単結晶からモノづくりを創造するAKTサイエンスブログ

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AP法のもう一つの形 その1

2015年07月13日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

酸化ガリウムという物質を聞いたことはあるでしょうか。
検索をかけると、最近注目を浴び始めている材料であることがお分かりかと思います。

無色透明な酸化物結晶です。
無色透明ということは、普通は電気を流しません。

金属を例に取りましょう。
金属に光を当てると、光電効果で電子が表面から飛び出します。そして、金属結晶内の自由電子は励起され(エネルギーが高い状態になること)、その後すぐに安定状態に戻ります。励起した自由電子が安定状態に戻るときには高くなった状態のエネルギーを解き放ってやらなければなりません。 

このとき解き放たれたエネルギーは、高くなった状態から元々の状態の間の分だけです。結晶では、エネルギーの高い位置も下の位置も決まっています。あたかもマンションの一階と二階のようなものですね。どれだけ高くジャンプして二階の床を飛び越えても、いったんは二階の床に着地します。これがエネルギーの高い状態。そしてすぐに元に戻るので、一回の床に飛び降ります。この、一階と二階の高さの差にあたるのが、安定状態に戻る時のエネルギーです。 

さて、ここでエネルギーが解き放たれました。どのような形で解き放たれるかというと、光としてです。金属は、似たようなギラギラした色をしていながら、金属ごとに色が違いますね。これは、それぞれの材料ごとにこの一階と二階の高さが違った値で決めれれているからです。自由電子なのに一階や二階というのも変な話ですが、結晶によってエネルギー状態は決められているのです。これをエネルギー順位といいます。

このエネルギーの状態を詳細に調べるためには、物質を結晶化してやらなければいけません。微量な不純物を混ぜて、人間にとって都合の良いエネルギー状態を作り出された材料を機能性材料と呼びますが、このような材料の詳細な性質を調べるためにも、結晶化は重要なのです。
それは今回置いておきます。

電気の流れる金属は自由電子を多く含んでいるので、光があたるとそれぞれの材料ごとの色を放ちます。つまり、透明ではないということです。
光は電磁波ですから、自由電子のような電荷とはよく干渉するのです。

電気を流さない物質ではどうでしょう。
電子の居られる場所は、先ほどの金属中の一階や二階よりも遥かに大きな差を持つエネルギーバンドの間での電子のやりとりになります。

光を当てるとその光のエネルギーを受けた電子が上のエネルギーバンドに移り、そして安定しようと下のエネルギーバンドに戻ります。この時に光を放ちますが、この光の色、つまり波長はエネルギーバンドの差によって決まります。エネルギーバンドの差のことをバンドギャップと呼びますが、このバンドギャップの大きさが放たれる色を決めるということです。

バンドギャップがさらに大きくなると、エネルギーの大きな光を当てても電子が上のエネルギーバンドに飛び移れなくなります。
つまり、電子が光のエネルギーを受け取れなくなったということです。光はどうなるのか、エネルギーを電子に渡せなかったので、光は光のまま通り過ぎます。この状態を透明といいます。

透明な物質というのは、電子が動きにくい物質です。透明でなおかつ電気を流すというのはなかなか難しいということがお分かりいただけるかと思います。
タッチパネルなどは、薄く金属を膜にして表面につけていたりします。最近ではITOというインジウムとスズの酸化物が使われています。厳密には色の付いた物質ですが、薄くすると透明になります。


金属にはこのバンドギャップがありません。 光を当てたら片っ端から自由電子が飛び出します。 酸化物の多くはバンドギャップが大きく、光を当てても電子は飛び跳ねて行けません。川の向こうにジャンプしたくても、川幅が大きくてジャンプできないようなものです。

光のエネルギーを大きくすればジャンプできます。光のエネルギーは波長が短かくなるほど大きくなりますから、赤外線よりも赤、赤よりも青、青よりも紫、紫よりも紫外線のエネルギーは大きくなります。 紫外線よりもX線はさらに大きくなります。
ここで、赤から紫までの光を可視光線といいます。
透明とは、可視光線を当てても電子が励起してジャンプできないくらい、バンドギャップが大きいということです。ですから、基本的には電気は流れないんですね。

この、大きなバンドギャップを持ちながら、電気を流す物質として注目されているのが、酸化ガリウムです。

続きはまた後日



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