自動車保有台数が2012年に1億台を超えた中国。昨年は2000万台近い新車が販売され世界一の自動車大国の地位を揺るぎないものとしている。ただ、自動車の普及とともに、深刻化しているのが大気汚染問題。中国政府は石油輸入の増加を抑える狙いも合わせ、燃費規制の強化で解決を図ろうともくろむ。日本勢は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など得意の環境技術を課題解決の手段として売り込む戦略だ。
【中国市場】 進む日本車離れ…技術力だけでは存在感が足りない
「ガソリン消費量が半分になるHVを現実的な省エネ車として中国に根付かせたい」。トヨタ自動車の内山田竹志副会長は20日、上海モーターショーでこう述べた。トヨタとしては、初代HV「プリウス」の開発責任者を派遣し、環境技術重視の姿勢をアピールすることで政府からの支援を得たい狙いも透ける。今後、15年をめどに、中国でのプリウス国産化を推進。「中核となる部品の生産を中国で始めたい」(大西弘致専務役員)としている。
日産自動車も、「中国ユーザーの環境意識は高まっている。誰も汚い空気は吸いたくないはずだ」(アンディ・パーマー副社長)と得意のEVの拡販をもくろむ。モーターショーにも中国独自ブランド「ヴェヌーシア」の新型コンセプトEVを出展し、環境車への注目を促した。日本勢が普及のきっかけとして当てにするのが、中国政府の政策だ。
今年3月、中国政府は、乗用車の平均燃料消費量を15年までに100キロ当たりガソリン6.9リットル(1リットル当たり約14.5キロ)、20年までに同5.0リットル(同20キロ)とする燃費基準の厳格化を打ち出した。昨年末から今年初めにかけて、有害物質を含んだ濃霧が最大で中国全土の4分の1を包むなど、大気汚染が深刻化したことが大きい。
日本勢は、こうした課題解決に向け、「EV、HVは最も有効な手段」として政府に働きかけ、高い価格を政府からの補助金で援助でまかない普及を手助けしてもらうというシナリオを描く。また、中国では日本車はブランド力で欧州車に競り負けているのが現実だが、日本メーカーは得意の環境技術が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題で落ち込む日本勢の流れを一気に変えてしまう「ゲームチェンジャー」の役割も担えると期待する。
今後の展開として、「中国メーカーにハイブリッド技術やEVのノウハウを供与して、ほかの面で条件を勝ち取るなど欧米並みに条件交換する戦略も必要だ」(野村総研の張翼・上級コンサルタント)との指摘もある。ただ、環境分野における日本の技術力は他を圧倒する。戦略次第では欧州勢とのブランド力の差を埋める一手にもなりそうだ。(飯田耕司)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます