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波打ち際の考察

思ったこと感じたことのメモです。
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波屋山人

海外で活躍する日本人女性ボーカリスト

2009-06-28 14:17:18 | Weblog
日本社会は時々鎖国志向を見せる。
他文化圏の人との対話に慣れていないから、自分と異なった考え方の人と共に過ごすことを面倒に感じる人も多いのだろう。

価値観の異なる人たちに要求を伝えるには、論理的な思考が必要だ。
(あるいは相手を巻き込むような感性が必要だ)

ひとつの価値観に覆われた社会で生活をしていると、論理的な思考よりも、周囲の志向を感知し、それに沿った形で行動することが当たり前になる。
なんだかんだいっても、日本は単一的社会に近い。
論理よりも雰囲気が優先される社会は時には窮屈だ。

昨年、国土交通省の大臣だった中山成彬さんは外国人観光客の誘致策を問われた時に、
「日本はずいぶん内向きな、単一民族といいますか、世界とのあれがないものだから内向きになりがち。まず国を開くというか、日本人が心を開かなければならない」
と述べ、メディアや学者から批判されて辞任した。

共同体を覆う空気を読めていなかったせいだろう。
日本では、「単一民族的な社会に近い」という言葉を使っただけで全否定される恐れがある。
べつに、「日本は純粋性を誇る単一民族だ」などという幻想を語ったわけでもないのに。

残念ながら、「日本は単一民族みたいに内向きだからなんとかしないといけないね」と言うだけで、論理的な言葉が通じにくい単一的社会に生きる人たちに、全否定されてしまう可能性がある。
(恣意的に発言を取り上げて報道するメディアは多いし、その背後を読み取ろうとする視聴者も少ない)

電車の乗降車の時、すみませんの一言もなく「どいて」「よけて」とでもいうように体を押し付けて来る人は、多文化社会について語れないのではないか。

個人的にはアイヌ文化を愛し、中国出身の親友と飲み、韓国出身の人と話し、被差別の歴史を長年調べ、自分が日本人だという意識もあまりないけど、客観的に見るとまだまだ日本は単一文化社会に近いと感じている。
同じ民族が98~99%も占めている国家は非常に珍しい。
こんなに「空気を読まされる」ことを求められる社会は少ない。

時々、文化的な「民族」と遺伝子的な「人種」の違いを混同している人が、「日本人のルーツは様々で民族のことをあれこれ言うのは意味がない」というようなことを言う。
だけど、民族と人種は定義が異なる。
遺伝子系統が異なっても一つの民族を構成している例は珍しくない。
漢民族もユダヤ人もアラブ人もフランス人も、地方によってずいぶん遺伝子が異なる。
フランス南部のマルセイユあたりのフランス人は、人種的にはパリよりもスペインのバルセロナに近いだろう。

もちろん、人種的にはほぼ統一でも、民族が違うという例もある。
中国の回族と周囲の漢民族では遺伝子はたいして変わらない。
タイ東北部のタイ人とカンボジア人も遺伝子的には近い。

まあ、日本では自分のことを日本人だと意識していない人が多いから、自分が日本人だと言われることに違和感がある人も多いのかもしれない。

でも海外に行くと、自分が日本人として見られているということを意識せざるを得ない。
ぼくの輪郭に日本人という薄皮ができて、へんなことをすると「やっぱり日本人はクレイジーだと思っていた」などと言われて、ぼくはとても気楽だ。日本でも外国人扱いしてほしいくらいだ。
たまには、自分の国籍や民族というものについて考え、他国籍の人と接してみることがあってもいい。

「日本が単一民族的であるなんてとんでもない」、という人はどのくらい単一民族的ではない社会に親しんでいるのだろう。
もしかすると、「単一民族社会」発言を目の敵にする人たちは、多民族社会から遠いところで思考しているのかもしれない。


海外で活動している日本人女性ボーカリストをyoutubeで見て、ふとそんなことを考えた。
彼女たちはかっこいい。

日本には、引きこもりがちな人が残ってもいい。
他文化圏の人と交流し、交渉し、せめぎあうことが面倒に感じる人にとって、居心地のいいところが日本であってもいい。
むかしから、せめぎあいから逃れてきた人の落ち着くところは、田園地帯であり、カフェであり、日本列島だった。
日本には、論理よりも混沌が似合っているのかもしれない。


■Asobi Seksu(アソビ・セクス) - Me & Mary
http://www.youtube.com/watch?v=KYuDBdVj8_k&feature=fvst
※沖縄生まれの Yuki Chikudate にはアメリカンな格好よさを感じる。

■Blonde Redhead(ブロンド・レッドヘッド) - 23
http://www.youtube.com/watch?v=a7FqUNlEdwA&feature=PlayList&p=9C72D24E5F52C74D&index=0&playnext=1
※京都生まれのKazu MAKINO の気だるそうなところが好き。

■Deerhoof(ディアフーフ) - The Perfect Me
http://www.youtube.com/watch?v=1rrnTDDhVnw
※東京生まれのSatomi MATSUZAKI は小柄で声もちょっとロリっぽい。ドラムスは近くで見るとその迫力に驚く。

■Enon(イーノン) - Mr. Ratatatat
http://www.youtube.com/watch?v=jqxr146QphI
※元blonde readheadのベーシスト Toko YASUDA がボーカル。大人っぽくかわいい声。


海外で活躍する日本人女性ボーカルの先駆者は1982年にイギリスデビューしたSalon Musicの竹中仁見さんだろうか。
90年代には小山田圭吾のトラットリア・レーベルから出たCDをいくつか買った記憶がある。
■Salon Music(サロン・ミュージック) - Spending Silent Night
http://www.youtube.com/watch?v=7kSf_7MUMPo

あ、サディスティック・ミカ・バンドのほうが先だっけ。



追記
今日6/29、吉本隆明の『悪人正機』(新潮文庫 2004年)を読んでいたらp.60に下記のような一文があった。

「(略)オウムが殺人事件を犯した犯罪者だっていうことと、オウムという宗教と麻原っていう大将にどれくらいの宗教的力量があるかってことをちゃんと評価したうえで、何をしたかを考えてみることは別なんですね。でも、それを言っただけで、文句を言われる。こういう見解は持っちゃいけないってことで排斥されるようなことは、日本独特とは言わないけれども、先進国ではないですよ、みたいなことも言われましたね。
 ぼくら日本人っていうのは、過剰に気を遣いすぎる。だから、こう言っちゃ悪いんだ、みたいになっちゃうんですね。人それぞれ違う考えがあるっていう、相容れない者同士のルールってのが、できてないんじゃないかな。」


コメント
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