すべての山に登れ

日々のできごとと山の思い出

積雪の金剛山その3

2017-01-30 14:41:22 | 山登り
1月29日(日)

〈凍結の念仏坂(伏見林道)〉
 5時5分、念仏坂を登り始める。昨日の雪は少し融けて、凍結していた。凍っていないところを選びながら、登っていく。それでも油断すると滑りそうになる。慎重に歩いていたが、「千早のトチノキ」のところで妻はアイゼンをつける。少し先行していた私が立ち止まって振り返る。アイゼンをつけている妻の姿が、暗闇でそこだけライトで薄明るい中に浮かんでいる。生真面目に装着している姿を見ると、何となくいじらしい。

〈シルバーコース〉
 細尾谷から馬の背を経由して寺尾根に入ることにする。通称シルバーコースである。ここは登り始めが岩場で、ロープがある。岩場を過ぎると、沢沿いのガレ場を通って、寺尾根の支稜に入る。ここから頂上までは、普段はクッションの効いた歩きやすい登山道である。雪は積もっている。私はノーアイゼンのまま。途中で、針葉樹林の隙間から木星がみえる。妻に言うが、見つけられない。
 「あれ。もう5時48分。今日は何でこんなに時間かかってるんやろ。」と言ってから、最近もこういう会話があったことを思い出す。「遅いでと言われると、へこむわ。」と先に言う。後ろで、妻の「あはは。あはは。」という大きな笑い声が聞こえる。

〈アニマルトラッキング〉
 支稜から寺尾根に入る。この合流地点は鞍部になっていて、「馬の背」と呼ばれている。金剛山で馬の背というとこのコースのことである。早朝はあまり人が歩かないので、積雪の日は動物の足跡を見つけやすい。一時期、子どもも一緒に登って、夢中になってあちこちにウサギの足跡を見つけたことがあった。
 探しながら登っていく。新雪ではないので、見つけにくい。「あ、あれ。」妻が斜面に一列になった足跡を見つける。「何やろ。ウサギではないし、イノシシにしては小さいな。」上の方まで登って「あ、あった。」と妻がウサギの足跡を見つけた。横2つ、縦2つの足跡。横2つが後ろ足で、縦2つが前足である。ウサギの足跡はよく跳び箱にたとえられる(後ろ足が前の位置に着地する)。進行方向は後ろ足のほう。ウサギは斜面を上っている。

〈ノーアイゼン〉
 6時15分。頂上着。マイナス1度。かまくらはコニーデの形をして立派になっている。文殊尾根を下りる。丸太の階段のところで、登ってきたNさんご夫婦に会う。このご夫婦はたいてい奥さんが先行している。「アイゼンしてへんの?滑るよ。若いからいいけど。私は用心してるよ。」と注意を受ける。昨日も私は、ノーアイゼン。下りで2回滑ってこけた。膝をすりむいて、風呂に入るとしみる。
 
〈ころころ〉
 東尾との分岐の手前に巻き道がある。そこで、積雪のときは、妻はいつも斜面に向かって雪を蹴る。すると、小さな雪玉になってころころと谷のほうに転がっていく。このころころが妻は好きだと言う。今日は転がりにくいので、手で握って転がす。雪玉は円盤のような形に大きくなって転がっていく。

〈ビー玉ころころ〉
 「小さいときにね。裁縫板(さいほういた)を並べて、ビー玉を転がすのが好きやってん。」
 「お母さんが着物を仕立てるときに使ってた裁縫板、正しい名前は知らんけど、それを何枚もつないで、ビー玉が転がるようにするの。」
 「座敷机のところから裁縫板をつないでいって、上り、下りをつくるねんね。下に箱を置いてその上に裁縫板を置くの。」
 「板の横から落ちずに最後まで坂を上ったり、下りたり。気に入ったビー玉をおう頑張れと応援するの。」
 「運動エネルギーやね。坂道で勢いつけて上らせて、下りて。上がったり下りたりする。そして、おお、うまいことできた。」

 質問を重ねて、上のようなことがわかった。感性豊かな少女と昭和の時代が浮かび上がってくる。こんな話、あまり聞いてやらなかったな。自分の話ばかりして。
まだ、時間はいっぱいあるか。
 下りの念仏坂は、凍結がゆるんで妻のアイゼンはもういらなかった。

 

















 

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1 コメント

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Unknown (鬼井江)
2017-01-30 23:30:36
文章に会話が入ってくると、「文章が生き生きとしているなあ」と、躍動感を感じながら読ませていただきました。
私も会話を入れて、ブログを書きたいのですが・・・。東海道53次歩き旅では、会話の相手がいない。一人旅のブログに、会話を入れるのは難しいです・・・。独り言を入れてみようかな?

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