komaの こまごまひとりごと

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80年代前後の少女マンガで育った主婦が、今頃書いたファンタジー

2017年03月18日 | 小説

                           はじめて読むかたへ

 

          出会いの窓は南の塔に(第1回)

   

   いざや語らん あの日のことを
   ともに讃えん 勇者の誉れ
   御身(おんみ)庇わず 剣(つるぎ)を振るい
   討ち果たしたり 穢れし魔物

   聖なる炎で すべてを正す
   闇に生まれし ものを光へ
   千切れし魔物の 骸(むくろ)は天へ
   勇者と天馬の 骸は河へ

   姫の涙は 朝に夕(ゆうべ)に
   勇者とありし 日々をたどりて
   やがて行きつく 祈りの岸辺
   まぶたに還るは 永久(とこしえ)の恋


   
 ぱさり、と、枯れ草を踏む音が一歩近づく。ティノは歌うのをやめて顔を上げた。
 音がしたほうに目を向けると、落葉した木々の間にひとりの娘が立ちつくして、こちらをじっとみつめていた。
 村では見たことがない顔だ。
 貧しい少年のように粗末な身なりは、あちこち泥で汚れているが、顔のほうの泥汚れもそれに劣らない。
 きっちり編んで頭に巻きつけられた髪には、これも泥にまみれた枯れ葉がからみついている。

 ころんだのかな。
 でも森を歩き慣れていないような娘(こ)が、どうしてこんなところにいるのかな・・・。
 みつめかえしていると、娘の大きな茶色の瞳がまたたいた。
  涙がこぼれ落ちて、ほろほろと頬を伝った。


              ☆


 歌声にひかれるように、わたしは見ず知らずの森の中を歩いていた。

 長かった冬を越え、とけた根雪の下から芽吹いた緑が、やっと目につきはじめた森の中。

 視界に広がる世界に春の色彩はまだ少なく、足元には枯れ葉と枯れ枝がしっとりとつもった地面、目の前には寒気(かんき)をたたえたブナやカエデの太い幹。
 はだかの枝々を通しておりてくる日差しは、よそよそしくこわばったままで、暖かさとはほど遠い。

 もっとも、そう感じるのは、わたしの心がこわばったままだからかもしれない。
 先ほど、雪解けのぬかるみに足をとられて盛大にころんだせいで、ますます自信を失ってしまった。

 わたしのようにひとりで歩き慣れない人間が、本当に目的地までたどりつくことができるのか。この方向でまちがいないのか。
 夏場とちがって見通しのよい季節の森は、外から見ればいかにも歩きやすそうで、なんとかなるにちがいないという希望を抱かせてくれたのに。

 けれど、希望どおりにならなかったといって、そう驚くこともないのだろう。
 お城育ちの末姫が、ひとりで考えつくことといったら、しょせんこんなものなのだ。
 自嘲しながらよろよろ歩いていたときに聞こえてきたのが、とぎれそうに細い歌声だった。

 

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