新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

緩和ケアと在宅医療の発展を祈念いたします:小林麻央さんの訃報より

2017-06-24 05:17:45 | 医療

 

おはようございます

 

木曜日、金曜日と日本輸血細胞治療学会に参加してきました。まぁ、ポスターを見て回って、ポイントをゲットして自宅に帰りましたが。代休ですので、ここは自由にやりました。はい。

 

自宅に帰ると娘が2ヶ月の間にまた成長(体は小さいのですけど、色々できるようになってました)しておりました。自分で靴を脱いで、揃えて玄関の右隅に置いた時は感動してしまいました(まだ3歳前なので)

 

今後もこうやって元気に成長する姿を見ていけたら良いなぁと思います(見てないのですけど、時々しか)。

 

妻子のところに帰宅して、北海道に帰る前に小林麻央さんの訃報がありました。ご冥福をお祈りいたします。

 

Yahooニュースで外科の先生の記事が載っていました。僕もほぼ同感で、モルヒネなどを用いた緩和ケアは非常に重要であり、苦痛を取ってくれるということと、統計学と個人の経過は異なるということをお伝えしたいと思います。

小林麻央さん逝去に がん専門医が思うこと

https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/20170623-00072448/

 

(引用なし)

この記事ではモルヒネを痛みの緩和だけで書いていますが、モルヒネ(など)は様々な苦痛をとってくれます。使い方をうまく行えば、すごく良い薬です。

 

小林麻央さんは酸素も吸っていましたが、モルヒネは呼吸緩和にも使用できます。息苦しい、酸素が欲しい・・・という感覚もなくしてくれます。僕もモルヒネを使うことで、患者さんがSpO2 50% くらい(人によっては30%台)まではご家族と共に話す時間が上手く作れたので、ご家族にも感謝されていました。

 

在宅医療に移られて、ご家族も「その時」が来るのを分かってはいらっしゃったと思います。よく「死の受容」の過程とは言いますが、受容されていたのだとは思います。ただ、自分のことはともかく、お子さんのことを思えばどんなに辛かっただろうと、他人でしかないのに思ってしまいます。

 

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)
クリエーター情報なし
中央公論新社

 

緩和医療は「その時」が来るまでの時間をいかに有意義なものにするか、苦痛をとることでご家族とともに過ごす時間をより良いものにすることが目的だと思っています。僕たちも「完治不能」と判断した白血病や悪性リンパ腫などの緩和ケアをします。いかに時間をうまく使っていただくかを、僕たち医者はできるだけ今の状態を引き延ばし、できるだけ良い時間を作り出すことはお伝えしますが、その時間が限られていることも話はします。そして痛みや不安などの「阻害要因」をできるだけ取り除いていく。そういうものだと僕は認識しています。

 

病院では「いつ何が起こるか」という不安が家族には少ないかもしれません。モニターがついていますし、医療従事者は常にいますので。しかし、時間がより短くなったために病院に入院したのだとしたら、患者さんの「家族と過ごす時間」を奪うことになってしまいます。そういう意味では在宅医療で病院と同様のことができればより良いと思います。それは患者さんにとって・・という目線です。家族ではなくてすいません。ただ、家族のサポート体制や医療体制が出来上がれば、家族の不安や心労もある程度取り除けるかもしれません。

 

今回は病院ではなく、ご自宅でお看取りをされました。在宅というのも大変だと思いますが、病院とは違って色々できることも多いかと思います。できないこともありますが、それは在宅医療の発展とともに改善するのだろうと思います。

 

今後も緩和ケア・在宅ケアの発展とより良い医療体制の確立を祈念しております。

 

そろそろ出発準備をしないといけません。今日も1日頑張ります。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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15 コメント

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はじめまして (しおとも)
2017-06-24 12:17:36
30代の主婦です。
貧血の検索からこちらのブログにたどり着きました。
今、貧血で内科にかかっていますが医師が検査、検査であまり話を聞いてくれず、どうして良いのか困っていて色々検索していました。

原因不明の貧血。ってあるんでしょうか?
ヘモグロビンは8くらいで良くないのに、ビタミンやその他は正常だから大丈夫。なんて言われ、鉄剤も飲んでいません。

症状は目眩、吐き気があります。
検査、検査で待つばかりで何も結果出ずにちょっと焦っています。
Unknown (アンフェタミン)
2017-06-24 22:55:10
>しおともさん
こんばんは、初めまして。コメントありがとうございます。

原因不明の貧血、と言われればないとは言えませんが、基本的に貧血になる原因はあるはずです。
Hbが8前後で、症状があるのであれば原因を確認して治療をする必要があります。

ビタミン、その他が大丈夫だから症状がある貧血を放置して良いという話にはなりません。鉄剤を出していないということは、鉄欠乏性貧血ではないということでしょうか?

