【ワシントン=森本学】日米欧と新興国による20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が10日夜(日本時間11日午前)開幕した。米国で財政問題を巡り政府と議会の調整が難航する中、世界経済に悪影響が及ぶのをどう抑えるかを話し合う。11日採択する共同声明では米国に対し、G20として早期解決への期待を盛り込む見通しだ。
麻生太郎財務相は初日の討議終了後、記者団に対し、日本として会議の場で米財政問題について「米国だけの問題ではなく、世界経済全体に影響を与えかねない問題だ。遅滞なく問題が解決されることを期待する」と発言したことを表明した。麻生財務相は会議の合間に、ルー米財務長官とも個別に会談し、早期解決への期待を伝えた。
G20会議の開幕に先立ち、日米欧など主要7カ国(G7)は非公式の財務相・中央銀行総裁会議を開いた。世界経済の成長を持続させるため、先進国の協調を確認した。米財政問題が世界経済や金融市場に及ぼす影響も協議したとみられる。
初日のG20会議は世界経済の動向を議論し、下振れリスクを点検した。2日目は金融危機の再発を防ぐため、規制のあり方なども議題になる。
参加国・地域の関心はオバマ政権と野党共和党の対立で混迷が深まる財政協議の行方に集まる。一致点が見いだせず、連邦債務の上限の引き上げに失敗すれば、米国債が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクが現実味を帯びる。市場の混乱の影響を受けやすい新興国の懸念は強く、今回のG20の場でも米国への注文が相次ぐ見込みだ。
日銀の黒田東彦総裁は10日午後、G20会議を前に記者会見し、米財政問題について「これ以上、長引いてほしくないというのが世界の人の気持ちだ」と語った。海外勢として中国に次いで2番目に米国債を多く保有する日本にとっても、米国債がデフォルトすれば深刻な問題となる。
米量的緩和の縮小も引き続き焦点だ。7月にモスクワで開いた前回のG20会合では、緩和の縮小に伴う市場の混乱回避に向け協調する点で一致。共同声明は米国を念頭に金融政策の変更に際し「明確なコミュニケーション」を求める考えを明記した。今回のG20声明でも再確認する方向だ。
初日の会議では、麻生財務相が2014年4月に消費税率を8%に上げる決定や、5兆円規模の経済対策について説明。「国際的にコミットしてきた財政健全化目標の達成に向けた大きな一歩だ」と述べた。新興国の危機を予防するため、アジア新興国と通貨スワップ協定の拡充の協議を進めている点も表明し、国際金融システムの安定に貢献する姿勢を強調した。