komaの こまごまひとりごと

文章を書くのが好きな主婦の私空間。マイペースで更新しています。









80年代前後の少女マンガで育った主婦が、今頃書いたファンタジー

2017年04月25日 | 小説

                                     第1回
         出会いの窓は南の塔に(第39回)

 

「・・・死んでるって言いたいの?」

 わたしは言った。
 かすれたのどから無理に絞り出したため、自分のものではないような低い声が出た。

「エセル」
「そう思うならそれでもいいわ。それに魔物の気配がするんじゃ、登りたくないのも無理ないわね。あなたは引き返してちょうだい、ティノ。ここから先はわたしひとりで行く」
「エセル!」

 突然、ティノがわたしの両腕をつかんで揺さぶった。

「しっかりしてよ。落ち着いてよく考えてよ。エセルがぶらさげているのは何? 剣のかけらだって言ったよね」
「言ったわ。離して」
「魔法剣は砕け散ったんだ。そんなこと村では誰も知らなかった。旅回りの吟遊詩人も、そんなこと教えてくれなかった。剣がないのにどうやって魔物退治なんかできるのさ」
「離して!」

 少年の手を振りほどくと、わたしはその場に崩れるようにすわりこんだ。
 立っていられなかった。

「考えてるわよ、それくらい。言われなくたって何度も何度も考えたわ。でも」
「エセル・・・」
「でも死んでなんかいない。必ず生きてる。生きてるって信じてる。だから」
「ごめん、ティノ言い過ぎ・・・」
「だからわたしが探さなきゃ。わたしが会いにいかなきゃ。あの人、自分からは絶対にわたしに会いにこないから」

 そのとき。
 ふいに頭上で葉ずれの音が響き、パラパラと木の葉と小枝が舞い落ちてきた。
 裸木の梢にからみついていたヤドリギ。その常緑の葉をはね飛ばし、生き物のはばたきが急速に近づいてくる。

 ぎょっとしたようにティノが振り向き、上を見上げて棒立ちになった。
 すわりこんでいたわたしは、振りほどいたばかりの彼の手をつかむと思い切り引いた。

 野鳥が来たかと一瞬でも期待した、自分の甘さが恥ずかしい。魔物だ!

 

 

(いつもありがとうございます。komaです。
 このあたりから後半戦になります・・・長くてすみません。
 ラストまで、もうしばらくかかってしまいますが、今後もよろしくお願いいたします)

 

 

 

 

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