20代から40代の5人に1人は鉄欠乏性貧血がありますので、頻度としてはそれが一番多いことになります。他の原因検索をどこまでしたかはわかりませんが、ビタミンB12欠乏などは調べたということで良いのだろうと思います。

お手数ではありますが、他の数値の情報はわかりますでしょうか?
特にMCV、鉄、フェリチン、ビタミンB12、LDH(もしくはLD、乳酸脱水素酵素)、網状赤血球の6項目がまずわかるようであれば教えていただけませんでしょうか?

もしかするとある程度あたりはついているものの、検査結果を見ないとわからなので中途半端な情報を伝えないようにしているのかもしれません。

また、コメントいただければと存じます
看取るということ (女王様)
2017-06-25 03:05:32
本当に 全くの他人のことなのに胸が痛む訃報でした。
家に帰りたい、家族と過ごしたい という願いが叶ったことだけは良かったなーと思いますけれど。
退院して帰宅したときのお子さん達のうれしそうな様子に ジーンとしちゃいました。

幼い子供達に 弱っていく姿を見せることは酷なのか?とか 結局帰っても母親らしい事はしてやれないじゃないか? とか。
しかもお看取りに立ち会わせるのはキツいだろう とかネットでは批判的な意見もあるようです。
正解はないけれど(突き詰めれば在宅終末そのものも) 体がつらい母親を労る心は、幼くてもあるはずです。 弱い人へのやさしさとか、時には自分のワガママを我慢しなければならない事とか ママが頑張る姿を見ることは貴重な学びだったのではないか?と私は思いました。

幼稚園児くらいに「死」は理解するには難しいですよね。
私自身も 小学校入学前に自宅で祖母が亡くなり、なんとなくしか理解していませんでした。
昔は自宅で葬儀をしたので、その未体験なバタバタに「これは大変なことが起きた」と感じた記憶と 火葬場に行き「焼く」という恐ろしさがトラウマになった覚えがあります。
硬くなる・動かない・冷たい・焼く。 このセットが「死は怖い」になりました。
結構な大人になっても 納棺で亡骸を見るのが苦痛で。
麻央さんの、特に上の娘さんにそんな精神的な痛みが残らなければ‥と願うばかりです。

終末期医療はQOLや尊厳死などで 在宅希望者は増えていますよね。
ただ やはり対応できる医師やシステムは追いついてないと思います。 患者さんが希望してもその世話をする家族の事情や、経済的な面とか。
家族に負担をかけるくらいなら仕方なく病院での最期を、と諦めざるを得ないこともあるでしょう。
海老蔵氏が経済的にゆとりがあり、彼女のお母様が面倒をみれるから出来た在宅ケアだとも言えますよね。 そうは簡単にバリアフリーマンションに引っ越したり 介護ベッドや車椅子を揃えるのは庶民には難しいことです。
高齢者の医療以外にも もっと在宅医療を見直され、整備されて訪問医師やナースが供給されていけばいいなあ と思います。
できたら自治体の管理で うまく利用できるシステムとか。

それにしても、2日前にジュースをおいしく飲めて ブログを綴り、そんな急に亡くなるものなんでしょうか。
スピードが早い タチの悪い癌だったと言われていますが、癌にタチがいいとか悪いとかあるんですか?
彼女の死は いろんなものを投げ掛けましたね。 本当につらくなるのは葬儀を出すこれからでしょう。ご家族は頑張って乗り越えますよう祈るだけです。

アンフェタ先生のお嬢様、きちんとしたおねえさんになったんですねー。
躾がよろしいんですね 多分。
靴もスリッパも脱ぎっぱなしの私(恥)。 反省。
お嬢様や新たなお子さんが成人して巣立つころは、還暦になっちゃいますよね。
まだまだ走らなければ!
倒れてるヒマもありませんよ。体にムリがないよう 充実したお仕事ができますように。
ありがとうございます。 (しおとも)
2017-06-25 10:06:55
丁寧にありがとうございます。
主治医は顔を見て話を聞いてくれず、検査ばかりで不安な日々です。

子宮、胃の検査は大丈夫でしたが便潜血の検査で1回目の便に陽性が出ました。
見た目に血便はありません。
そうなると大腸の出血でしょうか?
木曜日に大腸カメラをやります。
大腸癌かと不安です。

