の尋問にあたるものの、証拠がなく釈放されてしまう。
さらに行き過ぎた取り調べが何者かによって録画され、
動画サイトにアップされてしまったことで
ミッキは交通課に異動になってしまう。
しかし、ミッキはドロールが犯人だと思っていて……。
-------------------------------------------



『衝撃の結末!!』という謳い文句って何とかならないですかね…。
これのおかげで身構えてしまい、邪推しながら観てしまうので、
オチでビックリできないことが最近多いのですよ。

何も考えずに見ればいいのに、というご意見ももっともですが、
ミステリー・サスペンスなどは、推理も楽しみ方の1つだとも思うので複雑です。

作品自体はスピード感も緊張感もあり、非常にテンポはいいです。
次に何が起こるかわからない、展開が予想できない空気感もとても良い。
ただ、前述した「衝撃」のオチは、それほど衝撃ではなかったというのが
上げすぎた期待値分ガッカリする人もいるかもな、と。
現在のYahoo映画の評価はあまり高くないので、
そこまで期待しないで観た方が楽しめるかなとは思います。


イスラエル映画は初めて観ましたが、やはり中東の方は顔を見分けるのが難しい。
(勝手な言い分なのは重々承知です。)
帰りに相方と、この人はこうで、この人はこっちで、と
相関関係を確認し合わないといけなかった。
多分、外国の方が日本映画を観て、同じように思うこともあるんじゃないかなあ。。



さて、本筋についてです。

残虐な少女殺人事件の容疑者として目星をつけられた善人そうな教師と、
彼を追い詰めようとする荒っぽい刑事と、
娘を殺されて狂気を帯びた父親が、メインの登場人物です。

教師が拉致されて刑事からの拷問、釈放されたものの、紆余曲折あり、
また拉致されて今度は父親からの復讐まがいの拷問、という話です。
そして、最後に待ち受ける衝撃(?)のオチ。


まずは、各登場人物目線で説明していきますね。

刑事からですが、正義感というよりは、
どちらかというと荒々しさを売りにしている暴力的な刑事。
思い込みが激しいため、目撃証言が出た教師について、犯人だと信じて疑いません。
挙句、暴力が原因で左遷・停職にまで追い込まれたのに、
それを好機として、違法行為スレスレ(いやアウトかもな。)の捜査に及びます。

ちなみにここで、警察署長が「やりすぎるなよ」と、
暗に暴力刑事の行動を後押ししているを見ると、イスラエルの警察は
暴力を是とする風習なのか、ということも伺えますね。


次に教師。
終始穏やかで弱い印象で、拷問に対してもやられるだけ。
でも、嘘をついてるようにも見えず、一貫して「私は無実だ。知らない。」と繰り返す。
両親は亡くなり、残された犬を散歩させながら、真面目に教師として勤務している。
まあ、善人に見えますよね。
特筆すべきは『教師が犯人である』という確固たる証拠が無いということ。


最後に、被害者少女の父親。
首がない状態で発見された少女の遺体を目の当たりにして、
狂ってしまったという体なのか、全編通して不気味です。

ただただ復讐と、娘の頭を見つけることに執念を燃やし、
自分の行動の善悪などは微塵にも気にしていません。

かけてるメガネとか、マフィアかよ、という風貌です。
拷問描写に迷いがない点から、もしかしたら本当にマフィアという裏設定かもしれません。
そう考えると、警察のお偉方との知人、というセリフがあったこともあり、
イスラエル情勢の中での、闇の部分をさりげなく暗喩してるのかな、とも思いました。
(あ、これは完全に私の想像ですが。)
ただまあ、45歳という設定には、ちょっと無理がある見た目ですが。

更に追記しておくべきは、父親の父親。即ち、被害者少女の祖父。
頭のおかしい人、という順位では、本作中ぶっちぎりの1位だと思います。
息子が行っている拷問を目撃してしまい、止めるどころか乗っかって、
挙句、増長してそれを楽しんでしまう、みたいな。
彼は完全に、ブラックコメディ要員として存在しているんだろう、ということは容易に想像できます。



