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「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」第十二話

2017年07月15日 | 本・雑誌から
月刊「釣り東北」連載「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」~釣り針の起源~

釣り針は「袖型」「丸型」「角型」の大きな分類の中で、ケン付き針・ネムリ針・流線針・袖針・セイゴ針・チヌ針・メバル針・キス針・ヘラ針等々釣りの用途に応じて様々な種類を選択出来る。釣り好きの方々には今更…かも知れないが、小さな針の部分にもチモト・かえし・胴など独特の名称が付いている。改めて観察すると、釣り針とは何と機能的で工夫に満ちているのか!と感心する。この釣り針、起源は一体何時頃なのか?どんな地域で、どんな人々が生みだしたのか?こうした湧き出す疑問のきっかけは、世界的に著名な研究家との出会いだった。

①200年前までは旧石器時代!
平成4年秋、ピラミッド伝説の山・鹿角市の「黒又山=クロマンタ」の学術調査の合間にハワイ取材の機会が訪れた。当時、京都・同志社大学を本部に、国内は勿論ジャワやメキシコ等のピラミッド研究を進める日本環太平洋学会理事を務めていた筆者は、「最高のチャンス!」とばかりに現地ホノルルの知人と連絡を取り合い、細かな取材日程を組んだ。「この目で海外の遺跡に出逢える」と、心はウキウキ状態だった。ハワイ行きは2度目だったが、日付変更線超えは矢張りきつい…。時計を逆に戻されて到着は現地時間の午前6時、それでも自分で組んだ厳しい時間割だったので、泣きごとは言っていられない。現地の知人グループと綿密な打ち合わせをしてから、まずビショップ博物館を訪れた。この博物館は、今年で設立125周年を迎えたハワイ州最大の博物館で、太平洋地域の自然・文化等に関するコレクションが200万点以上収蔵されている。この博物館に世界的に著名な考古学研究家・篠遠喜彦(しのとおよしひこ)博士を訪ねた。篠遠博士は、大正13年東京生まれで昭和29年まで日本考古学研究所で旧石器文化を中心に研究していたが、その後アメリカ留学が決まったものの、その途中でハワイの遺跡調査に立ち寄った際、ハワイ大学の熱烈な要望でビショップ博物館に研究室を設置され、以後ハワイ生活を続けていると言うちょっと変わった経歴の持ち主だ。博士の研究室の中にはハワイやタヒチ等から発見された数多くの遺物や写真が陳列されていた。ポリネシア・ミクロネシアの古代が凝縮されている感じだ。そして…その中に原始的な形の「釣り針」が目に入った。「まっすぐの形…先生、これは相当古いんでしょうね」「いいや、ハワイは200年前までは旧石器時代でしたから…」「エッ?」
主目的はハワイのピラミッドについての取材だったが、実は篠遠博士は「釣り針」を通してポリネシア民族移動のルーツを研究している第一人者でもあった。

②起源
さて、世界的に見た「釣り針」の起源は、一体どれくらい遡るのだろうか?記録に残っている最古の物はパレスチナで出土した紀元前7,000年頃と見られている。
原始的な釣り針と言えば、ビショップ博物館で最初に目にした「直針」で、針先が曲がっていない真っすぐな形だ。「どうやって使うか?」と言えば、中心部に紐を巻いて、魚に飲ませる。すると引き上げる時に真っすぐ呑み込んだ針が横になって、口腔の奥や腹腔内に収まる…と言う仕組みだ。が、吐き出されれば「はい、それまでよ」だ。そこで色々と古代人が知恵を絞ったのだろう。次に登場したのが「レ」型の釣り針だ。鹿の角を見れば「レ」型で、こうした観察によって直針から進化したと考えられる。しかし、これでも矢張り外れる可能性が高い。一体何十年・何百年かかって改良を重ねたのだろうか。次第に現在の形に近づいてくる。

③日本の起源
日本で「釣り針」が登場するのは縄文時代に入ってからで、旧石器時代の遺跡からは見つかっていない。「釣り針」以前は、銛やヤスが主流だったのだろうか。国内遺跡からは直針は勿論、「レ」型…更に進化型「かえし付き」の針が出土している。毛皮をまとい獲物を追いかける縄文人のイメージが強いが、果たして「原始的民族」と決めつけて良いのか?近年の発掘調査で、縄文人の優れた生活文化が次々に浮かび上がっていて、これまでのイメージが徐々に変化しつつある。沿岸部や川、湖沼の有る内陸部に至る遺跡で釣り針や銛、網などの漁具が出土していて、縄文後期になると現在の釣り針の原点「かえし」が付いた針が現れる。更に弥生時代の遺跡からは錘が出土していて、着実な進化の過程が見られる。奈良時代には現在のリールの原点が登場したのでは?との説もある。確実に獲物を手に入れるため、必死の改良が繰り返されたのではないだろうか。少々大袈裟に言えば「古代人の知恵」のおかげで今の私たちは大いにフィッシングを楽しむ事が出来る訳だ。こうした釣り針の進化は、青森県の三内丸山遺跡の展示室で見る事が出来る。
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