白血球→39
赤血球→460
血色素量→8.6
ヘマトクリット→29.4
MCV→63.9
MCH→18.7
MCHC→29.3
血小板→31.5
血清鉄→175
総鉄結合能→483
フェリチン→25.2
ビタミンB12→296
葉酸→34
血清亜鉛→73

今あるデータです。
細かい説明なく用紙も言わないとくれない状態でした。
僕は一緒に過ごした方が良いかなと (アンフェタミン)
2017-06-26 05:57:56
>女王様さん
おはようございます。コメントありがとうございます。

ネット上の意見は存じませんでしたが、弱って行く姿を見せたり、看取りに立ち会うのは酷だという話があるのですね。知りませんでした。

僕は看取りに立ち会うことで、人の死というものを学ぶことができますし、死を知ればより自分の人生を大事にすることができますので、一緒に過ごして良いのではないかと思います。

今は酷かも知れませんが、母親として最後に教えることができたことだと思いますし、弱って行く中でも「母親の無限の愛情」を教えること、伝えることができたのではないかと僕は思います。

もちろん、アフターケアは必要だと思いますが、立ち会わないよりは立ち会った方が良いのだと僕は思います。

終末期医療のシステムがまだ未整備なところが多いのは事実だと思います。お金の面も含めて病院でというのもあると思います。ただ、先ほどのネットでの批判と同じように「死」を忌む風潮が強いので(死を望む必要はありませんが、死を見すえるから良い人生を送れると僕は思っています)、在宅医療を受け入れがたいというのもあるかも知れませんね。

がんに「性質が良い」「性質が悪い」というのはあります。同じがんでもかなり違いがあります。

例えば悪性リンパ腫でも「1年以内に再発したDLBCL」と「それ以上時間を経過して再発したDLBCL」では再発後の生存期間が全く異なります。再発までの期間が「2年以内」「2年以上」の濾胞性リンパ腫も全く異なります。

とりあえず、娘は成長していっているので、遠い場所から見守りたいと思います。

また、コメントいただければと存じます
消化管出血の精査が重要です (アンフェタミン)
2017-06-26 06:05:47
>しおともさん
おはようございます。コメントありがとうございます。

鉄欠乏性貧血は貧血があり、MCV<80で、TIBC>350, フェリチン<12という定義です。データを読み解くのは難しいのですが、フェリチンが低下していたら鉄欠乏性貧血のデータです。

小さい赤血球が多い(MCV 60)なので、基本的に鉄欠乏性貧血があるところに別の理由でフェリチンが上昇(慢性炎症など理由があれば上昇します。鉄剤の静脈注射・点滴や輸血後にも上昇します)

もう一つは小さい赤血球は「サラセミア」と言われる体質的なもので、そこに軽い出血が重なってこのようなデータになっている可能性もあります。サラセミアは日本人では軽症が多く、Hb 10g/dlくらいの方をよく見ます。そこに軽い消化管出血があって、Hbは低下し、鉄欠乏状態になってきているのでTIBCが上昇している。サラセミア+消化管出血+潜在的鉄欠乏ということかも知れません。

いずれにせよ、重要なのは消化管出血の精密検査ですので、それを確認するのが第一だと思います。

また、コメントいただければと存じます。
たとえば。 (女王様)
2017-06-27 19:12:38
たとえば ですね。
小林麻央さんの入院してた状態で‥輸血4回とかポート入れたりとかで 退院・在宅を医師が許可するのは「もうなす術がないからどうぞ」という意味なのでしょうか。
医療の限界 のような。
それとも 本来なら引き留めますか? 何か急変したときを考えて。

家族も難しい判断ですね。
在宅に切り替えるということは 即ち治療行為を諦めること。 覚悟が要ります。
彼女がいた大学病院個室は 家族とて幼児は入れないので、家族といられる帰宅を望んだそうですけれど。
ネット上の批判的意見、一部わらなくもないかな。 4歳の坊やにすれば、ママが帰ってきて抱っこしてほしい・甘えたい・遊んでほしい のにしてもらえない事はつらかったかもしれません。

テレビでこのご夫婦のブログをしつこく扱ってるので 気になって読んでみました。
ずーっと我慢してた坊やが耐えきれずに突然朝から号泣し、自分では母の温もりをあげられないと苦しむ海老蔵氏。 そしてつらいだろうに泣くこともせずに心に蓋をしてこらえるお姉ちゃん。
看取りや葬儀に立ち会ったことを別にしても、やはり相当な心の傷が‥。 痛ましくてなりません。母親の代わりは いないですもんね。
泣くだけ泣いて、笑顔が戻るといいのですが。 一番めそめそして絶望してるのが海老蔵氏のようで(苦笑)。

