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「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」第十話

2017年07月08日 | 本・雑誌から
月刊「釣り東北」連載「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」小さくても富士は富士

今年(2013年*当時)6月、ついに日本一の山「富士」が世界文化遺産登録となった。遺産が決まってからと言うもの、以前より大勢の登山者がつめかけて山頂までの長い行列はまるでバーゲンセールの行列の様相だ。混雑を避けるため夜中に危険を冒して一気に駆け上る「弾丸登山」で体調を崩し、救急隊のお世話になる無謀な登山者の姿が何度もテレビ報道されるなど、行き過ぎた熱狂ぶりが少々心配だ。
さて今回は、そんな大フィーバーの標高3776メートル富士山の100分の一と、1000分の一の高さで気軽に安全に登れる可愛い「富士山」を紹介する。

①各地の富士山
今や世界遺産となった富士山とは、父の転勤に伴い東京都小金井市(当時は多摩郡小金井町)に10年ほど居住していた関係で、小学生の頃から馴染みが深い。
都下の小金井市からも朝焼けに染まる富士山が、天気の良い時期は毎日の様に拝めた。特に空気が澄み切った冬の富士は美しかった。その後何度か静岡に出かけて「本物」の威容を三保の松原越しにも見物したが、山頂を極めた事はいまだ無い。しかし富士山を眺めて育ったせいか山登りは好きで白馬岳や丹沢周辺など大学時代は結構登った。
さて、わざわざ「本物」まで出向かなくとも「ご当地富士」と呼ばれる山は各県に存在していて、やはり「富士」と呼ばれるだけに独特の威容を誇っている。青森県の岩木山は「津軽富士」、岩手県の岩手山は「南部富士」、秋田県と山形県にまたがる鳥海山は「出羽富士」、福島県の磐梯山は「会津富士」などと呼ばれており、他に「越後富士」や「加美富士」など新潟を含む東北にシンボル的な富士は数多い。「富士」と名が付くだけに、山容に神々しさが感じられる。

②身近な富士があった!
かなり以前に「秋田にも富士はある」との話を聞いた記憶があり、山に詳しい友人に尋ねると
「簡単に登れて見晴らしが良い」と案内役をかってくれた。
その富士とは秋田市東通明田にある「明田富士(みょうでんふじ)」。標高35メートルと、本家3776メートルのおよそ100分の一で、山と言うよりも小高い丘の様だ。これまで何気なく通過していた旧市内の一角にあり、角地には古い「富士山登山案内図」も設置されている。
山の周辺には「馬頭観音堂跡」「磯前神社」「千歳の松」「明田神社」「法華堂」などがあって、歴史的に重さのある「富士山」らしい。東の太平川沿いに「富士山登口」の標柱と解説板が設置されていて「この丘に昔(鎌倉時代か)富士太郎なる豪族の館(城)があったと言われており、当時からこの山頂に富士権現を祭ったらしい。
富士山の名前はそこから出たものであろう。
富士大権現の祭神は木花咲耶姫である」とある。日本一高い富士山の祭神と同じだ。住宅の裏手の登山口から法華堂、赤鳥居の「明田稲荷神社」を見て更に進むと、「日本山岳会秋田支部創立40周年記念植樹」の標柱、そして標高35メートルの山頂部に到達すると視界が一気に開け秋田市内を一望出来る。「今まで見た事の無い眺望だ」と思った。これまであちこちの高い場所から秋田市内を眺めたが、明田富士は新鮮で小さな感動を味わった。ちなみに毎年7月1日には「山開き」も行われると言う。




③日本一の低さ比べ
平成元年、秋田市制100周年を記念して山頂に日本山岳会秋田支部認定の「日本一低い富士山」の標柱が設置された。その後しばらく「日本一低い富士山」のタイトルを保持していたが、近年九州で更に低い富士山が見つかったらしく、タイトルは譲らざるを得ない結果になったとか…。
明田富士の言い伝えでは、解説板の「富士太郎説」と、元々富士山の様相を見せていたが、宅地造成や沼の干拓で山の土が削り取られて山容が変化したとの説もある。いずれにせよ周辺の神社等の配置を見る限り、山自体の信仰の厚さが伺える。さて、「日本一低い富士」は日本山岳会がその山の持つ歴史等から認定しているが、この枠には属さないものの間違い無く「日本一低い富士山」が実は秋田県に存在する。

④標高0メートルの富士山
秋田県南秋田郡大潟村は、1957年から1975年にかけて八郎潟を干拓して誕生した村で、大型農業のモデル地区としての歴史を持つ。
この村に「日本一低い山 大潟富士」が誕生したのは1995年の6月3日「測量の日」。明田富士は本物のおよそ100分の一だが、大潟富士は正確に1000分の一の3、776メートル。村自体が海より低いので、山頂は丁度海抜0メートル。山岳会の認定は前述の関係で得られないが、まぎれもなく日本一低い富士山だ。
春には菜の花と桜、夏にはヒマワリが咲き誇る大潟村の楽しい観光スポットの一つが「大潟富士」。こうした低い富士登山は安全・安心で気軽に楽しめる。

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