一般的に考えると、
残虐な犯人と思しき教師と、可哀想な被害者遺族と、正義漢の刑事、という構図になりそうなものです。
が、本作は、悪者であるはずの教師を善人に、
同情されるべき被害者を悪人に見せることで、
観客の心理を「これって冤罪じゃないか??」と上手く誘導しています。

しかも物語が進むにつれて、
悪者側はどんどん増長し、目を覆わずには居られないR18描写の応酬。
観客的には、非常に胸糞が悪い。これも心理誘導作戦の一環ですね。


そして後半の転機。
嘘の供述で時間稼ぎをする教師、盲目の被害者父、そして善意の容疑者を裏切る刑事。

この辺から、ラストの所謂"オチ"に向けて、物語は動き出し、
最後、狂気の父親がやらかしてしまった後に発覚する事象と、その後の絶望。
映画のラストカットが、それはもう非常に後味が悪い。
分かりやすい、バッドエンドです。

ここで書いておくべきは、犯人に振り回されているのは、
登場人物たちだけではなく、観客もだということ。
巧みな描写で、観客と登場人物の心理を誘導した犯人の目的は無い。
ラストでも容易に想像できますが、結果的には、典型的サイコパスだったということなんでしょうね。

話の作り方、構成が非常に上手く、見ごたえがありました。

ネタバレあり、と言いましたが、
さすがに最後のオチについては書くのは控えておきますね。



ただ、話の作り込みはとても優秀だと思うのですが、
残念な点もいくつか見受けられます。


まずは、伏線が分かりやすいため、途中でオチが見えてしまうこと。
こういった類の映画をあまり観ない人なら大丈夫ですが、
見慣れている人には、なるほど、と一瞬で理解できてしまう場面があります。
そこで気付いた人はオチを"大して衝撃でもない"と捉えてしまい、
結果的に、映画の出来もあまりよくない、と評価してしまうかもしれないですね。


あとは、途中に入るブラック・コメディ要素ですが、
ただただ胸糞が悪い中に、雑に入り込んでくるので、正直、笑うに笑えません。
例えば、「サプライズ」みたいに、
観客の気持ちが100%の悪に向かっている状態であれば、
どんな暴力描写もコントに見えてしまうので、爆笑も起こりえるんですが、
本作では、終始違和感が付きまとうので、
"可哀想""過激""ありえない"という感情ををうまく笑いに昇華できていない気がします。


あと、これは個人的な見解というか、不思議に思ったことなんですが、
何で誰も「証拠」という言葉を使わないんだろう・・・と。

日本のサスペンスでは『私がやったっていう証拠はあるの!?』と言う人は大体犯人なわけですが(笑)、
本作では、ここまで言わないもんなのか?というくらい、誰も証拠のことを言いません。
だからこそ、目撃証言を疑わずに拷問する刑事と、
Youtube流出の拷問映像から容疑者に目をつけた父親の残虐行為に、
終始違和感があるんですよね。。

その違和感が、私にオチを想像させてしまったということもあるので、
"証拠は無い"ということも、事実として描いておいて欲しかった気もします。

ただ、もしかしたら、イスラエル警察では、
証拠なし・自白のみの逮捕というのが日常茶飯事で、
そのことに対する皮肉も込められているとしたら、これはこれで成功かなとも思ったり。
知識が浅い分、その辺は想像するしかありませんが、
やはり国柄によって、色々と捉え方は変わりますね。
レッドファミリー」でも似たような感覚でしたが、他国の映画は想像するしか出来ない分、
一概に、これを秀作・駄作と言い切れないことも多い気がします。



とはいえ、最近観たサスペンス映画の中では面白かったです。
集中して物語を追える作品だと思うので、沢山の人に観て欲しいと思う反面、
変な前情報を入れない方が楽しめると思うので、宣伝が難しいですよね。

タランティーノが「今年イチ」と言ったという煽りも含め、
必要最低限の情報だけ入れて、早めに観賞をオススメします。

Yahooの評価はいまいちですが、私は面白かったので。

アイドルオンステージ(懐)。【雑談】

2014年11月24日 | 【雑談】
いまV6を聴かなくてどうするーーデビュー20周年を前にした音楽的充実期



来年がデビュー20周年ということで、
ステマ記事だといわれればそれまでですが、
それでも、長いことV6ファンをしていた私には
取上げてくれていること自体が嬉しい記事。