タチの悪い癌。
なるほどなー となんとなくわかりました。
それは最初の癌発見段階で おおよそ見当つくものですか?
であるならば 診断受けた時点から終末期をどうするか頭に入れて よく考えて家族と話し合うほうがよさそうですね。

どうせCMLだし、と受けていなかった市の癌検診も行こうかな?
ケチな市なので割と高額なのですけれど。 しかも隔年しかありません。
所謂 タチの悪いモノならば、今年なかった腫瘍が次回の2年後には広がって見つかるかもしれない、ということですよね。

これ以上 万一大病がプラスされたら と逃げてました。
逃げられない現実・逃げたら取り返しがつかないことを 彼女に学びました。
私の場合は 這ってでも働きながら治療費用を得る終末期になりそうですけれど。
すいません (アンフェタミン)
2017-06-27 20:26:50
>しおともさん
こんばんは、コメントありがとうございます。

コメントしていたものが消えていました。気がつかずにすいません。

まず、一般的には鉄欠乏性貧血を疑うデータですが、フェリチンが低下していないというのが合わない点です。そのため解釈が難しいのですが、慢性的な出血で鉄欠乏性貧血(+出血)になっているところに、別のメカニズムでフェリチンが上昇していることが考えられます。

もう一つはサラセミア(生まれ持った体質と思ってください)など小球性貧血がベースにあるところに、鉄欠乏が重なったというものも考えられます。

ただ、いずれにせよ消化管出血の精査が重要ですので、しっかり検査を受けて確認されるのが一番かと思います。

コメントが消えていて、不愉快な思いをさせてしまっていたらすいません。

また、コメントいただければと存じます
患者さんによります (アンフェタミン)
2017-06-27 20:38:14
>女王様さん
こんばんは、コメントありがとうございます。

難しい話ですが、医療の限界とは何かと僕は思っております。完治させることができなくなったら、医療の限界・・・と考える方もいるかもしれません。感知できなくても共存できるようにするのが医療だと思う方がいるかもしれません。亡くなるまでサポートするのが医療という考えの方もいると思います。

医療の限界はいくらでもありますが、それでもできることが必ずあります。基本的に苦痛を減らすのも医療の役割です。

あとは在宅が良いのか、病院が良いのか。家庭で看取りができない家であれば、無理に在宅に戻すことはしないと思います。看取りができる病院に転院すると思いますし、その前に調整できるものを調整すると思います。

緩和ケア(完治を目指さない時点で、大きな意味では緩和ケアですが、今回は終末期という意味で)で一般に輸血はしないというのがコンセンサスです。輸血をしたことで生きる時間を永らえさせることはできると思います。ただ、ある程度動いたりできるのであればともかく、自分の自由な時間が使えない・・・まさに「死を待っている」状況であれば、苦しみが長くなる可能性もありますので輸血などをせずに他の方法で「自分自身の体力の限界まで生きられるように、そして苦しみがないように」サポートするのが医師だと思います。

海老蔵さん一家の子供の状況も海老蔵さん本人の状況も、予測の範囲内だと思います。多分、医療従事者のある程度は「海老蔵さんに休んでもらった方が良い」と感じていると思います。悲しみを仕事をして忘れるというのは方法かもしれませんが、「台本が読めない、覚えられない」というのは強いストレスによって「抑鬱状態」に入っていることを示唆しています。

タチの悪いガンを「初期に見分ける」ための様々な情報を集めているのが今の状況だと思います。それがリスク分類で、乳がんでもある程度わかっています。

CMLでもTKIが効きにくい「T315I」は移植をするという選択肢が出てきます。これもタチが悪いガン・・・という1つの検査結果になります。

働きながら治療をする、大変ですよね。そのサポートができる体制を作らなくてはいけないと思います。どこぞの議員さんが「働かなければ良い」というようなことを言いましたが、そういう体制にしてみろと言ってみたいところです。

また、コメントいただければと存じます。
Unknown (しおとも)
2017-06-28 21:17:31
本当に丁寧にありがとうございます。
主治医より回答が多く、嬉しい限りです。

消化器系、胃、子宮、大腸検査をしたら出血はなく大丈夫でした。

結局再度、血液検査をして結果待ちです。
結果により、血液内科などを紹介すると言われました。
血液の病気という事もあるのか、また不安になりました。。

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