映画生感想『ビッグフィッシュ』

久しぶりにひとりきりで映画を観に行きましたが、
この作品はひとりきりで観て良かったです。

鑑賞中、何度も号泣してしまいました。

帰宅後、泣き疲れて仮眠してしまったくらいですから、
この涙の量は、よっぽどです。

今後迎えるであろう自分の結婚や子供の誕生、そして両親の死、
そうした人生の節目節目に観たら、また違う印象を受け、
また違う涙を流すこととなるでしょう。

もはや評価云々や演出がどうこうではなく、
この作品は、私の人生にとって、
最も大切な作品と言えるかもしれません。

ただし、ひとつ勘違いされると困るのが、
この作品、あからさまな感動作品ではありません。

私はひねくれ者なので、
感情移入をさせたキャラを辛い目に合わせたり、死なせたりして、
わかりやすく感動を誘発するような作品だったら、
その浅はかさに大笑いしてしまいます。

ということで、少しあらすじを。

自分の人生に関するホラ話が大好きな父親と、
その話に事実を見出せず反発する息子。

父親に死期が近付くものの、依然としてホラ話を止めず、
母親との出会いなど、様々なホラ話を息子の嫁に聞かせる。

息子は、それらのホラ話の整合性を調べる内に、
事実を脚色した、それぞれの話に潜む真実の大切さを知り、
死に際にようやく父親の真意を理解する。

文字にするとやはり感動話っぽいのですが、
描写は基本的にコミカルなファンタジーで、
泣かせようというものではありません。

しかし、淡々と描かれるホラ話のひとつひとつに対して、
深い父親の愛情があることに気付いた後は、
そのホラ話ひとつひとつを観る度に、
涙が自然と流れてきました。

というのも私の父親が、
やはりホラ話好きなのです。

私が就職して横浜に来るまで一緒の家で過ごした22年間、
自分の過ごした青春時代の思い出にだけでなく、
日々の出来事にまで、いちいち必要ない脚色を加えた、
様々なホラ話を聞かされました。

父親の言っていること、全てが事実だとしたら、
私の街はどんなにか楽しい場所で、
私の父親はどんな人とも仲良く接することが出来、
そして正義感に満ちた人格者でなくてはなりません。

そんな父親の話に飽き飽きな母親と私は、
テレビに目線を合わせっぱなしで、
聞き流すことが日課となっていました。

しかし、そうして飽き飽き聞く母親自身も、
自分の過ごした青春時代の思い出話については、
どうもホラ話好きに思えます。

母親が必要ないホラ話をし過ぎたせいで、
私はいまだに女性は男を必要としておらず、
汚らわしいものと嫌ってるんだ、と思い込んでいますし。。。

そんなホラ話好きな両親の元で育った私なので、
やっぱり私自身もホラ話をするのが大好きです。

話してることの70%はホラの脚色を加えてますし、
友人に両親のホラ話を披露することも、
わりとお気に入りです。

そうして、しっかり両親の血を引き継ぐ私ではありますが、
正直、両親は早く亡くなってしまえばいい、と思っています。

正確には、いました、です。
この作品を観終えるその瞬間までは、
残酷にもそう思っていました。

というのも私にとって両親という存在が、
あまりに偉大過ぎて、重荷のようにも感じられたのです。

いくら偉大と言っても、
世間一般の誰も私の両親のことは知らないでしょう。

その偉大さは、私だけが知っているのです。

私が知る22年間に渡る両親の生活は、
全て私のためにあった、
と言い切っても決して過言ではないでしょう。

休日、父親と母親が自分のために出かけたのは、
ふたり合わせても片手で数えられる程度です。

父親は飲んで帰るなんてこともありませんし、
私の心臓の深刻さに気付いた小5以降、
社員旅行さえ行っていません。

両親の青春時代についてのホラ話を信じるなら、
共に活動的なはずなのです。

それなのに両親は私を生んだ24歳から22年もの間、
自分のしたいことを抑えて、友達とも連絡せず、
ひたすらに私を見守り続けました。

そんなにも深い愛情を、
ひとりの人間に対して注ぐことが出来るでしょうか。

それとも、いつからか父親も母親も、
人生の中で最もしたいことが、
私を見守ることになっていたのでしょうか。

その真意は定かではありません。

けれど、そんな深い愛情は、
受ける側にとっては、つい重荷と感じてしまうこともあり、
特に私は、自分の心臓がこんなだからそうなんだろう、と、
自分自身に責任を感じてしまっていました。

