もう早くも少し前の話になってしまったが、正月のある日。
ヨウジ氏宅でおせちを食べていた我々に降り掛かった謎の事件。
餅を焼いて、そろそろ仕上がる頃かと一人でヨウジ氏宅のトースター付近へ。
するとふと異変に気付いた。
異変と言っても、機能そのものの故障などではない。
背面の壁に黒いシミが見える。過去に見た記憶はないシミである。
目を凝らして見る為にトースターの上に乗っていたものをどけてみた。
昔の本宮ひろし、いや宮下あきらの漫画に出てくる様なブラシで飛ばしたような黒いシミ。
ぶしゃあッ!という擬態語がいかにも似あいそうな感じだ。
まず濡れたタオルで拭いてみるが、かなり強い汚れだ。
しかも壁紙の微妙な細かい凹凸のせいで、拭けば拭く程汚れが壁に浸透して取れなくなっていくような感じの汚れだ。
次に気付いたのはトースターの天板。
ここにも同じ様な宮下あきらデザインの黒しぶきが確認された。
この時点でようやく事の異常さに気付きヨウジ氏を呼ぶが、
ギターを弾きながら近づいて来たヨウジ氏は壁紙のシミを確認するも「これはこういうプログレなデザインの壁紙だったように思う」
と取り合わない。ではトースターの天板にも同じシミがあるのはおかしいではないかと言うと
「それもそういう天板デザインのトースターだったと思う」となす術が無い。
これは自分で解明するしかないと思い、
そうだ、上に置いていたもの、と自分がどけたモノを振り返る。
すると文房具がたんまりささったカップのようなものがこんな状態に。
ここにも「あきらスプラッシュ」が。。。
このカップ、天板、そして壁の3点のあきらスプラッシュから判断するに何か小爆発があったとしか思えない。
しかしその割に何の音も聞こえなかった。
除光液を借りてこのカップのあきらはかなり綺麗に取れた。
まず思ったのは、インクである。カップに入っていたすべてのペンを確認するが、どれも無傷。
考えてみればカップの外側に汚れはついているのだから、内側のペンが影響しているはずもない。
それでも人間というものは不思議なもので、インクの元になるペンが大量に入ったカップとその外側の汚れを見せられると、
カップに穴があいているのではないかとか、しつこく考えてしまう。
ようやくあきらめ、要因は外側にあると切り替える。
壁のシミをまず発見した時にトースターの天板からどけたのは何か他にもあったはずだ。
周りを見ても、他にも何もない。慌てていたのと、人の家だったということで記憶も曖昧だ。
な、なんなんだ。。。
と途方に暮れそうになったその時、
全くの明後日方向にあった別のペン立てに気付いた。
このその下の方に、小さなあきらスプラッシュがあった。
あ。。。!
見ると思い出す、自分の行動。モノをどけながら、「うわ〜壁になんかすごいシミついてる〜」と思うと同時にこのもう一つのペン立てを持ちつつ歩き回り、全く離れた別のところにそれを置いたのだ。我ながらひどい記憶力に情けなくなる。
そしてこのペン立ては網目仕様である。ここだ。。。!
がさっとペンを抜き出すと、意外にもペンは全て無傷。しかし底にコロンと転がっていたモノを発見した。
それは、ペンの「詰め替え用インク」。
餅を焼くという相当な高温作業、そしてその天板に置かれていた編目のペン立て。
それでもささっていたのがペンだけなら無傷だっただろう。しかし、底に潜んでいた詰め替え用インク、そのボディは樹脂製だ。
これまでもトースターが使われるたび阿鼻叫喚の如き熱地獄に耐えて来た彼も、この正月についに暴発。
それでも正月である事に気を使ってか、全く音を立てず、人知れず散るというあまりにストイックかつサイレンスな最後。
しかし残したしぶきだけは、ペン+網というまさに漫画家が血しぶきを描く時の道具そのままの状況を利用して、情熱たっぷりに壁にしぶきをまき散らしながらその役目を最大に果たし終えたのだ。
トースターの上にペン立てを置くと言うソリッドな感性もさることながら、
全ての謎が解けた達成感と、このインクの強烈なダイイングメッセージに感動すら覚えヨウジ氏に事の顛末を説明するとヨウジ氏、
「いや、やっぱりそれにしてもその壁紙はそういうデザインやった思うわ」
あかんわ、この人。