イノッチファンになった中学時代、
デビューが決まった時、「『V6』!?何てダサイグループ名だ・・・。」と嘆き、
その後グループ内グループ(?)名『トニセン』『カミセン』にも
「20thって何だ!!!21世紀まで持たないってことか(逆に失礼。)!!バカにすんじゃねえ!!!!」
と、意味不明に怒り狂っていた自分(アホ。)が懐かしくなりました(恥)。


ジャニ関連のニュースが出るたびに熱弁を繰り広げ、
相方にいちいち白い目で見られますが、
やはり、青春を捧げたアイドルというのは、いくつになっても感慨深いのです。
EXILEがナンボのもんじゃ。


CDを買わなくなってから久しいですが、確かに好きな曲は多かったので、
このステマ記事に乗っかって、久々にCDを借りて帰ろうかしら。
(ちなみに最初の頃のは全部実家にありますが。懐かしき8センチシングル。)



ていうか、こういう記事が出たってことは、
もしかして3枚目のベストアルバム発売するかもしれないのかな。

続報待ちたいと思います。

悲報は祭りの如く。【雑談】

2014年11月20日 | 【雑談】
>西島秀俊が結婚発表!“悲報”に女性ファン嘆き「独身の帝王たちが次々と…」



私も西島さんは大好きです。

でも別に、自分が結婚できると思ってるわけではないので、
「悲報」も半分ネタみたいなモノです(・・・よね?)。


ちなみにこういうニュースでは、別視点での親近感も沸きますね。

例えばこういうのとか。↓↓↓
>西島秀俊が結婚発表した結果 Twitterトレンドになぜか佐々木蔵之介が入る現象が発生

>「西島秀俊が結婚だそうですが大丈夫だ、まだ佐々木蔵之介がいる」
>「最後の砦は佐々木蔵之介」


世間の皆様、御目が高いですね。友達になれそうです。
でも私としては蔵之介氏にも早く結婚して欲しいくらいなのですが。

さて。
40代独身俳優、として、後者のニュースでは、
大沢たかお(46)、福山雅治(45)、竹野内豊(43)、
戸次重幸(41)、加瀬亮さん(40)が(とばっちりで)挙げられていましたが、
加瀬亮がもう40歳なのに驚きました。。。
(トツギーニョとか、どうしてここに入っているの?とは思いましたが。)


堺雅人の結婚報道で「やる気出ない。帰る。」と言っていた同僚(前職場)がいて、
西島さんに乗り換えたはずなんですが、彼女が息をしているのかが心配です。

あ、超絶余談ですが、私にとっての砦は長谷川博己(37)なので、
まだもう少し大丈夫だ、と勝手に安心しつつ、
西島さんのご結婚を勝手に祝したいと思います。

トム・アット・ザ・ファーム【映画】

2014年11月19日 | 【映画】


@シネマカリテ


ようやく観れた・・・。
去年の東京国際映画祭ラインナップ見落としてから、早1年。
わたしはロランス」で受けた衝撃もまだ鮮明な中、
若干25歳の天才・グザヴィエ・ドラン監督の新作を観ました。

「わたしはロランス」もそうだったんですが、
彼の映画は、何と言うか、脳が痺れる感覚を与えられる、
いわば麻薬的な要素があるように感じます。

さして小難しいストーリーではないのだけれど、
何とも言えない後味の悪さとか、居心地の悪さとかに、
観賞後、身体の震えが止まりませんでした。

面白いか、と言われたら「YES」とは答えられないけど、
素通りできない傑作です。

------------------------------------------------
恋人のギョームがこの世を去り、葬儀に参列するために、
彼の田舎に足を運んだトム(グザヴィエ・ドラン)。
しかし、ギョームの母はトムのことを知らず、
一方ギョームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)は
トムとギョームの関係を他言しないようにと強く言い聞かされる。
フランシスに脅されるうちに、
トムはフランシスに死んだ恋人の姿を重ね合わせるようになり……。
------------------------------------------------