子供好きなのにひとりっこというところもまた、
どうにもアヤシイとこですし。

私は生まれついて理解の早い子供だったので、
物心がついてからずっと、その大きな責任感から、
両親の望む通りのことしかせず、迷惑もかけない、
いい子であることを演じ切りましたし、
お小遣いを貰い始めて以来、
両親の誕生日や父の日、母の日に贈り物をすることを、
忘れたことはありません。

その想いの大きな表れとして、大学を卒業する歳になったとき、
私は就職して家を出て、千葉から横浜に来ることとしました。

もはや私から離れて、
自分達だけの人生を進んで欲しかったのです。

活動的な両親に戻って、
したいことをして欲しかったのです。

その手助けのために、
旅行やコンサートのチケットを贈ったりもしました。

でも、そんなことは私のお節介、勘違いでしかありませんし、
単に私が重荷から逃げ出したかっただけかもしれません。

なぜなら、そうして離れて3年が経過しても、
両親は新しい人生の糧を探すでもなく、周囲と遊ぶでもなく、
やはり事ある事に私に会いたがります。

私はその態度に、図々しくも、
いい加減に大人になって子離れしろと思っていましたが、
きっと私と会って、つくり貯めたホラ話を聞かせることが、
両親にとって本当にしたいことなんでしょうね。

そんなことを、この作品を観てようやく気付きました。

なにかの台詞で聞いた、
大切なのは、愛する人に愛されること。

私も両親の愛情に応えなければなりません。

いくつになっても、どんなに離れていても、
両親にとって私は愛すべき息子であり続けるのですから、
その事実を忘れてはいけません。

そして私はホラ話の他にもうひとつ両親から授かった、
大切な存在を愛するという感情を、
自分の妻となる人、そして自分の子供に向けて、
人生の全てをかけて伝えなくてはなりません。

ホラ話をして日々を楽しませたい、
と思えるくらい愛している人達が、
そこにいるのですから。

今度の父の日のプレゼントは、モノを贈るだけでなく、
私が帰宅してホラ話を聞いてあげることにしましょうかね。

…なんて親子関係を思わせるキッカケになる、
素敵な映画でした。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 20 )
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コメント
 
 
 
聞き上手が親孝行 (銀太郎)
2004-05-18 08:10:37
はじめまして。



>私が帰宅してホラ話を聞いてあげることにしましょうかね。



ホラ話かどうかは微妙ですが、ワタシの親父も話し好き。

そんな話し好きの親父を見ていて気づいたのですが、子供

が話相手になるってことは、親にとってとても幸せなこと

のようです。聞き上手は親孝行になるみたい。

あまりにしょっちゅうだと、つらいところもありますが。(苦笑)
 
 
 
出来杉君 (aliz)
2004-05-19 00:39:22
はじめまして。

コメントありがとうございます。



私は、外ではホラ話ばっかり言ってる、

バカっぽい人間ですが、

こと両親の前では、ホラにホラは返せないので、

出来杉君のごとく真面目に折り目正しく生き、

ホラ話も聞いております。



ので、親孝行は、

自然と出来てるのかもしれませんね。
 
 
 
乱暴者というのは、孤独で・・・ (かめむしこ)
2004-05-21 11:24:04
トラックバックありがとうございます。

ちょっと映画のツボが似てるかも?知れませんね(笑)

ツボがずれるときが楽しみです。
 
 
 
苦手なもの (aliz)
2004-05-22 02:51:43
私はホラー、戦争、ラブロマンスは苦手なので、

そこでずれそうです。。。
 
 
 
ラブロマンスは (かめむしこ)
2004-05-22 12:46:17
得意ですが、ホラーと戦争は私も苦手です。

・・・苦手なものは観ないので、感想もかけません(笑)
 
 
 
ラブコメ (aliz)
2004-05-23 02:03:26
大人の恋愛をするラブロマンスは苦手な割に、

コメディ色の強い、ラブコメは好きです。



というより、英国コメディ好き?



これだけ好きな映画を選べる世の中なので、

苦手なものはあえて観る必要はない気がします。



音楽なら頑張って一度は聴いてみるんですけどね、

映画はどうも。。。
 
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