Con Gas, Sin Hielo

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「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」

2017年08月19日 23時06分01秒 | 映画(2017)
夢がもっとも輝きを放つ年代。


はじめは正直なところ少し距離感を感じていた。キャラクターの絵があまり好みではなかったし、中学生にしては大人びているヒロイン・なずなには何だかめんどくさいという印象を持つくらいだった。

しかし、主人公・典道がなずなの境遇に気付いて懸命に奔走し始めると、急速に話に求心力が出てきた。

ひそかに憧れていたクラスメイト。偶然に訪れた二人だけの空間。なんであのとき何もできなかったのかと後から思うのは、思春期のあるあるだ。

実際は同じシチュエーションに再び立ったとしても、中学男子にはこなす実力などはない。

そんな動かしがたい常識を一変させるのが「不思議な玉」である。

ファンタジーは一つ間違えると観ている方が醒めてしまう恐れがあるのだが、そこはアニメ特有の力で引っ張ってくれる。

普通の町の日常が美しく描かれていることに加えて、花火や電車や海など幻想的で印象に残る場面が多く、テレビドラマが先だったとは信じられないほどであった。

特に題名に出てくる花火が持つ役割には唸った。「不思議な玉」で書き換えられた世界が実は虚構であるという、夢があふれる一方でとてつもなく切ない情景を見事に表現している。

幼いながらもどこかで気付いている。この夢は叶いっこない。それでももう少しだけこの夢を見させてほしい。

なずなの笑顔は典道の幻想だったのかもしれない。そもそもなずなという女子の存在自体があったのかどうかも分からないくらいだ。

しかし、映画の中で繰り広げられる夢のような時間と経験はとても儚くて美しい。成長すると自由に夢を見られなくなるものだけど、岩井俊二は大したものだと改めて思った。

声あての広瀬すずはちょっと癖が強くて彼女以外の誰でもなかったけど、劇中で歌った「瑠璃色の地球」は出色ものだった。こんな名曲だったのかと初めて気付かされた。

(85点)
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