複雑な物語ではありませんが、
全編通して語られる言葉が非常に少ないこともあり、
終始、観客の解釈に委ねられる部分が多いです。


ゲイの恋人を事故で亡くしたトムの、冒頭の手紙。
「愛する君を亡くした僕は、君の代わりを見つけることしか出来ない」
(すみません、うろ覚えなので、原文と違うかも。)
という言葉が物語るトムの気持ちは、トム自身だけではなく、
ギョームの母・アガットや兄のフランシスにもまた通じていて。

誰しもが、ギョームの代わりを無意識に探している。
アガットにとっての、トム。
トムにとっての、フランシス。
フランシスにとっての、トム。

全員が、おかしくなる一歩手前のところで、
ギョームの死による環境の変化に対応している様は
一見何事もないかのように見えて、非常に異様で、
それが画面からひしひしと伝わってきます。

ホラー映画でもないのに、『怖い』という感想をよく目にするのは、
これが要因のひとつかなと思いました。


ギョームと恋愛関係にあったトムですが、2人はゲイ。
それを母に知らせたくない兄フランシスは、トムに口止めをします。
激しい暴力と、鬼気迫る脅迫。
普通は、警察に駆け込んで終わりなのかもしれないけれど、
田舎の排他的な雰囲気が、無意識にトムに歯止めをかけているように見えます。

「知られたら困る」というフランシスの言葉や、
後の場面で、サラを乗せてきたタクシーが家の前まで来なかったのも、
暗にこの家が異常であることを示していました。


ギョームの葬儀後、農場に残るトムは、
DVに屈したストックホルム症候群のように見て取れますが、
それと同時に、ギョームの喪失に耐えられず、
『代わりの誰か』を求めての行動だったようにもとれます。

一方で、ギョームの兄・フランシス。
自己中心的で、暴力的で、排他的。
田舎の長男として、分かりやすくフラストレーションを抱えているという点で、
彼の気持ちもまた、理解できてしまった、私。
(もちろん暴力行為には共感は出来ませんが。)
母のためと言いながら、一方では自分のために、
トムを脅し、引き留め、圧力をかけていきます。


母アガットを含めた、非常に危うい3人のバランスは、
偽りの恋人・サラの登場によって、崩れます。

私が唯一わからなかったのは、トムがサラを呼んだ理由。
想像するしかないのだけれど、
抑圧され切っていたトムの残り少ない理性が発したSOSなのか、
キス写真のサラに対する(自分が本物の恋人だ!という)主張なのか。
ともあれ、サラに「帰らない」と主張するトムの表情がもう完全にイッちゃっていることで、
観客である私は絶望を感じました。

しかしながら、その後のサラの行動と、バー店主の話で、理性を取り戻すトム。
その後の農場からの逃走劇は、今更ではあるのだけれど、
"どうか逃げ切って・・・!"と願わずにはいられないくらい緊迫感があり、
森の中で叫ぶフランシスの懺悔に、一瞬揺らいだ(ように見えた)トムが
勇気を振り絞ってトラックを発車させる瞬間、
完全にトムの気持ちにシンクロしてしまっていて、心臓がバクバク言ってました。



何てことない話なんですよ。多分。
暴力行為での脅しから何とか逃れることの出来た青年の話です。
ホラー映画とかで、恐怖の館から逃げるそれと、作りは一緒だと思います。

ただ、心理的な恐怖ゆえに、対象が曖昧なのと、
主人公自身が、恐怖から逃げることに積極的ではないのとで、
観客も、何が怖いのか、はっきりとは分からないんです。
むしろそのこと自体がより一層恐怖感を煽っているのかな、と勝手に解釈。

ラストシーン、街まで逃れたトムが、ハンドルを握る画。
カットアウトした後もまだ、恐怖の余韻が残ってました。


もう一度言いますが、ストーリー自体は、何てことない話なのです。
ただ、画面から伝わる空気感とか、感情とかが、
あまりにも圧倒的で、心臓にダイレクトに響くというか、
冒頭書きましたが、麻薬的な作品でした。



情緒不安定なまま書き殴ったので、
観た人にしかわからない不親切な記事ですみません。
ただ1点確実なのは、グザヴィエ・ドランは天才だということですかね。

万人受けはしないかもしれないけど、私にはど真ん中でした。
彼の映画は、できるだけ漏らさずにしたいと思いました。
見逃し作品をTSUTAYAで借りようと思います。